タイトルの通りです。
マーケットは、米中通商摩擦を舐め腐っていると思います。
どうせ適当なところで折り合うだろう?とみていると思います。
個人的にはそれは、とても危ない判断だと思います。
とくに、いざ通商摩擦が本格化した場合、日本、台湾、韓国の3か国においては、張本人である中国や米国以上に影響が大きいはずであり、そのことについて誰も語っていないことに不安があります。
とりあえず、今回はそういったことについて書かせていただきます。
以下の表をごらんください。
これは、中国の貿易収支を国ごとにわけて示したものです。
右端の二列、Exportが輸出で、Importが輸入です。
中央4列 Balance in Valueというのが、各年度における貿易収支を示します。
これをみてわかることは
- 2016年の貿易収支は全体で約5100億ドル(約54兆6000億円)
- 中国からみた貿易黒字額最大の国は香港
- 中国からみた貿易黒字額二番手の国はアメリカ
- 対アメリカ、香港の貿易黒字額は3位オランダ、4位インドなどの5倍以上
- 対アメリカの貿易黒字額は、オランダ、インド、イギリス、ベトナム、メキシコ、UAE、シンガポール、パキスタン、スペインに対する貿易黒字額を合わせた以上の大きさ。
ということです。
ここで、香港について注意が必要です。実は香港側の統計からみると、対中国では貿易黒字になっています。
これはどういうことなのかというと・・・実は理由がよくわかりません!w
- 中国の貿易統計には、中国本土から香港経由で他の国に仕向けている品なども含まれているのではないか?
- 香港側の統計には、対中国での細かい貿易まで網羅して載せているのではないか?
- 越境ビジネスの取り扱いが違うのではないか?
- 単なる国境と期を跨いだ節税スキームを香港では統計から外しているのではないか?
など、いろいろと考えられるのですが、どれが本当なのかよくわかりません。どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら、ご教授いただきたく存じます。(メールでも、Twitterでもお待ちしております。おねがいします。)
とりあえずそんなわけですので、実質的には中国にとっての貿易黒字第一位はアメリカということになります。(たぶん)
貿易黒字額が全体で5100億(約54兆6000億円)ドルくらいですから、その約半分が対アメリカ一国から得ているということになります。
これはかなりの依存度です。
さて、ここで注意が必要です。
中国はけっして、自国で原材料から最終製品まで作り上げているわけではありません。
部品や素材を買ってきて、それを加工して組み立てて、最終製品にしてアメリカなど最終需要地に送っています。
さて、それでは部品や素材はどこから買っているのでしょうか?
みてみましょう。
一番右端の列をみてください。
これがImport(輸入)です。
上から順に韓国、日本、台湾、アメリカ、Area Nesとなっていて、ここまでが1000億ドル(10兆7000億円)を超える国々です。
この中でアメリカは、中国に電気製品、機械、大豆、自動車、航空機、光学製品、医療用機器などを輸出していますが、対中国の貿易は輸入額の方が巨額ですから、通商摩擦がGDPに与える影響は(この件だけで考えれば)イーブンな可能性があります。
逆に言うと、もしも通商摩擦が激化した場合、中国に対して黒字を得ている日本、台湾、韓国は貿易収支の悪化によるGDP押し下げ効果がかなり大きいと思われます。
日本、台湾、韓国のアジア三か国は、中国に半導体や電子デバイスを輸出しています。日本はそれに加えて、製造設備も輸出しています。
もしも米中通商摩擦が激化した場合、これらの輸出が激減することが予想されます。
機械受注統計などをみると、日本の製造業企業はようやく設備投資を本格化したようです。しかし、いつものことなんですが、景気サイクルのピークで設備投資をしてしまっています。この環境で受注が激減したらどうなるでしょう?火を見るよりも明らかです。
【ちなみに、Area NesはAreas not elsewhere specified・・・つまり「よくわからんところ」みたいな感じです。宇宙人がくれた原材料などはここに含まれます(嘘です)。おもに、取るに足らないような小さい貿易についてArea Nesが利用されたりします。個人的にはたぶん、これが対香港貿易に紛れ込んでいるような気がします。中国対香港の貿易収支とAreaNesの数字を足し引きすれば、だいぶ実態に近そうな数字になりますので。】
とりあえずまとめると
米中通商摩擦が激化した場合、一番被害を被るのは中国の影に隠れて貿易黒字をたんまり稼いできたアジア三か国(日本、韓国、台湾)
だと思います。また、
「米中通商摩擦はどこかで落しどころをみつけるだろう?」
との楽観論がマーケットを覆っていますが、実際にはそれは違うような気がしています。
これについては以前の記事(世界は陰謀でまわってるぅ~~米中貿易戦争~~)で書きましたが、今回の通商摩擦はたんなる通商摩擦ではなく、世界の覇権を誰が手に入れるか・・・それはイデオロギーや軍事的プレゼンスも含めて・・・を争っていることが背景にあると、おいらは見ています。
ここ数年、中国の信用は急拡大しており、アメリカとしては「いまならコケさせられるはず」・・・との思いで、人為的に中国リスクを高めようとしている。そんなふうにおいらは見ています。
これは単なる通商摩擦ではない可能性が高く、いまこの段階で楽観的になるのは非常に危険であると、おいらは思っています。
また、この通商摩擦の本質を理解している中国は、アメリカから貿易黒字をたくさん稼がなくてもやっていけるように、輸入に頼っている半導体や電デバを自国生産に切り替えようとしています。
この影響により、日本から中国への設備投資輸出額はブーストされています。ただし、それもじきに終わります。
と同時に、中国産の半導体やコンデンサ、LEDや液晶などの部材が市場に安価にばら撒かれることになるでしょう。
この影響を大きく受けるのは、やはりアジア三か国(日本、台湾、韓国)です。
とりあえず、長くなりすぎましたのでここらへんで切りますが、通商摩擦で一番被害を被るのは、貿易自由化の進展で一番利益を受けた国々です。そしてそれは、日本も含まれます。気を付けて行った方が良いと思います。
なお、上記見通しは中卒くん個人の意見であり、投資行動をお勧めするものではありません。投資は自己責任、自己判断でお願いいたします。