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中国、李克強首相が夏季ダボス会議で演説。「人民元引き下げは害」と為替に言及

中国の李克強首相が夏季ダボス会議で講演。人民元相場のほか、知的財産権保護などにも言及。

 

9月19日、中国の天津で開催中の夏季ダボス会議(世界経済フォーラム主催)で李克強首相が講演しました。

 

夏季ダボス会議(Annual Meeting of the New Champions)はスイス・ジュネーブに本部を置いている世界経済フォーラム(World Economic Forum)が年に一回、中国の都市で開催している国際会議です。

今年の夏季ダボス会議は天津で行われており、「第4次産業革命における革新型社会構築」をテーマに、冬季ダボスとは違ってハイテク、IT色の濃い展示が多くなっていると伝えられています。

なお、およそ100か国から政界、財界、学会、マスコミ関係者など代表2300人余りが出席しており、今までで最大の夏季ダボス会議となっているとのことです。

 

 

この夏季ダボス会議の講演のなかで、李克強首相は為替レートに関して以下の点を強調しています。

 

  • 人民元の現在の為替レートは中国の意図的な誘導によるものではないこと。
  • 人民元の引き下げは(中国にとって)害の方が大きいこと。
  • 中国は人民元の切り下げを通じて輸出を刺激する政策はとらないこと。
  • 人民元を安定させ、市場志向の為替改革を進めること
  • 中国は外貨準備が潤沢なので元レートを安定で均衡した水準に維持できること。

 

これらはトランプ米大統領が「中国は為替操作をしている」と非難していることに対して行われた発言と思われます。

中国の首相クラスが為替レートに対してこれだけ強く発言するのは極めて異例で、中国共産党指導部が昨今の人民元安に対してかなりセンシティブになっていることがうかがわれます。

 

また、李克強首相の今回の夏季ダボス会議での講演では、知的財産保護などについても言及があり

  • 知的財産権の侵害は厳しく取り締まっていること
  • ビジネス環境の改善を続け、外資企業も中国市場にアクセスできるようにすること
  • 中国企業も外資企業も平等に取り扱うこと
  • 許認可などにおいて地方政府から嫌がらせを受けたら私たち(国務院)にいつでも申し立ててほしいということ
  • 平均関税率はまだまだ下げる余地があり、関税率は下げていくこと
  • 中国経済は概ね安定的に拡大し続けていること

 

を明言しました。

中国首相人民元下げ、害大きい」 天津で講演 日本経済新聞

 


さて、以上のように、今回の夏季ダボス会議における李克強首相の発言はお手本通りの演説でしたが、果たしてこれを真に受けていいのでしょうか。

 

個人的にはどうもそれは、早とちりなのではないか、と思います。

というのも、李克強首相の方針はあくまでも国務院の方針であり、日本で言ったら内閣府の方針みたいなものです。

重要なのは、国よりも上に位置する共産党の意向であり、それはつまり、習近平指導部の方針なわけです。

(日本で言ったら、自民党の方が内閣府より上、みたいな感じなのが中国です。)

 

 

 

で、このところ李克強首相はどうも影が薄い。

習近平国家主席に権力を集中させている中国ですから、習近平の影が濃いのは当然として、下手をしたら王岐山国家副主席や、もっというと劉鶴副総理よりも影が薄い・・・

この背景に、2016年3月5日の全国人民代表大会の開幕式における李克強首相の演説ミスがあるのではないか?と指摘する声があります。

この演説のなかで、本来ならば習近平国家主席を称揚せねばならないところ、李克強首相はあろうことかいくつも文面を飛ばし読みしてしまい、逆に習近平国家主席を貶めるような演説になってしまいました。

習近平はそのことにいまでも激怒しているのではないかと指摘する声があります。

確かにこのとき、演説が終わったあとの李克強首相に対して、習近平は一切、目を合わせようとしませんでした。

習近平国家主席は他の党員の演説に対しては笑顔で拍手を送っていたのに、李克強首相の演説に対しては、ブスゥーーっとして一切表情を動かさず、目も合わさなかったのが印象的でした。

これについては日経新聞も同様のことを指摘しています。

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もはや習李体制ではなく、習王体制なのではないか?

という声もあるくらいです。

習李体制・・・習近平、李克強

習王体制・・・習近平、王岐山

 

 

個人的には、この演説のあったずっと前から、習近平と李克強のふたりはそんなに仲がいいはずがない、と思っていました。

そもそもにおいて、出自も歩んできた道筋も、専門分野もイデオロギーも違いすぎます。

このふたりが同じ話ができるはずがないし、政治権力争いだけでのし上がってきた習近平みたいな男にとって、病弱だけど頭のいいインテリ李克強首相みたいな男は嫌だと思います。

習近平は巨大な政府を作りたがってますし、李克強首相は「リコノミクス」という小さな政府志向を打ち出しています。まったく共通項がない。

というわけで

 

ぶっちゃけた話、李克強首相が夏季ダボス会議で話したことは忘れていい

 

と思います。

中国は国務院と共産党主流派で明らかに方針が違っていますから、国務院が言った通りのことを共産党主流派が推すかどうかはわからない。

結局のところ、習近平か王岐山がアメリカ側と話すしかないでしょう。それ以外のチャンネルは全く無意味。無視していいと思います。

市場はいったん、李克強首相のこの発言を材料視したようですが(とくに為替)、じきに効果は薄れると思います。

本格的な貿易戦争に突入した場合、人民元安はもう一段、7.3近辺まで必要になってくるはずですから。

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