ペンス副大統領が欧州がイランとの貿易用に設立した『特別目的事業体(SPV)』を痛烈に非難
ペンス副大統領、対イラン『特別目的事業体(SPV)』を痛烈非難
アメリカのペンス副大統領がポーランドのワルシャワに到着、中東和平を巡る会議に出席しました。
この会議にはアラブ諸国とイスラエルを含めて60か国が出席しましたが、欧州で開かれた会議にも関わらず、フランスとドイツが外交トップを派遣せず。
イギリスもメイン会議の前にハント外相が退席するなど、米欧の溝を浮き彫りにする内容となりました。
この会議の席上、ペンス副大統領は欧州が対イランの貿易用に作った『特別目的事業体(SPV)』について
“an effort to break American sanctions against Iran’s murderous revolutionary regime”
“It is an ill-advised step that will only strengthen Iran, weaken the EU and create still more distance between Europe and the United States,”
「アメリカによるイランへの制裁を弱める試みであり、イランを利するだけであり、EUを弱め、米欧の溝を深めるだけだ。」
として猛烈に非難しました。
Pence, at summit, lashes out at Europeans over Iran
これに対して欧州の外交官たちは一斉に反発。
米欧の溝は既に相当に深いものになりつつあります。
欧州が対イラン貿易用に作った『特別目的事業体(SPV)』
今回、ペンス副大統領が非難したのは、欧州が対イラン貿易用に作った『特別目的事業体(SPV)』についてです。
昨年5月、米国は対イラン核合意から離脱しました。
この背景には、対イスラエルで強硬姿勢を続けるイランへの圧力を強め、政権転覆を狙うアメリカの意図があります。
また、当時はサウジアラムコが上場か?と言われていましたので、IPOに向けて原油価格を引き上げる意図もあったかもしれません。
とりあえず、アメリカはイランとの核合意から離脱し、制裁を科すことを表明します。
また、欧州諸国や日本などの同盟各国に対しても、イランとの取引を中止するよう要請します。
しかし、イランには欧州各国の企業の権益が存在していましたし、イランからのエネルギー調達は欧州諸国の一部にとって、重要なエネルギー源でした。
というわけで、欧州諸国の中にはイランとのエネルギー貿易を継続したい勢力もあり、こうした取引を円滑に行うために『特別目的事業体(SPV)』を設立することになりました。
対イラン貿易における『特別目的事業体(SPV)』の役割
この『特別目的事業体(SPV)』ですが、何が抜け道かというと、ようするに米ドル決済を利用しないという点です。
既存の金融システムを利用してSWIFTコードによる決済などを行うのであれば、アメリカが取引不可とした人物、国とは取引できません。
けれど、決済システムを自分たちで作り上げ、ドルに頼らない取引ならば、イランとの取引を継続できる・・・ということのようです。
Remarks by HR/VP Mogherini following a Ministerial Meeting of E3/EU + 2 and Iran
とりあえず、バーター取引のちょっと変化したバージョンみたいなもののようですが、これによって米国側が法的に制裁できない状況を作り上げ、国家ぐるみで、EUぐるみで抜け道を用意したことになります。
アメリカは当然、こうしたやり口に怒りました。
それが今回のペンス副大統領の発言に繋がっています。
とりあえず、米国はこの対イラン制裁の問題以外にも、ノルドストリーム2によるロシア産天然ガスの輸入や、ベネズエラへの圧力強化など、エネルギー関連を巡って声を高めています。
この背景に、国内シェール開発業者への気配りの影響があると思われます。
全ての点を、エネルギー安保としての視点から見れば、かなりわかりやすい状況になってくるでしょう。
これについてはおいおい別の記事でも書いていきますので今回はこれまでにしますが、とりあえずアメリカの政策は、人道とかそんな生易しいことだけで説明できるものでないことは確かです。
以上。