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2018年10月の米国債利回り急上昇に対する私見

2018年10月の米国債利回り急上昇に対する私見~ISM非製造業景況観指数などの強すぎる景気指標、賃金上昇懸念、パウエル議長による中立金利発言、FRB米国債保有削減加速、国債増発懸念、原油先高感、中国からの輸入品への関税~

 

質問箱に、「米国債の利回りが急騰しているのは何が原因と推定するか?」という質問がありましたので、ツイートで書ききれなかった分をこちらにまとめます。

 

 

10月に入り、一気にいろいろな条件が揃ったなぁという印象です。

 

米債の売り要因になったと思われるものを思いつくだけ書き出してみます。

なお、自分は債券市場のトレーダーではありませんから細かいことはわかっていません。

また、経済学をかじっているわけでもないので、間違っている部分も多々あると思います。

あくまでも、中卒くん個人の見方としてお読みください。

 

 

 

とりあえず、以下が米国債の売り要因として考えられると思います。

  1. ISM非製造業景況観指数などの強すぎる景気指標
  2. Amazonの賃上げ、Fedexの年末要員募集などを受けた賃金上昇懸念
  3. パウエルFRB議長による中立金利発言
  4. FRB米国債保有削減加速
  5. 国債増発懸念
  6. 原油先高感(ベネズエラ、イラン産原油の供給減)
  7. 米中貿易摩擦による中国からの輸入品関税

 

 

 

ひとつひとつ見ていきます

1. 9月ISM非製造業景況感指数

ISM非製造業景況指数:9月は記録的高水準、全予想上回る Bloomberg

3日に発表されたISM非製造業景況指数がやたら強かった。

非製造業総合景況指数は61.6、この数字は97年8月の62.0に次ぐ高水準だとのことです。

自分はそのころは株をやってなかったのでどんな雰囲気だったのかよくわかりませんが。

また、景況指数は65.2で、こちらも2004年1月以来の高水準。

雇用指数は62.4に上昇。前月は56.7と雇用環境が逼迫気味であることを示しています。

 

 

 

2.Amazonの最低賃金引上げ、Fedexなど物流企業による短期労働者の賃金急上昇による全体的な賃金上昇懸念

1とも絡みますが、アメリカは好景気の影響がトリクルダウンで低賃金労働者にまで波及しようとしています。

10月2日、Amazonが最低賃金を15ドルに引き上げると言い出しました。

Amazon Raises Minimum Wage to $15 for All U.S. Employees, Including Full-Time, Part-Time, Temporary, and Seasonal

また、ジェフ・ベゾスCEOは連邦の最低賃金を15ドルに引き上げ、すべての企業がこの義務を負うことを望むとの方針を示しました。

これは、ウォルマートなど同業を念頭に、賃上げによって自社の優位性を保とうとする戦略の一環だと思われますが、これまであまり上昇してこなかった下流の人々の賃金が上昇し始めることによるコスト上昇とインフレ懸念が広がりつつあるようにみえます。

(具体的にどの程度波及するかは、エコノミストの方達の計算をお待ちください。自分は実際のところ、今回は雇用の逼迫が物価上昇率にあまり影響を与えないと思っていますが、市場は懸念を強めているように見えます。)

 

 

 

 

3.パウエルFRB議長による「中立金利」発言

2日、パウエル議長は中立金利(景気を過熱させもせず、冷え込ませもしない水準)について言及しました。

パウエルFRB議長、中立金利水準を超えて利上げを進める可能性ある

このなかでパウエル議長は、

「中立金利水準を超えることもあるかもしれない」

「今はまだ中立金利に達するまでには長い道のりがある」

「金利は依然として緩和的」

との発言をし、またそもそも中立金利がどの程度なのかの示唆をしませんでした。

これを受けて市場は中立金利を手探りで探る動きに転じたように思います。

 

 

 

 

 

 

4.FRBの保有資産縮小スケジュール

FRBは昨年9月に決めたとおり、スケジュール的に徐々に米国債保有を減らしていっています。今年10月はこれが加速するタイミングになっており、その影響も一部出ていると思われます。

FRB資産縮小の開始決定 12月の追加利上げ示唆

しかし今回、あまり騒がれていませんので、これはあまり関係ないかなと思っていましたが、もしかしてみんな忘れていただけでしょうか(笑)

 

 

 

5.米国債増発加速

米国債「大増発」時代 金利上昇圧力一段と

国防費とインフラ投資、トランプ減税に絡み国債の増発ペースが加速しています。

トランプ大統領は中間選挙を前に財政拡張に傾いており、そのことが国際需給を悪化させている面もあると思います。

 

 

 

 

6.ベネズエラ、イランの原油輸出能力減

アメリカはイラン核合意を破棄、イランに対して経済制裁を科すことを決定しました。

またアメリカはこのイラン制裁の方針を各国に守らせるように圧力をかけており、欧州、インドなどを中心にイラン産原油の輸入を取りやめる動きが出ています。

また、コノコフィリップスとPDVSAを巡る紛争が解決したことで、コノコはカリブ海のPDVSA資産を継承。このことによりベネズエラの原油輸出能力が大幅に落ち込んでいます。

18/6/8午前 ベネズエラPDVSA、原油積出待ちの滞船深刻化 不可抗力条項発動か?

さらにいうと、トランプ政権は中間選挙後には原油価格を気にせずにすみますから、ロシア産天然ガスの輸入やノルドストリーム計画への妨害を始める可能性があります。

これらにより、原油価格の上昇圧力が進む可能性があり、それを懸念した動きが出ているように感じます。

独露首脳がノルド・ストリーム2の推進で合意~ウクライナの立場が危うい~

 

 

 

 

7.米中貿易摩擦による関税率の引き上げ

米中貿易戦争が加速しています。

こちらも中間選挙前なこともあり、物価上昇率を抑える目的からトランプ政権はやや軟派な態度を中国にみせていますが、中間選挙後には大幅な引き上げをしてくる可能性があります。

(一部には、中間選挙後までパフォーマンスとして中国に厳しくあたるけれど、それ以降は緩和するとみている人がいる。でもそれは違うと自分は思います。むしろ、物価上昇率を抑えるためにフルに関税をかけていないだけじゃないかとみています。)

そういった面から、物価上昇圧力を感じている参加者が多いのではないかとみています。

 

 

 

とりあえず、こんなかんじです。

他に何か要素があるかもしれませんが、自分は思いつきません。

もしよろしければ、教えていただければ幸いです。

以上。