中国が、半導体の増産に突き進むようです。
中国の半導体政策は「無謀」、各国の警戒も強まる (EETimes)画像多数、良記事
中国、半導体産業に新たに3兆円を投資 (EETimes)
中国:最大3.4兆円の調達目指す、国内半導体産業育成で-関係者 (Bloomberg)
要約すると・・・
- 中国では、半導体の輸入額が化石燃料の輸入額を上回っている。(表の緑:半導体227616904千ドル、表の赤:化石燃料412879365千ドル)
- 中国の半導体消費量は2017年に世界全体の38%、2022年に43%に達する見通し
- 中国政府は、新たに2000億元(約3.3兆円)の資金を投じることにより、国内半導体産業を育成する予定
- 中国は2020年に40%、2022年に70%の半導体を自国生産で賄えるようにする予定
なお、この見通しを達成するために・・・
- 2015年に設立した中国国家IC産業投資基金(CICIIF:China Integrated Circuit Industry Investment Fund Co.)を再活用
- CICIIFがこれまでに投じた資金は合計1060億元。この投資により、地方政府や民間企業から更に追加で3500億元の投資を引き出した実績。
- CICIIFは現在、新たな投資資金調達のため交渉中。少なくとも1500億元、最大で2000億元の調達を目指す。
- CICIIFは2018年後半には資金を分配し始める予定
ということです。
CICIIFの過去の実績からすると
CICIIFが2000億元を投資したなら、地方政府や民間企業は
3500/1060*2000=6603億元
つまり、
6603+2000=8603億元
の総投資額ということになります。
これは現在のUSD/CNHレートでいくと
1359億ドル(14兆5210億円)の投資規模
になります。
これが約三年の間に上乗せされるのですから、年間450億ドル程度の設備投資額増加になるということです。
ちなみに、
- Samsung Electronicsの2017年設備投資費は平年の2倍以上となる260億米ドル。
- これはIntelとTSMCの設備投資費の合計金額を上回る規模
- 2017年の全世界の半導体設備投資額が809億ドルくらい
ですから、年間450億ドルの追加は途方もない数字です。
需給関係が壊れない方が不思議です。
とりあえず、今後のタイムスケジュールを考えてみると・・・
- CICIIFは2018年後半には資金を分配し始める予定であり、
- 2022年に半導体自給率を70%に引き上げる目標なのですから、
- これらの投資は2019年後半から本格化するはずで、
- 生産された半導体は、2020年頃から本格的に普及し始めるはずです。
これで起きることは
- 半導体製造装置の受注増加(ASML、AMAT、東京エレクなどに追い風)
- 2020年頃からの半導体価格下落。(主に競合するのは市況変動の影響を受けやすい韓国サムスン、LGなどと、台湾ファウンドリー勢?)
- 米中の貿易摩擦増加(ただでさえ貿易黒字の中国が、海外から半導体を買わずに70%自給体制に切り替えるインパクトはデカい)
- 米国が半導体特許侵害で中国製電子機器の輸入差し止め or 報復関税などの制裁発動
- 貿易相手国による反ダンピング措置発動
- JV提携先の中国地方政府の借入金増加
簡単にいってしまえば、
2010年頃から中国の鉄鋼産業で起きたことが
2020年頃から中国半導体産業で起きる可能性が高まっているのではないか
とみています。
つまり、
設備稼働率の極端な低下(鉄鋼の場合、2009年80%→2014年65%)などが発生するとみています。
そもそも中国が半導体を自給すると言っても最終製品の輸出先は欧米なのですから、欧米と貿易紛争を抱えたら行き場がなくなります。
あまりにも無謀です
経済成長を考えたら、もっと違った政策をとった方が有効なはずです。
おれはこの政策の目的は、単なる経済的メリットによるものではないと思っています。
その目的については、次回に回そうと思います。
ちょっと長くなりすぎましたので、いったん切ります。