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USMCA(新NAFTA)まとめ

北米自由貿易協定NAFTA新協定(USMCA)まとめ

アメリカ、カナダ、メキシコの間で結ばれた新NAFTA(USMCA)について、各種報道をもとにザックリまとめておきます。

 

今回のUSMCAのキモは、輸入割当制度と対中国政策であると思われます。

とりあえず、見ていきましょう。

 


まず、今回のUSMCAについて、USTRのサイトをみてみましょう。

 

Office of the United States Trade Representative

United States-Mexico-Canada Agreement Text

 

・・・

・・・・・・ながい!

 

こんなものじっくり読むのは専門家に任せましょう。

我々一般人はとりあえず、各種報道をみてみましょう。

 

米とカナダが貿易交渉で合意、メキシコに合流-NAFTA見直し Bloomberg

情報BOX:米・メキシコ・カナダ協定の主な内容 ロイター

 

まとめますと、USMCAは以下のようなものになります。

以下、おもにロイターの記事を参考に、USMCAの個別項目の合意内容を見ていきます。

 

小売業・・・USMCAにおけるカナダの免税限度額は、国内売上税が40カナダドル、関税が150カナダドル。メキシコは国内売上税、関税ともに100ドル

 

 

医薬品・・・バイオ医薬品の特許保護期間を10年に設定。

個人的解説:バイオ医薬品の後発薬であるバイオシミラーの開始時期は遅れる。なお、TPPでは5年、もしくは8年だった。

これが米国製薬業界の反対する理由であったが(逆にベトナムなど薬の輸入国はバイオシミラーに限らず薬品の特許が早く切れることを望んでいた)、USCMAによって10年に統一されたことから、バイオ関連企業にとっては非常に強い追い風になるはず。医薬品価格は上昇することになりそう。

 

 

小麦・・・USMCAにおいてカナダと米国はお互いに、小麦輸入に関して相手国の小麦を低く格付けしないことで合意。

 

 

乳製品・・・カナダは国内乳製品市場の3.5%ぶんについて米酪農業者にアクセスする権利を与えることで合意。

個人的解説:まさに今回のカナダ・アメリカのNAFTA交渉で一番揉めた個所。カナダのトルドー首相は政権支持率が極めて落ち込んでおり、なかなか譲歩ができなかった。今回のUSMCA交渉においては、最後の最後で、小さいながらも風穴をあけられたトランプ大統領の勝利。

 

 

鶏肉・卵・・・米国側からの鶏肉輸出は協定発効後6年間、5万7000トンの無関税輸出枠が作られる。その後は1%。卵は1億2000万個まで無関税枠、その後10年間は1%。

 

 

著作権・・・カナダの著作権保護期間は著作者の死後70年に。今までは50年。

個人的解説:これもアメリカがTPPに参加しなかった理由の一つといわれる。今回のUSMCAでカナダの著作権保護期間は70年、アメリカと統一される。ハリウッドや音楽産業を多く抱えるアメリカにとっての勝利。

 

 

 

紛争処理・・・USMCAにおいても紛争処理制度の仕組みはこれまでとそのまま。カナダ側木材産業を保護したいトルドー政権が最後まで突っ切った形。

 

 

 

 

自動車・・・今回のUSMCAでは、カナダとメキシコは輸出枠制限を受け入れ。メキシコ、カナダともに年260万台の数量枠内ならば高関税がかからない。

自動車部品の無関税枠はメキシコ年間1080億ドル、カナダ年間324億ドル。原産地規則は、医機械部品調達率を62.5→75%以上へ。部品の40%は時給16ドル以上の地域で生産必須。鉄鋼とアルミは最低70%をNAFTA3か国内で調達義務化。

個人的解説:トランプ大統領が懸念していたのは、域外、とくに中国などから安い部品を輸入して組み立てて米国内で売ること。今回のUSMCAではこの点の解決が図られているようにみえます。

 

 

エネルギー・・・地下資源について直接的、不可侵、永続的に所有権を持つとの条項を導入


以上の内容でアメリカ、カナダ、メキシコは合意。

このUSMCAは、大統領貿易促進権限法(TPA/trade promotion authority)にしたがい、11月末頃にトランプ大統領が協定分に署名することで発効する見通し。

なお今回のUSMCAでも、米国が232条を根拠にかけているアルミ関税、鉄鋼関税はなくならない。輸入割当について合意が得られ次第解除する見通しとの方針は堅持。

 

今回のUSMCAでは、対中国を念頭に加盟各国が勝手に自由貿易協定を結ぶことを禁じています。

 

アメリカの外交政策、通商政策は、あきらかに対中国の封じ込めに焦点が移動してきているように思います。

これは、欧州のユンケル議長との会談あたりから出来てきた流れです。

関連記事:ドイツが中国への接近をやめ、米国になびきつつある件について

 

たぶんですが、これは日本に対しても同じことだと思います。


USMCAからみえる、日米物品貿易協定(TAG)に向けた流れ

 

今回のUSMCAからみえる、アメリカによる日本への要求は以下の内容だと思います。

・自動車部品、完成車の輸出枠設定・・・これは間違いないでしょう。飲まざるを得ないと思います。

・モノの貿易のより一層の自由化

・農産物の(部分的)開放・・・部分的開放で済む可能性が出ています。カナダは部分的開放で済んでいますから。

・対中国での協調・・・これはキモかもしれません。具体的中身がみえきていませんが、最終的にはブロック化の流れに持ち込もうとしている可能性すらあります。

 

これらに加えて、先日の日米首脳会談後の記者会見などからみるに、防衛装備品の購入、サービス分野などへの交渉範囲の拡大などが求められると思われます。

関連記事:日米物品貿易協定(TAG)に向けて新たな展開~日本がSM-3を大量購入かも?

 

とりあえず、そんなこんなで今回のUSMCA妥結によって日本車の輸出における最大の問題は解決に向かっています。

このことは、自動車株、自動車部品株のバリュエーション評価においてやりやすくなったことを意味します。

自動車、自動車部品セクターの向こう数週間の動きは、今回のUSMCAの結果を織り込んだ動きになるはず。

注意深く見ていったらいいと思います。

優勝劣敗が明確になるはずです。

以上です。