建機需要の読み取り方~タダノ社資料にみる公共事業のインパクト

建機需要の読み取り方~タダノ社資料にみる公共事業のインパクト

 

タダノ社資料からみる日本の90年代公共事業の功罪

さきほど、クレーン車大手タダノの2018年Q4業績に対するレビューを書きました。

【6395】タダノの業績、決算と株価~クレーン車業界の大手

 

このなかで、同社の過去の業績と共に、非常に興味深い資料がありました。

今回はこの件についてみていきたいと思います。

 

 

タダノの業績推移

とりあえず、まずはタダノの業績推移についてみていきましょう。

以下のようになっています。

非常に浮沈の激しい業容なことがわかります。

しかし同時に、景気にシクリカルに左右されているかというとそうでもない。

たしかにサブプライムローンバブル崩壊、リーマンショックで大きく海外需要・国内需要ともに落ち込みましたし、その後の回復も大きい・・・けれど、それ以前・・・

90年代~00年代前半に関してはむしろ、景気後退期でもあまり減っていません。

それはなぜでしょうか。

その答えは、公共事業の推移にあります。

 

 

 

公共工事の大量発注に助けられたタダノ

以下は日本の建設投資、民間投資と政府投資の推移になります。

 

これをみてわかるとおり、90年代をつうじて民間投資は減少傾向にあります。

しかし一方で、政府投資は逆に増えていった。

そして、総建設投資は90年代を通じてさほど減っていないのです。

総建設投資の減少はむしろ96年あたりから、なだらかに2010年頃にかけて減っていきます。

そして、2011年の震災後の復興事業が2013年から始まりますが、実のところ、それ以前に国内の建設投資は底打ちしていたのです。

 

 

建設用クレーンの総需要もまた、これに沿った動きとなっています。

 

いやはや、90年代のクレーン車の需要はすさまじいですね。

この背景には、土木事業の方がクレーン車の需要が大きいという点があろうかと思われます。

一般的な建設物よりも、橋梁やダムなどの方が大型の重機を必要とするのは当然です。

そしてこれと同様のことが、いまは中国で起きています。

 

 

 

中国における公共事業がクレーン車業界に与えたインパクトをタダノ資料から読み解く

以下の資料をみてください。

 

このグラフ全体ではなく、むしろ、下の文字のところに注目です。

中国国産の中国市場向けは上記に含まず。中国市場における中国国産の総需要推移は次の通り。
2011年約3万5千台、2012年約2万2千台、2013年約1万7千台、2014年約1万4千台、2015年約9千台、2016年約9千台、2017年約2万台、 2018年約3万2千台

 

 

どうでしょう?

リーマンショック後の世界経済回復の一因となったのは、中国の4兆元にも及ぶ公共インフラ投資でした。

これによって、2011年には3万5千台ものクレーン車が売れた。

しかし、それが息切れしたら、2015、2016年には一気に9千台まで中国のクレーン車需要が落ちたのです。

そしてまた、2015年のチャイナショック後のインフラ開発で、2018年に3万2千台まで販売が回復した・・・

この波の大きさはすさまじいものがあります。

つまるところ、クレーン車の需要は民間設備投資需要よりも政府の発注する土木需要に大きく左右されるということがいえるのだと思います。

とりあえず、建機メーカーへの投資にあたっては、建設投資の推移だけでなく、どういったタイプの建設投資が盛んなのかなのまで考慮に入れた上で、行うべきと思われます。

以上です。