【6955】FDKの業績・決算と株価~水素空気二次電池で注目集める富士通系電池メーカー

【6955】FDKの業績・決算と株価~水素空気二次電池で注目集める富士通系電池メーカー

今回は富士通系電子部品・電池メーカーで、水素空気二次電池や固体電池などの開発を進めているFDKについてみていきます。

と同時に、軽く空気電池の説明なども交えようと思います。

とりあえず、FDKの事業内容からみていきましょう。




 


FDKの事業内容

FDKの事業内容は、電池と電子部品となっています。

FDKの電池はおもに富士通系の電池として販売されているほか、パナソニックのeneloopなどもFDKのOEM製品となっているようです。

なお、電子部品事業は赤字体質から脱することができず、業績が好調なときですら赤字を垂れ流すことが多い事業となっています。

 

FDKが水素を使った空気電池を開発?

FDKは空気電池の開発を進めていると、日経新聞2019年3月16日に報じられています。

この報道によると、

「(前略)富士通系電子部品メーカーのFDKは水素を使う特殊なタイプで3年後の実用化にメドをつけた。NTTは本命候補のリチウムを使うタイプで長寿命の電池を試作した。(中略)FDKが開発した空気電池は水素を酸素と化学反応させて電気を作る。ハイブリッド車などに使われているニッケル水素電池の構造を生かし、ニッケルを使う正極を酸素に置き換えた。貴金属のルテニウムを主成分とする微粒子を付け、反応を進みやすくした。充電と放電を500回繰り返しても、性能の低下は1割以下だった。再生エネの電力貯蔵向けなら、10年ほど使えるとみている。(後略)」

ということです。

つまりどういうことかというと・・・と説明する前に、空気電池について説明が必要なんで、別途ページを作ったんでそちらをご覧になってください。

中卒が空気電池について軽く解説




 

FDKが開発しているのは水素空気二次電池

なお、今回FDKが開発したという空気電池は、他のメーカーが進めているようなリチウムを利用した一般的な空気電池とはちょっと異なる模様。

水素吸蔵合金に水素を蓄えておいて、それを負極活物質として利用、正極は他の空気電池と同様に大気中の酸素を利用する・・・という特徴からすると、つまり燃料電池のようなもののようです。

水素空気二次電池というものらしいですが、用途としては産業用、再生可能エネルギーの蓄電用等のほか、家庭用・事業所用バックアップ電源、航空機用、ドローン用、モバイル機器用、電気自動車用など幅広い用途を検討しているとのこと。

開発にはFDKのほか、大分大学工学部、同志社大、トヨタ自動車、日本重化学工業、東洋アルミニウム、科学技術振興機構などが関係しているとのことです。





 

FDKの業績~過去5年間

 

ここからはFDKの業績について、会社側資料をもとにみていきます。

まず最初にここ5年間のFDKの業績推移・・・

酷いですねこれは。

好業績だった時期にも大して利益を上げていません。

 

FDKの業績~2018年Q3

次に直近のFDKの業績についてみていきます。

売上高は対前年で0.8%増、営業利益は急回復していますが、利益率はたった2%弱・・・

あまりにも酷い業績です。

風が吹けば飛んでしまいそうな業績です。

この背景に、富士通が親会社として君臨していることによる、企業統治上の弊害があるように思われます。

 

 

FDKのセグメント別業績

FDKのセグメント別業績をみると、この業績の酷さの原因がわかります。

とりあえず、電池事業は営業利益率が5%程度と低いながらも利益は出しています。

しかし、電子部品事業が酷い。

万年赤字体質です。

本来なら切り離すべき事業ですが、そうしてこなかったのは、親会社が富士通でがっちり株式を握っており、一般株主の利益なんざ気にしない経営をやっているからでしょうか。

 

 

FDKの株価

 

FDKの月足株価

FDKの日足株価

酷いものですね、これは。

FDKが東証一部に上場したのが1984年

上場直後に一時的にご祝儀で上昇しましたが、その後は一貫して下落トレンドにあります。

バブル経済の真っただ中ですら、高値になっていません。

酷いもんです。

その後はほとんどゾンビのように地の底を這ってきたのがFDKという会社の株価。

長期チャートでみれば、水素空気二次電池による上昇なんて微々たるもんです。

この背景に、企業統治上の問題があると思われます。

つまるところ、大株主富士通のせい。




 

 

 

FDK株は親会社富士通が過半数保有~企業統治上の問題に~

FDKの上場株式の過半数、68%は富士通が保有しています。

FDKの経営陣としては、富士通の求める経営をしていればそれでよし、という意識になるでしょう。

他の少数株主の意向なんて知ったこっちゃありません。

富士通の利害に反しなければOK・・・そういう考えになるのは合理的です。

 

ではなぜ富士通は子会社であるFDKの低収益体制をそのままにしておくのか?

その背景には、富士通が過去に行ってきた悪行があるように思います。

  • ニフティ
  • 富士通ビジネスシステム
  • 富士通エフサス
  • 富士通システムコンストラクション
  • 富士通アクセス
  • 富士通デバイス
  • 富士通ビー・エス・シー
  • 富士通コンポーネント

こちらは過去に富士通が子会社上場させたのち、非上場化(子会社化)した企業群です。

多くの銘柄がITバブル相場の前後に上場され、非常に高い株価をつけました。

そして、多くの銘柄はその後に株価下落しました。

富士通BSCは8000円がIPO初値、富士通に再度買収された時は1000円くらいだったと思います。(要確認)

エフサスなんて酷いもので、2001年に上場したばかりなのに、同様の手口で2004年に買収して子会社化してしまいました。

親子上場っていうのは、そういうことをサラッとできる仕組みなわけです。

少数株主の排除を東証も日本政府も黙認しているのが現状です。

富士通としては、FDKを買収するメリットがみえてきたら、すかさず買収して子会社化するでしょう。

その時には、FDKの株価は低ければ低ければ嬉しいのです。

逆に、FDKを買収するメリットがないなら、取引関係を利用してひたすら納入価格を叩いて安くこき使えばいいのです。

資本関係が歪だと、そういうことになりかねません。

 

 

親会社富士通と取引関係のあるFDKに利益相反行為はないのか?

なお、FDKと富士通とは資本関係だけでなく、FDK製品の納入なども行っており、取引関係があります。

この点について、FDKと富士通との取引内容がどのようなものであるかを示す資料はありません。

ただ、電子部品事業がながらく赤字体質なことからして、無理な受注を繰り返していることは容易に想定されます。

親会社富士通との間に、利益相反行為がないのかどうかについては、検証の余地があるのではないかと思われます。




 

 

なお、FDKの社外取締役には江口直也という人物がついていますが、この方は関係先企業である富士電機顧問と古河電池取締役を兼ねています。社外取締役としての適格性に疑問符がつかないのが不思議でなりません。

きっとなにか、内側でいろいろな思惑があるのでしょう。

 

というわけで、個人的にこのような会社を長期投資目線で投資することには非常に危険性を感じます。

とりあえず、日本の資本市場のルールがまともにならないと、親子上場企業は手を出しにくいと思われます。

やれ空気電池だ固体電池だなどという材料に踊るのも楽しいでしょうが、もし長期投資をスタンスにしているのなら、しっかりと企業の統治状況を眺めて投資を行った方がよろしいかと存じます。

以上です。

 

なお、上記はあくまでも個人的見解です。

特定の投資行動をお勧めするものではありません。

投資にあたっては自己責任でお願いいたします。