【9107】川崎汽船の業績・決算と株価~国内海運大手3社の一角

【9107】川崎汽船の業績・決算と株価~国内海運大手

今回は、国内海運大手3社のうちの一角で独立系の川崎汽船についてみていきます。

川崎汽船は他の大手海運2社(商船三井、日本郵船)に比べ

コンテナ船の比重が高く、ここもとのコンテナ船市況悪化によって業績が急激に悪化しています。

とりあえず、そこらへんも踏まえて、まずは川崎汽船の事業内容からみていきましょう。




 


川崎汽船の事業内容

川崎汽船の事業内容は単純です。

海運事業です。

ようするに、船を使って荷物を輸送する会社ということになります。

運ぶ荷物は、雑貨などを詰め込んだコンテナであったり、原油やLNGであったり、鉄鉱石であったり石炭であったり、自動車であったり・・・いろいろです。

 

コンテナ船事業に強い川崎汽船だったが・・・

とりあえず、そういったもろもろの荷物を船で運んでいる川崎汽船ですが、とくに同社はコンテナ船に力を入れてきた企業として有名です。

最近、決算の開示セグメント情報を組換えしたせいでわかりにくくなりましたが

(わざとコンテナ部門の赤字をみせないように組み替えたよね?)

2017年度までの決算の情報でいくと、

コンテナ船が6037億円の売上に対して

不定期専用船が5239億円の売上となっており

国内海運事業者にしてはコンテナ事業への傾注が強い企業となっていました。

 

しかし、これが昨今非常にネガティブに働いています。

コンテナ船業界は、いわゆる2Mと言われるマースクとMSCの2社が大規模低運用コストの巨大コンテナ船をガンガン走らせることで、その他多くのコンテナ船オペレーターを赤字に追いやることに成功。

川崎汽船もその例にもれず、盛大に赤字を出すことになりました。

そしてこのコンテナ船事業の低採算は国内海運各社揃った悩みであり、そのため、商船三井、日本郵船、川崎汽船の3社は、新たにコンテナ船事業を分離するかたちでOCEAN NETWORK EXPRESS社(ONE)を立ち上げます。




 

川崎汽船とONE社(OCEAN NETWORK EXPRESS社)

川崎汽船と日本郵船、商船三井は不採算のコンテナ船事業を切り離して新たな組織、ONE社に共同運航をさせることにしました。

ところが、このONEが立ち上げ当初から躓きました。

この理由は色々長くなるので割愛しますが、とりあえず、3社の連携がとれていないことが一つの問題、そして、分離しようが統合しようが、勝ち目のない戦いなのは変わりない・・・というのが2つめの理由じゃないかと思われます。

そんなわけで、川崎汽船は業績の悪化しているONE社向けに転貸していたコンテナ船の用船契約について損失を引き当てするとともに、その他の用船契約の解約なども行う方針をかため、特損を計上しています。

かかる費用が650億円。

泣きっ面に蜂とはまさにこのことでしょう。

 

川崎汽船によるドイツSAL社の買収と失敗

川崎汽船は2007年、ドイツのSAL社に50%の出資をします。

これにより重量物船事業に参入したわけですが、リーマンショックなどを受けて当初から業績には暗雲が立ち込めました。

その後、2011年には50%も追加で取得するのですが、業績はまったく浮上せず、結局は2017年にドイツ系SALTOに売却することになりました。

下にはここ数年の業績推移がのっていますが

重量物船がどれだけお荷物だったのか、よくわかると思います。

また、コンテナ船は、基本的に厳しい事業なのもわかります。

 

 

 


川崎汽船の2018年Q3決算と業績修正

Q3決算が終わった時点での川崎汽船の決算内容を見ていきます。

(後程書きますが川崎汽船はQ3後に大赤字予想をさらに出します。)

 

コンテナ船統合のONEは下期経常 84億円の赤字 を予想

2Q終わった時点からは8億円改善しましたが、それでもまったく赤字解消するめどが立っていないようです。

コンテナ船の川崎汽船本体に残した分は2Q比経常で33億円悪化しています。

川崎汽船は利払いが非常に多い企業ですね。

営業利益が余程大きく増えないと、利払いでかなり厳しい。

資本増強まったなしでしょう。




 

川崎汽船のセグメント別業績

ドライバルクはマシになっていますが、これは上期までの貯金のおかげ。

下期は急速に悪化傾向です。

コンテナは製品物流に混ぜ込まれていますが、ちょっと酷いですね。

 

川崎汽船、業績下方修正

なお川崎汽船は3月7日、業績を下方修正しています。

問題となっているのは、ONE向けなどに転貸している傭船契約を損失引当するというもの。

つまるところ、ONEが儲かっていないことにすべて起因する問題ではあるのですが、しかしこれは3Q発表時に既に会社側はわかっていたことなのでは?

どうもここらへん、マネジメントの下手さもそうですが、それ以前の問題が川崎汽船にはいろいろあるように感じます。

 

川崎汽船とエフィッシモ・キャピタル・マネージメント

なお、川崎汽船の株式の38.99%は、旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが保有しています。

昨今、このエフィッシモが日本郵船の株式も買い始めているとして、市場には両社の統合があるのではないか、との憶測が流れています。

とりあえず、その場合は川崎汽船を日本郵船に高値で買い取らせる形になるのでしょうが、果たしてどれだけの日本郵船株主がそのディールに乗るか。

個人的にはちょっと興味があります。

どう考えてもあまりおいしいディールにみえませんし・・・

 

 

 

川崎汽船の株価

川崎汽船の株価は、ボロボロです。

単元切り替えしていますので1370円ですが、昔で言ったら137円です。

第一中央汽船とかそういうのの株価状態。

随分と落ちぶれました。

 

個人的には、エフィッシモは今回、かなり危ない橋を渡っているように感じます。

自分だったらこれはやりませんね。

難しすぎる気がします。

とりあえず、以上です。

 

なお、上記はあくまでも個人的見解です。

特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。

投資にあたっては自己責任でお願いいたします。


川崎汽船 追記

非常におもしろいところに気づいた方がいらっしゃいますw

 

 

ちょ・・・w

債券運用で回しているのに、退職給付が期待収益率7.9% www

数字に誠実さがまったく感じられません。

創業100年を数える老舗企業がこういうのをシレッと盛り込むあたり、なんとも日本の企業への信頼を落としているなぁと思います。

 

しかしよく気づきましたね・・・尊敬します。。。