トヨタイムズにみるトヨタ自動車の企業統治のヤバさ
『トヨタイムズ』はじまる
いやはや、びっくりしました。
トヨタ自動車がいつの間にやら『トヨタイムズ』なるサイトを立ち上げツイッターなどを利用して広報活動に専念しています。
もちろん、それだけなら何でもないことです。
自社の広告サイトくらい、自動車メーカーに限らずどこの会社だって立ち上げています。
それだけなら、別に珍しいことでもなんでもありません。
ただ問題は、この『トヨタイムズ』というサイトの中身です・・・
『トヨタイムズ』とはどのようなメディアか?
今年1月1日にできたばかりの『トヨタイムズ』のホームページおよびツイッターアカウントですが、
まず第一弾、最初に更新されたページには以下のように書かれています。
2019.01.01 「トヨタイムズはじまる!」
あけましておめでとうございます。モリゾウです。
本年もまた、健やかに新しい年を迎えることができました。
これもすべてはお客様、地域の皆さま、関係者の皆さまのご支援あってのことです。
改めて感謝申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。
今日から『トヨタイムズ』がスタートしました。
トヨタイムズは、トヨタに関わる全ての方に、トヨタのインターナル(内側)をお見せするメディアです。
なるほど、トヨタイムズというのは
「トヨタのインターナル(内側)」をお見せするメディア
だそうです。
なるほどなるほど、それはいい企画ですね。
トヨタ自動車はとてもいい会社なのでしょう。
「トヨタ自動車のことを消費者の皆様にもっとよく知ってもらいたい、インターナル(内側)をもっと知ってもらいたい、俺たちの会社はいい会社なんだよ!」
と従業員が自社のクルマを買ってくれるユーザーに向けて、自社の広報をしようということなのでしょうか?
・・・どうもそうではなさそうです。
『トヨタイムズ』は誰のためのメディア?
トヨタイムズはトヨタ自動車の作った車を愛好するファンやユーザーのためのメディアなのでしょうか?
・・・いえ、どうもそうではなさそうです。
なにやらどうも違う様子・・・
それは以下の文章にあらわれています。
未来のモビリティ社会を一緒につくる仲間に、トヨタのありのままの姿、私のありのままの姿を
できる限りオープンにしていきたいと思います。
・・・ん???
「未来のモビリティ社会を一緒に作る仲間」に
「トヨタのありのままの姿、私のありのままの姿」
をオープンにしていくって???
へ?
「未来のモビリティ社会を一緒に作る仲間」というのは誰のことでしょうか?
従業員?取引先関連企業?株主?債権者?
よくわかりませんが・・・このサイトは消費者のためのものでなく、取引先や株主のためのサイトですか?
『トヨタイムズ』とは、トヨタ自動車という会社と、豊田章男を並んで紹介するサイト?
もうひとつ、『トヨタイムズ』には聞き捨てならない表現があります。
それは、
「トヨタのありのままの姿、私のありのままの姿」
という一文。
なんで、トヨタと私(モリゾウこと豊田章男)が並列構造になっているんでしょうか。
トヨタ自動車と豊田章男はいつから同列視されるべき対象になったのでしょうか。
豊田章男は、あくまでも経営者です。取締役です。
株式会社における取締役は、株主から経営を負託された存在でしかありません。
日産自動車の経営者はカルロス・ゴーンでしたが、「カルロスゴーン=日産自動車」ではありません。
おなじく、「トヨタ自動車=豊田章男(モリゾウ)」ではありません。
それなのに、なんだかやたら偉そうじゃありませんか?
トヨタ自動車の企業統治はどうなっているんでしょうか?
『トヨタイムズ』というのは、豊田章男を礼賛するメディアですか?
『トヨタイムズ』は豊田章男の活躍を紹介するメディア???
『トヨタイムズ』は豊田章男を礼賛するメディアなのでしょうか?
・・・そのあたりについては『トヨタイムズ』をご覧になって各人が判断していただければ良いと思いますが・・・
とりあえず、2019年3月11日現在までに『トヨタイムズ』に投稿された28の記事のタイトルと内容紹介文のうち、豊田(章男)、モリゾウなどの単語が含まれていないものは、以下の4つの記事しかありません。
2019.02.05 残念ながら買いたい。香川編集長が語る、新型スープラへの期待と忘れられない思い出
2019.01.28 NewsPicks がトヨタイムズをハック!トヨタ技術部は、「白い巨塔」か?
しかも、それらも中身をみてみれば、どれも豊田章男社長がどれだけ労使間の交渉を頑張っているか・・・などを紹介するものばかり。
以下の記事なんてさらに酷い・・・
2019.02.05 残念ながら買いたい。香川編集長が語る、新型スープラへの期待と忘れられない思い出
スープラに対する熱い思いを香川照之に語らせるという形態をとりながら
何より度胸と勇気と、飛び込んでいくちょっとしたアブノーマルな心がないとできないので、それはたぶん豊田家という一族が持っている非常に特殊な血がそうさせているという部分もあるんじゃないですかね。
・・・と豊田章男、豊田家をマンセーさせる念の入れよう。
結局、『トヨタイムズ』はトヨタ自動車の内情を紹介すると言っておきながら、豊田章男社長を礼賛し称揚するメディアになり下がってしまっています。
しかもこれ、構成からして豊田章男本人がちゃんとわかっているはずです。
インタビューや、つぶやきなどの寄稿文を寄せているのですから。
豊田章男本人がわかって『トヨタイムズ』は運営されている・・・いろいろと恐ろしいものを感じます。
『トヨタイムズ』はトヨタ自動車の株主のカネを使って豊田章男をマンセーするためのメディア?
一応自分は、この記事を書く前にサイトの中身を全部読ませていただきました。
その上で、個人的な感想を述べさせてもらえれば、どうもこの『トヨタイムズ』というメディアは、
「トヨタ自動車のカネ」を使って豊田章男を礼賛するためのメディアのように感じます。
とりあえず、「トヨタ自動車のカネ」と書きましたが、本来であればそれは株主のカネです。
経営とはあまり意味がなさそうな、豊田章男という経営者個人にたいするマンセー記事をつらつら並べるメディア『トヨタイムズ』・・・
それの費用は回り回ってトヨタ自動車の株主一人一人が負担しているカネです。
豊田章男は企業統治をなんだと思っているんでしょうか?
本当にこれが、コーポレートガバナンスが優れているとして称賛される会社のすることなんでしょうか?
本当にこれが、日本一の時価総額を誇り、日本を代表する大企業『トヨタ自動車』のすることなんでしょうか?
豊田章男による豊田章男のためのメディア『トヨタイムズ』を誰も止められないという現実
この『トヨタイムズ』なる社長広報メディアを主導しているのは豊田章男本人なのでしょうが、実際に作っているのは、トヨタ自動車の内部の人物なのでしょう。
もうそのこと自体に、うすら寒いものを感じます。
だれも豊田章男本人に「社長、それはやめた方がいいですよ」と諫言できないのです。
むしろ、このサイトの構成の仕方などを見る限り、思いっきり豊田章男本人をアピールしています。
ある意味、経営トップに対するゴマ擦りでしょう。
そういった個人崇拝を良しとする古臭い土壌が、トヨタ自動車にはあるということです。
こういった古臭い土壌には、必ずカビが生えます。
いずれそれはわかります。
10年、20年、、、何年先かわかりません。
少なくとも、ドコモの立川だって、富士通の秋草だって、ソニーの出井だって、西武の堤だって、三越の岡田だって、みんな当時は天皇だったんですから。
トヨタ自動車が10年後、20年後にどうなっているのか、それが心配でなりません。
以上。
追記:トヨタイズムと誤植していました。トヨタイムズに訂正しました。2019年3月13日