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中国が理財商品規制へ~微信、支付宝、百度銭包に逆風~

ひじょーーーに大きなニュースが飛び込んできました。

中国ネット企業BATと言われるバイドゥ(百度/Baidu)、アリババ(阿里巴巴/Alibaba)、テンセント(騰訊/Tencent)にとって非常に痛い制度変更です。

 

 

中国、アリババ余額宝(ユエバオ)、テンセント理財通などMMF商品を実質禁止 スマホQR決済における前払い金の保全義務化へ事実上の供託制度導入

 

 

以前から囁かれていたことですが、とうとう中国人民銀行(中国における中央銀行)が動くようです。

中国、スマホ決済前払い金保全義務 日経新聞2018年7月4日付

 

要約しますと

近年、中国ではQRコードを利用したモバイル決済/スマホ決済が急速に発展しています。

  • アリババ(阿里巴巴集団)系アントフィナンシャル(蚂蚁金服/Ant Financial)が展開するアリペイ(支付宝/Alipay)
  • テンセント(騰訊/Tencent)が展開するウィーチャットペイ(微信支付/WechatPay)
  • バイドゥ(百度/Baidu)が展開する百度銭包(上二つにくらべてマイナーですが…)

 

これらアリペイ(支付宝)やウィーチャットペイ(Wechat Pay)などのモバイル決済サービスは、決済手数料はほとんどタダみたいな状態で提供されています。

ではどのようにして収益を上げているか?というと・・・

利用者が事前にチャージした前払い金のうち、支払いに使われずに滞留した資金を運用するためのMMFのような金融商品を各社が提供し、顧客から運用手数料をとることで大きな収益をあげているわけです。

 

 

たとえば、以下のような金融商品があります。

  • アリババ系アントフィナンシャルが提供する余額宝(ユエバオ/Yuebao)、支付宝定期理財
  • テンセントが提供する騰訊理財通
  • バイドゥが提供する百度銭包的定期理財、百賺

 

なお、MMFといっても日本やアメリカでいうところのMMFとは違います。名前に理財とあるとおり、これらは理財商品がもとになっています。

理財商品とは、銀行から正規のルートで融資を受けられないような中小企業や不動産開発会社、地方政府系郷鎮企業(日本でいうところの三セク)などへの貸出債権や投融資資金を小口化して、ほかの金融商品とまぜこぜにして作った金融商品です。ようするに、シャドーバンキングシステムを証券化技法で小口化した商品です。

 

簡単にいってしまえば、サブプライムローン問題のときに騒がれたCDO(Collateralized Debt Obligation)や資産担保証券(ABS/Asset Backed Securities)などの中国版みたいなものと考えるとわかりやすいです。

 

サブプライムローン問題のときでもそうでしたが、こういう風にしてしまうとリスクがよくわからなくなります。

いったい、どこにどれだけのババが潜んでいるかわからなくなるわけで、いざ金融危機が始まってしまうと連鎖的、加速度的に崩壊が始まってしまうリスクがあるわけです。まさに金融のメルトダウンです。

 

で、中国当局もそんなリスクは十分に認識しています。これは危ない、と感じています。ですからシャドーバンキング潰し、理財商品潰しを積極的に行ってきたわけですが・・・

 

いくら潰しても潰しても、アリペイやウィーチャットペイ(Wechat Pay)などを経由してMMF化した理財商品にジャバジャバと資金が流れ込んでいってしまっていたんですね。

今回、顧客資産の保護、消費者保護を名目に、これらの資金の流れを完全に断つことになるわけです。

 

これは非常に大きな変更です。

これによって何がおきるか?

簡単にいえば、アリババやテンセントの収益が落ち込むはずです。

たとえばテンセントの業績のうち、「その他」の部門から上がってきていた利益のほとんどは、この理財商品運用マージンだったと俺は見ています。これがなくなると、テンセントの業績は大まかにいって20%程度は下振れするのではないか?とみています。(長年テンセントの業績はみてきましたが、実際にどれだけ減るかはわかりません。個別事業の開示がないからです。)

 

 

それと同時に、いままで顧客が買った運用資産の手数料やマージンで稼いできたテンセントやアリババは、QR決済/モバイル決済の手数料をもう少し上げなければやっていけないと思います。

今までは顧客を囲い込むことを優先して個人間送金をタダにしたりしてきましたが、今後はどこかの時点、どこかのセグメントで有料化、手数料値上げをせねばならなくなるのではないかと思われます。

 

 

また、当然のことながら、いままで余額宝(ユエバオ)や理財通から流れてくる資金で買われていた理財商品は売れなくなります。シャドーバンキングで資金調達してきた郷鎮企業や中小企業の資金繰りが悪化するかもしれません。

もし小口金融で個人向け消費者ローンなどにも流れていたのなら、そういった分野で金利が急上昇して不動産販売などに影響してくるかもしれません。不動産が右肩上がりであることを前提に、頭金を小口金融で用意していたような人達は苦しいことになるかもしれません。

 

 

とりあえず、素人の自分が考えるだけでもこれだけの影響があります。

個人的には、今回の

「中国人民銀行によるモバイル決済の保全」

というニュースは、非常に大きなインパクトを予感させるものです。

動向を注視していくべきと考えます。

 

 

なお、上記はあくまでも金融素人の中卒くんの個人的感想であって、正しいか間違っているかはわかりません。投資にあたっては自己責任、自己判断でお願いいたします。