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英国がデジタル課税を導入へ~大手オンライン販売・広告企業による税逃れに包囲網~

英国がデジタル税(デジタルサービス税)を2020年4月から導入へ~大手オンライン広告・販売企業は租税回避できず収益悪化へ~

 

英国がデジタル課税(デジタルサービス税)を導入するとハモンド財務相が演説。オンライン販売大手アマゾンや広告事業大手グーグル、フェイスブックなどの株価が軒並み下落しています。

UK to Roll Out First-of-Its-Kind Digital Tax

 

今回のデジタル課税のキモは、利益ではなく売上にかかる税金であるということです。

 

アマゾンやネットフリックス、グーグル(の親会社アルファベット)、フェイスブックなど大手オンラインプラットフォーム事業者は、これまで欧州で稼いだ利益を税率の安い国を経由することで節税してきました。

こうした手法に対し、その利益の源泉となった国々では不満が高まってきましたが、租税回避地となっている国の反対などで国際的な租税条約の締結には至っていません。

これに対して欧州各国(とくにスペインなど)は独自にオンラインプラットフォーム企業に税金をかけることを検討。

利益の水準は、特許使用料などの名目で親会社に多額の支払いをすることでゴマカシやすいので、売上に課税する方針を各国とも考えてきました。

 

ハモンド財務相はすでに10月初めころにこの方針を明かしていましたので何も新しい動きではないのですが

UK could go it alone on digital services tax: finance minister

ここにきてデジタル税の課税に積極的だったスペインやイギリスだけでなく、広範囲な国々(新興国も含めて)がデジタル税導入を検討しはじめており、そのことが米国の情報技術系企業の収益圧迫要因としてふたたび浮上してきています。

 

 

デジタル税の課税対象は?

今回、イギリスが検討しているデジタル税の課税対象は、世界の売上高が年間5億ポンド以上の黒字企業となります。

これにより、年間4億ポンド超の税収を見込むとのこと。

対象は検索エンジンやネット通販、ソーシャルメディアなどになるとのことです。

 

日本におけるデジタル税課税対象が稼ぐ金額はサービス収支に表れてきている可能性

 

日本においても、アマゾンやGoogleなどオンラインプラットフォーム企業の稼ぐ金額は非常に大きくなってきています。

それが端的にわかるのがサービス収支の内訳だと思われます。

FAANG稼ぎすぎじゃね? / 国際収支統計のサービス収支内訳から見えること

こちらにも書きましたが、オンラインプラットフォーム企業の稼ぐ非常に大きな金額が国際収支統計から見えています。

これにまったく課税できていない状態は好ましくない・・・データを資源として扱うデータエコノミーの時代において、自国データの利用から上がった利益にはちゃんと税をかけよう・・・そういう動きが出てきているわけです。

 

 

デジタル税は世界中に広がる可能性

今後、デジタル税を導入する国は間違いなく増えると思われます。

というのも、オンラインプラットフォーム企業の多くはアメリカにあり、欧州やアジアにはあまりないから。

もしこのままデジタル税を課さないでいれば、自国のデータ資源から上がる利益を全部アメリカ企業が吸い上げてしまいます。

こんな面白くない話はない・・・すでにスペインなどでデジタル税導入は積極的に議論されています。

今後は新興国も含め、あらゆる場面でデータの移動に障壁ができることでしょう。

 

 

デジタル税はいずれ世界共通化へ?

デジタル税は初期の段階では各国ごとに導入されるでしょうが、いずれかの時点で各国統一した課税基準ができるものと思われます。

すでにそういった交渉は行われていたのですが、しかし、遅々として議論が進まなかったことが、今回の英国の独自課税に繋がっています。

しかし、独自課税があちこちの国で行われれば企業活動の障害になりますので、いずれかの時点では統一されるはずです。

ただ、各国の利害関係が複雑に絡む分野でもありますので、少なくとも5年、完全に統一されるまでには10年以上はかかる可能性が高いと思われます。

 

 

 

デジタル税で FAANGの稼ぎは圧迫を受ける

当然のことながら、Facebook、Amazon、Netflix、Googleなどの利益は圧迫を受けることになるでしょう。

とくに、今回の課税は利益ではなく収益にかかるものですから、利益率の低い企業にとっては辛いものがあります。

また、このオンラインプラットフォームの対象にビザやマスターカード、ペイパルなどの決済大手が含まれるのかもよくわかっていません。

これらが含まれた場合、決済手数料にそのまま跳ね返る可能性があります。

 

 

デジタル税導入の報で下げ足を強めたFAANG株

2018年10月29日の米国市場では、ハモンド財務相のデジタル税導入発言を受けてFAANG株が下げ足を強めました。

とくにここもと割高感から値下がり傾向を示していたアマゾン株が6%を超す大幅下落。

Googleも4.5%超、フェイスブックも2%を超す下げとなりました。

 

 

とりあえず、これら企業の成長率はやや割り引いてみる必要が出ています。

今後の動向については、他国への波及がどれくらいのスピードで進展するか注目だと思います。

 

以上です。