米政府、欧露間ガスパイプライン『ノルドストリーム2』に対して制裁も辞さない構え

米政府、欧露間ガスパイプライン『ノルドストリーム2』に対して制裁も辞さない構え

 

米政府が『ノルドストリーム2』参画の企業に経済制裁か

欧州とロシアのあいだで建設中のガスパイプライン『ノルドストリーム2』。

これに参画する企業に対し、米政府が経済制裁も辞さない構えであるということをポンペオ米国務長官が示唆しました。

Pompeo says Nord Stream 2 natural gas pipeline brings ‘enormous security risk’ to Europe

「ノルドストリーム2の建設により、欧州はロシアの罠に嵌ってしまうことになる。そんな罠に嵌るのはやめて、米国から液化天然ガスを購入すべき。それが欧州の安全保障上好ましい・・・」

ポンペオ国務長官が言いたいことを要約すると、そんなことのようです。

なお、ノルドストリーム2についての詳細は以下に書いています。

独露首脳がノルド・ストリーム2の推進で合意~ウクライナの立場が危うい~

 

『ノルドストリーム2』とはなにか?

『ノルドストリーム2』とは、ロシアと欧州を結ぶガスパイプラインのひとつです。

現在、欧州とロシアのあいだにはウクライナ経由のパイプラインと、バルト海を通る『ノルドストリーム』(2011年完成、ヴィボルグ~グライフスフヴァルト)があります。

今回、このノルドストリームの容量が逼迫してきたため、あらたに『ノルドストリーム2』を建設する計画が持ち上がり、建設作業が行われています。

これに対して、アメリカが非常に不快感を示しています。

 

『ノルドストリーム2』参画の企業とはどこか?

アメリカは、ノルドストリーム2の参加企業に制裁を科すかもよ、と示唆しています。

さて、『ノルドストリーム2』の参加企業はどこでしょうか?

自分の記憶が正しければ(そしてその後にデータが変わっていなければ)じつは、これは現在Gazprom一社となっています。

以前はRoyal Dutch Shell、 OMV 、Uniper(もとE.ON)、Engie(元GdF Suez)、Wintershallなども参画する予定だったのですが、ウクライナやポーランドが反対したことで、現在は参加企業が欧州側でない状況です。

そして、これこそが大きな問題になっています。

 

 

『ノルドストリーム2』の建設にEUが規制案を導入か

先日8日のことですが、EU加盟国は会合をひらき、『ノルドストリーム2』の建設に関してEUが規制する法案を導入する方針で一致しました。

これまでドイツとフランスが同法案に反対していたのですが、EUの多数派が反対している状況ではドイツの主張が通らないとみて、妥協に転じました。

じつはこの『ノルドストリーム2』規制案のなかに、「ガスパイプラインの所有者は、ガス採掘業を行わない」という、上流権益と中流、パイプライン権益の所有を明確にわける条項が入っているようなのです。

この採決はまだ最終合意には至っていませんが、もし上流と中流を明確に分離する内容だった場合、ガスプロムは『ノルドストリーム2』から手を引かざるをえず、かといってドイツ企業などがパイプラインを保有したら、米国から制裁を受けるかもしれない・・・そういう状況になってきているわけです。

 

 

米国は、『ノルドストリーム2』建設よりも、シェール由来のLNGを購入するよう圧力

米政府は『ノルドストリーム2』によって欧州がロシアからの天然ガスを購入するよりも、米国のシェール由来の天然ガスを液化したLNGを購入するように欧州諸国に迫っています。

このLNGは輸送コスト、液化コストなどを含めてロシア産天然ガスに比べて25%程度割高になるということですが、それでも安全保障上、アメリカから買った方がいいぞ、と圧力をかけています。

安全保障を盾にして、ビジネス的にアメリカ企業が儲かるように仕向けているようにしかみえませんが、とりあえず、アメリカはそういう外交方針のようです。

 

 

米国は『ノルドストリーム2』を利用してEU内部の結束を崩そうとしている可能性

なお現在、ペンス副大統領がポーランドのワルシャワに行っています。

欧州がイランから原油などを購入することを批判する演説をぶちあげました。

ペンス副大統領が欧州がイランとの貿易用に設立した『特別目的事業体(SPV)』を痛烈に非難

 

またポンペオ国務長官も、上記の通り東欧外交を行っています。

どうもここもとの動きをみると、米国は『ノルドストリーム2』や対イラン制裁措置を利用して、EUの結束を乱しているようにみえます。

それも意図的に。

 

 

米国の本当の意図は、欧州を大きくしないことにあるのではないか。

アメリカに匹敵する勢力を作らないように頑張っているだけなのではないか、そんな可能性がみえてきます。

中国の通信機器製造企業ファーウェイの問題でも、アメリカは欧州諸国に踏み絵を迫っています。

ファーウェイ(Huawei/華為技術)をフランスとドイツは排除せず

 

どうも、アメリカの真意は、欧州の安全保障というだけでなく、アメリカの企業の利益や、欧州の発展の阻害なども含めたものなのではないかという気がしてきます。

また、この流れで欧州のポピュリズムを眺めると、また違った景色がみえてくるように思えます。

とりあえず、そこまで言ってしまうと陰謀論じみてしまいますのでやめておきますが、どうも、米国の利害が欧州の利害と対立する場面が増えてきているように見えます。

このことが、米国の孤立に繋がらなければいいけれど・・・と思います。

とりあえず、以上です。