ファーウェイ排除で潤う企業まで売られている件~本来ならクアルコムにはポジティブなはず~
米国政府は米国内の企業に対し、ファーウェイとの取引を事実上制限することに決めたそうです。
米ファーウェイ輸出禁止令が発効、関連68社も対象 日経新聞5月17日
安全保障上懸念のある外国企業を列挙した「エンティティー・リスト」にファーウェイ本体と関連会社68社を追加。
米国企業が直接ファーウェイと取引することを禁じるほか、日本や台湾、韓国など米国外の企業がファーウェイと取引する場合においては、米国製品の比率が25%を超えないことが条件になるなど、海外の企業にとっても無視できない内容となっています。
今回の件で多くの企業が業績の下押し圧力を受けるのではないかと懸念されており、世界中でファーウェイ関連銘柄が売られました。
しかし、どうも個人的にはこの中の幾つかにおいては、ファーウェイの撤退で逆に潤う企業であるような気がして仕方ありません。
今回はその点について書いていきます。
なお、今回書く内容は裏付けなどがしっかりとれているものではありませんので、ことの正確性は保証できません。
それでもかまわないという方だけ、ごらんください。
ファーウェイのスマホが消えて潤う企業は?
ぶっちゃけて言います。
ファーウェイが制裁で傾いたなら、クアルコムは儲かるはずです。
というか、ファーウェイがいなくなれば、クアルコムは現時点でスマホ市場で独り勝ち状態です。
現状、世界の5G市場でモデムチップからSoCまでを設計できるのはファーウェイとクアルコムだけのはず。
サムスンが5Gスマホとして発売したSamsung Galaxy S10 5Gにも、サムスンが開発したSamsung Exynos 9820だけでなく、Snapdragon 855を載せざるをえなかったことからも、その実力がわかります。
また、Appleとクアルコムは先日電撃的な和解を遂げましたが、この背景にあるのも
「5G向けモデムチップは開発が困難。インテルですら開発に失敗してクアルコムに泣きつくしかなかった」
という事実です。
⇒特許紛争はクアルコムの勝利で終了~アップルは5G展開を急ぐためQualcommに泣きつくしかなかった~
5G向けモデムチップでも、現状、クアルコムとファーウェイの独壇場です。
向こう半年以内に展開される5Gスマホは、ファーウェイ以外のほぼすべての企業がクアルコムの「Snapdragon 855」と5Gモデム「Snapdragon X50」の組み合わせで展開する予定です。
もちろん、これはあくまでも現時点でのことであり、今後はサムスンも独自開発してくるでしょうし、メディアテックなども参入してくるでしょう。
⇒【2454.tw】MediaTek(メディアテック)の業績、決算と株価
しかし少なくとも、ファーウェイが消えれば現時点でスマホ市場で実績、実力ともにナンバーワンはクアルコムということになります。
チャート的にはクアルコムの動きはあまり好ましくないため、すぐにInする必要もないと思いますが
悲観論に市場が塗れて大きく下落した場合には、おいしいのではないかと思っています。
通信機器市場からファーウェイが消えて潤う企業は?
なお、ファーウェイはスマホだけでなく、通信機器も大手です。
5G向け基地局設備ではファーウェイは世界シェア2位だったそうです。
これだけアメリカに目の敵にされてきたのに、まだ世界シェア2位です。
ちなみに1位はエリクソンです。
たぶん、ファーウェイが消えれば、エリクソンは潤います。
ファーウェイが消えても影響がない企業は?
理屈で考えるならば、ファーウェイが消えても事実上、影響がない企業も多いと思われます。
ファーウェイがスマホを作れないなら、ファーウェイ以外のところが作るだけです。
ファーウェイが基地局を作れないなら、ファーウェイ以外のところが作るだけです。
ファーウェイが消えたって、5Gが取りやめになるわけではありません。
他の企業がとってかわるだけなはず。
理屈で言えば、メモリやキャパシタ、インダクタなど汎用部品の企業は売られる理由がないはず・・・だけど売られている・・・この背景はなんでしょうか?
1つには市場の認識ミスの可能性があります。
単純に怖がっているだけという可能性です。
ただもう1つの可能性は、やや仄暗いものです。
アメリカはファーウェイを叩くことで、中国に5G整備させたくない可能性
つまりそういうことです。
中国の5Gの整備を遅らせることが一番の目的である可能性。
それであれば、汎用電子部品の株価が落ちる理由もわかります。
中国に5Gの主導権を握らせず、5G導入によって生み出されるサービスについて中国が先んじることを邪魔したい・・・
そういう意図でファーウェイを叩いているのなら、5Gの導入時期が後ずれすることになりますから、電子部品関連株が売られる理由もわかります。
なお個人的には、ファーウェイがアメリカに禁輸された場合に一番のネックになるのはPLDじゃないかと思っています。
ファーウェイは傘下のハイシリコンでスマホ用のSoCやモデムチップ、AI半導体、サーバー用の画像解析システムLSIなどいろいろ作っています。
⇒ファーウェイ傘下の半導体設計企業『HiSilicon(ハイシリコン/海思半導体)』
⇒ファーウェイのAIチップAscendを積んだサーバー群『Huawei Atlas 200,300,500,800』について
⇒ファーウェイがARMベースのCPU『Kunpeng 920』とサーバーシリーズ『TaiShan』を発表
しかし、ハイエンドのPLD分野は中国はまだこれといった企業が育ってきていないはず。
この分野はザイリンクスやアルテラ(インテル)など大部分が米国企業です。
基地局向けにはPLDは絶対に必要ですから(技術更新やセキュリティ向上のため)、もしこれが途絶えると非常に困ったことになります。
とりあえず、ファーウェイはこの分野も自前で開発しないといけない。
つまりそれまで中国の5G整備が遅れるということ。
そこがミソなんじゃないかとみています。
なお、一説によればこうなることを見越してファーウェイは既に大量のPLD在庫を抱えているとも言われています。
また、そもそもにおいてPLDをファーウェイに流さないということが現実的に可能なのか?という問題もあります。
そういう意味では、自分の見立ては杞憂かもしれません。
以上。