近海郵船が日本海側の敦賀港~博多港にRORO船定期航路を新設へ~モーダルシフト加速
日本郵船グループの内航船運航子会社である近海郵船は、2019年4月から「敦賀港~博多港」のあいだでRORO船※1の定期航路を新設します。
RORO 船新規定期航路「敦賀港/博多港」の開設について 近海郵船
※1 RORO船(roll-on/roll-off ship)・・・フェリーのようにランプウェイを持ち、トレーラーやトラックごと乗り入れできるが、基本的に旅客は輸送せず貨物と車両のみを輸送する船。
RORO船は旅客を輸送しないため法的に保安設備などの充実が必要なく、隔壁の充実も必要なく、フェリーに比べて低コストで建造することが可能。
また運航上の制約も法的に厳しくないことから、近年では長距離フェリーが衰退する一方、RORO船の航路が充実する傾向にあります。
(最近になって、8割が個室型となった観光用内航船フェリーも投入されつつありますが、それはまた別の機会に・・・)
なお、九州と本土を結ぶ日本海側ルートのRORO船定期航路は、今回の敦賀港~博多港が初となります。
かつては東日本フェリーによる「博多~直江津~室蘭」を結ぶフェリー航路がありましたが、東日本フェリーが会社更生法申請は同航路も廃止に。
現在は九州と本土日本海側を結ぶ定期航路がなかったため、今回の博多~敦賀のRORO就航は新しい物流ルートの開発となります。
以下は日本の中長距離フェリー・RORO船の航路図になります。
国土交通省資料より
近年、モーダルシフトが騒がれており、トラック輸送から、鉄道やRORO船・フェリーなどを用いた輸送に軸足が移りつつあります。
国土交通省資料より
上記資料にもあるように、近年RORO船による貨物輸送量は右肩上がりとなっています。
2014あたりでやや下がっているのは、高速道路料金の改定の影響ですが、その後は上昇に転じていると思われます。
こうしたRORO船や鉄道へのモーダルシフトの流れは、トラック運転手の高齢化問題や、環境意識を重視した企業側の姿勢が反映されています。
国土交通省資料より
トラック運送業界の高齢化問題は深刻化しており、運送料金および人件費の上昇を招いています。
今後もこの傾向が続くことが予想され、近年、企業側はよりコスト上昇圧力の少ない輸送手段へとシフトする動きが出ています。
また、大企業を中心に排出権の問題から環境負荷をより低減することが求められており、そうした観点からもRORO船やフェリー、鉄道など、より環境負荷の少ない輸送手段へとシフトする動きができています。
博多港~敦賀港のRORO船定期便開設は北陸、近畿、北部九州の製造業を結ぶ
なお今回、博多港~敦賀港にRORO船が定期運航されることになったため、九州北部の機械メーカーと、北陸の機械メーカーのあいだでの輸送は、より太くなるものと思われます。(北九州には安川電機がありますし、北陸にはソディック、コマツNTC、不二越などがあります)
また、敦賀港と苫小牧港の間にはすでにRORO船定期航路がありますので、積み替えによる輸送もしやすくなります。
敦賀港からは北陸自動車道で各方面へ輸送がしやすいですから、非常にいいルートが開設されたな、と個人的には思います。
なお、近海郵船による博多港~敦賀港のRORO船定期航路については以下のようになっています。
- 航路距離 635㎞
- 運航体制 2019年4月から週3便で開始、夏からは日曜日を除く週6便での運航
- 使用バース 敦賀港は金ヶ崎埠頭 博多港は箱崎埠頭
- 使用船舶 RORO船x2
- 総トン数 9800トン級
- トレーラー積載台数 約120台(12m換算)
- スケジュール 敦賀港 出港 22時00分 → 博多港 入港 翌日 17時00分 / 博多港 出港 22時00分 → 敦賀港 入港 翌日 17時00分
物流ルートの拡充は、災害などいざというときの輸送体制の安定にも繋がります。
今後、この航路が活用されることを願います。
以上です。