太陽誘電によるエルナー完全子会社化まとめ
太陽誘電がエルナー子会社化
質問箱に、「太陽誘電のエルナー子会社化をどう思うか?」との質問がありましたので、とりあえず今回の太陽誘電の目的などについて軽く書いておきます。
https://twitter.com/chu_sotu/status/1045804510998802433
まず、これまでの経緯
エルナーとは?
エルナーは東証二部上場のアルミ電解コンデンサのメーカーです。
アルミ電解コンデンサは、日本では他に日本ケミコン、ニチコンなどのメーカーが作っています。
エルナーは導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサを開発
近年、アルミ電解コンデンサメーカーは「導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ」ってのを開発して、これを自動車分野を中心に売り込んでいきました。通称ハイブリッドコンデンサっていいます。
エルナーはこれを2014年の7月に開発しています。
これについてゴチャゴチャ書いたんですが、あまりにも長くなり過ぎたんで別記事に回します。
エルナーは独禁法違反で訴えられる
エルナーは2014年3月ころから、まず欧州、次に米国、日本、中国などの当局から独占禁止法違反で調査を受けました。(順番うろおぼえ、間違えているかも)
容疑としては、コンデンサの価格カルテルです。
このコンデンサカルテルを巡っては、アルミ電解コンデンサ同業の日本ケミコン、ニチコン、エルナールビコン、三洋電機(パナソニック)、日立AICなどの他、タンタル電解コンデンサのNECトーキン、ビシェイピリテック、松尾電機なども制裁対象になりました。
なお、三洋電機(パナソニック)は欧州当局にいち早くチクったことでLeniencyによる減額100%を受けています。エルナーは15%減額で85%負担となりました。
太陽誘電がエルナーに出資
こんなトラブル続きのエルナーに、救いの手を差し伸べたのが太陽誘電です。
太陽誘電はエルナーの持つ海外顧客層を掴みたかったのだと思います。
エルナーは売上高の半分以上が海外で、自動車や産機向けなどの顧客を抱えています。
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサもこれら顧客向けに販売しており、セラミックコンデンサでカバーする定格電圧、静電容量、温度特性とは違った分野であり、補完関係があると判断したのでしょう。
故綿貫英治社長の時代です。
この判断は、ちょっと甘すぎたと思います。
あきらかにカルテル要因を甘く見過ぎていました。
エルナーは債務超過へ
当局からカルテルの制裁金を科されたエルナーですが、さらに民事訴訟も受けることになりました。
まぁ、顧客からしたら当然ですね。今まで不当なほど高い値段でコンデンサを買わされていたということですから。
また、排除命令を受けたことによる逸失利益なども絡み、売上、利益ともに減少。
さらにはプリント配線板事業(エルナープリンテッドサーキット)の赤字も抱えてにっちもさっちも行かなくなります。
エルナーに追加支援が必要に~プリント配線板事業を切り離し、太陽誘電が完全子会社化へ
エルナーは実際のところ、訴訟関連とPCB事業以外は黒字です。
自動車メーカーの電装化需要を背景にエルナーのコンデンサは売れており、事業自体は問題がない。
とくに2021年に欧州で始まる排ガス基準クリアのためには、48Vマイルドハイブリッド化などの省エネ技術が必要になってくる。
この需要に一番適応しているのが現状では導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサであり、まだ太陽誘電が得意とするMLCC(積層セラミックコンデンサ)ではカバーしきれない。
将来的にMLCCに置き換わるでしょうが、現状の顧客をつかんでおくためにもエルナーとの提携は続けたい、と太陽誘電は考えたようです。
なお、これまでも太陽誘電はエルナーへの出資を引き上げてきましたが、本格的にエルナーを救済するためには債務の保証なども必要になってきますし、そうなると救済メリットの外部への流出にもつながる・・・
というわけで、今回の太陽誘電によるエルナー完全子会社化に繋がっています。
なお、28日の太陽誘電の終値は2554円ですから、エルナーとの交換比率1:0.25を当てはめると、エルナーの理論株価は638.5円になります。
エルナーの28日の終値は883円ですので、週明けはかなりの暴落を覚悟した方が良いと思います。
エルナーの既存株主には不満もあるでしょうが、実質的に債務超過状態であり、この買収価格に問題はないと思います。
とりあえず、掻い摘んで書きましたのでわかりにくい部分もあるかもしれませんが、細かい点はまた別の機会に書いていきます。
以上です。
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