米中貿易交渉決裂で今後起こること・起こりそうなこと
米中貿易交渉、やっぱり決裂しました
市場の一部には
「今回もどうせトランプ大統領お得意のディール目的の恫喝だろ?」
といった楽観論が一部にありましたが、それらはどう考えても希望的観測と言えるような類のものでした。
明らかにこれまでの雰囲気とは空気が異なっており、どう考えても決裂の可能性の方が高かったはずです。
あまったるい予想をしていた人たちは猛省した方がいいです。
また、今回の米中貿易交渉決裂は、報道をもとにするかぎり、トランプ大統領のせいではありません。
完全に中国側・・・習近平国家主席のせいだと思います。
なんでもかんでもトランプ大統領のせいにしていた人たちも猛省した方がいいです。
トランプ大統領は、ディールしたがっていたと思います。
つぎの大統領選挙で再選されるために。
トランプ大統領が米中貿易協議をディールしたがった理由は大統領選に当選するためだったが・・・
トランプ大統領は明らかに中国側とディールしたがっていたはずです。
昨年12月の時点で交渉し始めたとき、中国側に要求するリストの中に産業補助金関連の文言が入っていないことに多くの人が違和感を持ったようですが、それはひとえに、トランプ大統領がディールしたがっていたからだと思います。
トランプ大統領は、中国からいい条件を引き出してディールして、2期目の大統領を全うしたかったんだと思います。
ここで重要なのは、トランプ大統領にとって大事なことは、
ディールすること自体なのではなく
2期目の大統領になれること・・・です。
つまり、今回ディールすることができないことが見えてきましたから、トランプ大統領としては、他の方法で2期目の大統領になる方法をみつけなければなりません。
この点で、非常に危険なことになる可能性があることには注意が必要です。
トランプ大統領は関税引き上げによる景気悪化を中国のせいにする可能性
関税を引き上げれば、間違いなくアメリカ国民がそれを負担することになります。
さんざん言われていることですが、関税を負担するのは中国ではありません。
米国民や米国で活動する事業者です。
間違いなく経済に悪影響が及びます。
もちろん、このままではトランプ大統領に批判の矛先が向かいかねません。
ですのでトランプ大統領は、そうなる前に、有権者に対して中国がズルい悪辣な連中であることをアピールしなければなりません。
これまでトランプ大統領はイデオロギー的な中国批判はしてきませんでした。
それらはナヴァロとかそこらへんの仕事でしたが、
⇒米中貿易戦争は持続可能か?~ピーター・ナヴァロ著「米中もし戦わば」
今回の交渉決裂を受けて、トランプ大統領は態度を変化させる可能性があります。
こうしたことを踏まえ、今後起こりうることを書いていきます。
米中貿易協議決裂でおきる可能性があること
1.米第7艦隊による航行の自由作戦、および台湾海峡通過作戦の拡大
⇒米中貿易交渉の邪魔をしたのは誰なのか?~「航行の自由作戦」と関係?
2.トランプ大統領がイデオロギー的側面から中国を叩きはじめ、景気悪化の原因は中国だと喧伝する
3.中国との交渉を切り上げたことで、対日、対EUの交渉本格化
4.関税引き上げによる米国内の物価上昇圧力上昇
5.物価上昇を起点にした債券利回り上昇
6.金利高による赤字企業のバリュエーション調整やスタートアップバブル崩壊
7.中国による人民元安容認・・・輸出主導による景気回復を目指す
8.中国による環境規制の緩和・・・景気刺激のため
9.人民元安による中国からの輸出の増加・・・いわゆる近隣窮乏策、デフレの輸出
10.人民元安による海外旅行客の伸び鈍化
11.関税措置で米国政府の財政収入増
12.米国は、関税収入をインフラ投資財源に利用
13.中国側による対抗関税措置
14.米中ともに更なる関税措置の拡大
15.中国への半導体や電子デバイス、半導体製造装置の輸出制限
とりあえず、対中国での強硬な姿勢が増えることは間違いないように思います。
そのことが経済に何の影響も与えないとみる方がおかしい。
そう思います。
以上です。