中国、今後10年間で海外30か所に「華竜1号型」原発建設か~一帯一路に基づく方針~
中国が「華竜1号型」原発輸出本格化か~中国人民政治協商会議
中国が原発輸出を本格化する方針のようです。
これは今秋開かれた中国人民政治協商会議のなかで出された提言によるもの。
この提言は中国核工業集団公司(CNNC)の董事長をつとめたこともある王収軍常務委員が行ったもので、
この提言によると、一帯一路の原発プロジェクトで2030年までに中国企業が一兆元の利益をあげられる、とのことです。
一帯一路に参加する41か国で原発プロジェクトが進んでおり、ここに積極的に中国も参画すべき、ということのようです。
China could build 30 ‘Belt and Road’ nuclear reactors by 2030 – official
この中心になるのが、「華竜1号型」原子炉だと思われます。
中国国産原発「華竜1号」
中国は独自技術で第三世代にあたる原発を開発しました。
その名も「華竜1号」
現在広西チワン族自治区で建設中で、2021年には稼働を開始する予定です。
また、海外への売り込みもすでに行われており、英国でも包括的設計審査GDAを通過し、建設されることが決定されています。
なお、英国版華竜一号(UK-HPR1000)はフランス電力EDFと中国広核集団有限公司CGNの提携で進められており、エセックス州ブラッドウェルで建設中です。
またその後も「華竜1号型」は、パキスタン、ケニア、ポーランド、チェコ、アルゼンチン、ブラジルなどのでも建設を予定しています。
中国は原発建設能力が余っている・・・「華竜1号型」の輸出を急ぐかまえ
「華竜1号型」の輸出を増やそうという提言が行われる背景には、中国の原発政策が揺らいでいることが背景にあります。
かつて中国は非常に熱心に原発政策を推し進めてきました。
大気汚染対策としても原発は有効ととらえ、30年に1億5000万キロワットにする計画をぶちあげました。(現在は4500万キロワット程度)
フランスのアレバや米ウエスチングハウスなどから技術導入し、どんどん原発を作って技術吸収しようとしていました。
このあたりはかつて、鉄道などでうまくいっていましたから、中国としても同じ成功体験を繰り返そうとしたのだと思います。
ところが2011年の日本のフクイチ事故以来、方針ががらりと転換します。
表向き、目標の数字は取り下げていませんが、それまでに着工していた原発の竣工を遅らせて慎重にプロジェクトを進めるとともに、
新規プロジェクトをほとんど行わないようになってしまいました。
現在、中国では年間に10基以上の原発を建設する能力があるといわれていますが、実際には2017年に3基、2018年に7基竣工した程度にとどまっています。
また、先にも書いた通り、国内の新規プロジェクトはなかなか難しい状況です。
10基以上作れる能力があるのに、国内ではいろいろと規制があって作れない・・・ならば外に出ていこう、というわけです。
「華竜1号」に米政府が邪魔をするのは時間の問題か
ここで問題になるのは、米政府の方針です。
近代的な原発は、核兵器への転用が難しいとはいえ、核物質を扱うことには変わりありません。
アメリカとしてはなるべくそういったものが世界に拡散するのは抑え込みたいと思っています。
また、中国企業が独自に技術を積み上げて、アメリカの得意なビジネス領域にまで入り込んでくることには抵抗を隠しません。
米政府はいずれ、ファーウェイへ行ったのと同じことを中国広核集団有限公司CGNなどに行う可能性があり、その点ではいろいろとリスクのある状況となっています。
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