EUや中国からの報復関税で苦しむ国内農家支援のため、トランプ米大統領が農家に対して120億ドルの補助金を支援することを約束しました。これで潤うのはディア(Deere)やニューホランド(CNH)です。
トランプ政権は、通商摩擦で疲弊する国内農家を支援するために、緊急措置として120億ドルの支援金を用意するそうです。
これはひとつには、中間選挙をにらんだ動き。
もうひとつは、戦争長期化への布石としてのアピールといえます。
米国は現在、EUを相手に自動車関税分野で通商摩擦を抱えています。
さらには、中国とのあいだで知的財産権の保護、国内市場へのアクセスなどを巡って通商問題を抱えています。
通商摩擦、貿易摩擦などというヤワな言葉で済ませてはイケナイかもしれません。中国では紛争や摩擦という表現ではなく、これは戦争なのだと、みな口々に言っているそうです。
中国やEUに対して米国がかけた追加関税措置に対して、中国もEUも米国製品をターゲットにして報復関税をかけ返してきています。
とくに共和党保守層の地盤が強い農産品目への関税を集中的にかけてきています。
これにより、米国内の農産物、とりわけ大豆価格が大きく下落しています。
シカゴ大豆先物価格は上記のとおり、春先の価格から2割以上下落しています。
なお、シカゴとうもろこしも1ブッシェル300セント割れが目前。
超長期で見てもこれはかなり安い水準となっています。
直近では南米諸国からの買い付けが入っているようですが、輸送能力にも限りはありますし、下支えとしては非常に読みにくいものがあります。
(南米、とくにブラジルとアルゼンチンは、自国でとれた大豆を中国に高く売る一方で、安くなった北米産大豆を調達することで儲けるつもりのようです。)
とりあえず、こういうやり方で儲かるのは一部の商社などだけ。
この状況を打破するためにトランプ大統領は補助金を国内農家向けに用意するとのことです。
しかし個人的に予想するに、
このトランプ大統領による農業補助金は、さらなる農産品価格下落を招くリスクがある
と思います。
北米の農家は、日本の農家などとは異なります。完全にビジネスライクな農家なのです。
スタインベックの書いた「怒りの葡萄」のころの農家とは違います。
生き残った農家は、資本武装し、データを重視して保険や先物でヘッジしながら稼ぐ事業者になりました。
ちょっとやそっと価格が下落したくらいで生活に困窮するような人々ではありません。
そんな彼らがトランプ大統領が用意した農家向け支援金を手に入れたらどうするでしょうか。
まちがいなく、設備投資に回るはずです。
このトランプ大統領による農業補助金で潤うのは、農機世界最大手のディア(DE)やCNHインダストリアルです。
以下のサイトにジョン・ディーア社の製品ラインナップが載っています。
John Deere US | Products & Services Information
以下にジョン・ディーアの農機の動画へのリンクを貼っておきます。
以下にニューホランド(CNHインダストリアル社)の農機の動画を載せます。
他の会社もこういったものを作っていますが、代表的な銘柄として載せてみました。
あとは散水システム、とくにCenter Pivotなどの関連。
たぶん、こういった設備投資に回っていくはずです。
とりあえず、ディーアとニューホランドの株価チャートを載せておきます。
ジョン・ディア(John Deere/DE)
ニューホランド(CNH Industrial/CNHI)
どちらも同じようなチャートをしていますね。
両社とも、過去の農機販売データをみるかぎり、販売先の農家の懐具合次第で受注が決まってきています。
米中、米欧の通商摩擦が農家の懐を直撃するとの恐れからここもと値下がりが急でした。今回のトランプ大統領の方針でこの流れが変化するかもしれない、とみています。といっても、実際に業績に反映するとしたら2~3年後だとは思いますが。
とりあえず、まだ下げ途中ですから買っていくつもりはありませんが、一応様子を見守ろうと思っています。
以上です。
なお、当然ながら上記はあくまでも中卒くん個人の見解であり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資に当たってはご自分の判断で、自己責任でしていただきますようお願いいたします。