MBO(マネジメント・バイ・アウト)に『レブロン基準』導入を!

MBO(マネジメント・バイ・アウト)に『レブロン基準』導入を!

 

経産省がMBO(マネジメント・バイ・アウト)をめぐるルール策定作業を開始

経産省が少数株主保護のため、MBO(マネジメント・バイ・アウト)をめぐるルール作りに着手するとのことです。

MBOとは、経営陣による自社株買い占めのことをいいます。

経営陣はMBOによって自社株を買い占めたあと、非上場化し、少数株主を排除し、自分たちだけで利益をむさぼり、ほとぼりが冷めたら再上場し、上場益を再度得る・・・そういう方法がMBOです。

しかしこれは、本来であれば少数株主が得られたはずの利益を経営陣が奪う行為に等しいことになります。

 

 

MBO(マネジメント・バイ・アウト)における問題点

MBOにおける一番の問題点は、情報の非対称性にあります。

投資家は一般的に、会社内部の情報を隅々までは把握していません。

実態はとても業績がいい会社でも、周囲からみたらあまりよくない会社に見えることもあります。

市場から注目されず、年中安い株価のまま放っておかれる場合もあります。

法的にみると、経営陣は株主価値の極大化を目指すべく、経営を負託された存在です。

経営陣は市場との対話作業としてIR活動(Invester Relations)に勤しみ、しっかりと株価が高くなるようにふるまうべきです。

しかし日本では残念ながら、そうした最低限の行為もできない経営者がザラにいるのが現実です。

万年、安いまま放置された株式が、MBO発表によって経営陣によって買い集められて、非上場化されて、経営陣だけが旨い汁を吸う・・・

そうしたやり口が日本市場では当たり前のように行われてきました。(これは親子上場問題にも通じます。)

そこで、少数株主保護のためにルール策定をしよう、という話になっています。

 

 

TOBもMBOも『レブロン基準』導入でいろいろ解決!

ここで、『レブロン基準』の導入が求められます。

『レブロン基準』とは、簡単に言ってしまうと、

「経営陣側が買収側になるようなTOBやMBOを行う場合、より高額のオファーをした買収者があらわれたら、そちらに売ること」

というものです。

これは、レブロンというアメリカの化粧品メーカーで1980年代に行われたTOB合戦の結果、判例として導き出されたものです。

 

 

『レブロン基準』とは?

ここで『レブロン基準』の成立過程について書いていきます。

アメリカにレブロンという化粧品メーカーがあります。

1980年代半ば、この会社に対して投資家が敵対的TOBを仕掛けました。

TOBを仕掛けられたレブロンの経営陣は、これを拒否しました。

代わりに、自分達に都合のいい投資家グループに救済を求めます。

いわゆるホワイトナイトという奴です。

(ライブドアとフジテレビとのTOBのときによく聞きましたね。)

レブロン経営陣は、この友好的な投資家グループに対し

「敵対的な投資家グループが買い占めに動いたら、レブロンの事業のうち美味しい部分だけを切り離して友好的な投資家グループに売ってあげる」

という契約を結びます。

これに対して、敵対的投資家が

「それは信義則に反する」「契約無効だ!」

と訴えたのがレブロン裁判のあらましです。

 

結果はレブロン経営陣の負け。

経営陣が資産売却をするときは市場原理に従い、一番有利な条件を提示した者に売らなければならないという

「レブロン基準」

が示されたのです。

 

 

 

 

日本のTOB、MBO案件にも『レブロン基準』の導入が求められる!

つまりこの『レブロン基準』は、経営陣による安易なMBOを阻止する役割を果たします。

経営陣がろくにIRなどを行わず、わざと業績悪化するようにして企業価値を低くキープしておいて、低い株価になったところでMBOをしよう・・・という悪だくみに対して歯止めになります。

MBOをしようと経営陣が思っても、もしその金額よりも高い金額をオファーする投資家があらわれたなら、その会社の所有権だけでなく、経営権も他の投資家に移ることになります。

経営陣としてはより慎重に、MBOするかしないかを考えて行動するようになることでしょう。

 

 

 

MBOだけでなく、親子上場解消のためのTOBでも『レブロン基準』が必要だ

また、親子上場の問題などでも同様のことがいえます。

吉本興業のファンダンゴ事件や、富士通のエフサス事件などでもいえることですが、

親会社が子会社を上場させて、株価が下がったところで買い占めて非上場化・・・

なんてやり方が罷り通っているのが日本市場です。

こうした手口を阻止するためにも、『レブロン基準』の拡大解釈として、既に資本関係がある親会社による買収の場合にも適用するようにすることが求められます。

なんせ、親会社であれば一般の投資家よりも遥かに多くの経営情報を握っているのが普通ですから。

そうした投資家によるTOBと、一般のTOBを分けて考えるのは当然だと思われます。

 

 

 

経済産業省はMBO規制に『レブロン基準』の導入まで含めて考えているか?

さて、ここまで書いてきましたが、経済産業省は果たして今回のMBO規制に『レブロン基準』まで含めているでしょうか?

残念ながら、そうした話は一切聞こえてきていません。

とりあえず、今のところはまだ論議が始まったばかりのようですから、方向性なども含めこれからということになろうかと思われます。

親会社によるTOB規制などは産業界との兼ね合いもあって経産省としては導入に反対しそうですが、ここはより一歩踏み込んだ対応をとってもらいたいと思います。

以上です。