【8630】損保ジャパンが4000人規模の大規模人員削減・リストラへ~余った人員は介護事業に配置転換
損保ジャパン、全体の15%にあたる人員を人員削減・リストラへ
夏のボーナス間近のこの時期に、人々の浮かれ気分に冷や水を浴びせるようなニュースが飛び込んできました。
損保業界大手の損保ジャパンが、2020年度末までに17年比で4000人の従業員を削減すると各紙面にて報道されています。
なお、この人員数は全体の従業員の15%にあたる人員数とのこと。
これにより、損保ジャパンの2020年度末の従業員数は2万2000人~2万3000人規模になるということです。
損保ジャパン、リストラ後に余った労働者は介護事業(SOMPOケア)などへ異動へ
なお、今回の損保ジャパンのリストラですが、余った人員は介護事業に転籍させていくそうです。
損保ジャパンは2015年、介護事業者メッセージを買収しました。
さらに、居酒屋大手のワタミから「ワタミの介護」も買収しました。
ワタミは当時、その労働環境の劣悪さからブラック企業としてレッテル貼りされる動きが広がっており、イメージ悪化で介護事業が立ち行かなくなる事態を懸念。
再建費用としての資金調達の意味合いもあり、損保ジャパンに事業売却することになりました。
その介護事業をまとめたのが「SOMPOケア」です。
この事業に、あまった労働者を異動させていくそうです・・・
なお、この「あまった人員」というのが、今回のリストラ対象になった人を指しているのか、それともリストラ後にも「あまった」人員を指しているのか、報道内容などからはみえません。
とりあえず、損保ジャパンがかなり本気のリストラ策を打ってきた、というのは確かなようです。
損保ジャパンのリストラ・人員削減は地味に影響が大きい・・・
今回の損保ジャパンのリストラ、数字的にみればさほど大きくみえませんが、実際のところはかなり影響が大きいように思われます。
損保ジャパンは他の国際的な企業、たとえば電機メーカーなどと異なり、人員削減数のほぼすべてが国内労働者で占められています。
今年に入り東芝7000人、パイオニア3000人、日産4800人、富士通2850人などというリストラが発表されましたが、そのうちの国内労働者は数割といったところでしょう。
また、MUFG10000人、みずほ19000人などのリストラも6月初めに発表されていますが、こちらは期限がやや長く、基本的に採用人員数の削減で減らしていく方針。
損保ジャパンのように20年度末まで、という短い事業で行うリストラではありませんし、介護事業に異動させたりといった荒療治でもありません。
その意味で、損保ジャパンはなかなか思い切ったことをしてきた、、といった感じにみえます。
損保ジャパンの人員削減・リストラは攻めのリストラで好感されるべき
この大規模リストラの報道を受け、損保ジャパンの株価は現在前日比0.07%高となっています。
正直、まったくリストラ策を株式市場は好感していない・・・ように見えます。
しかし、個人的には今回の発表は非常にポジティブに感じます。
損保ジャパンはかねてより利益率の低さが指摘されており、この背景には、これまでの統合で大量の人員を抱え込んできたことによる労賃の高さがありました。
社内政治の駆け引きで、なかなか人員削減に踏み切れなかったというのもあるでしょう。
ここにメスを入れていくという経営陣の判断は、決して悪い話ではありません。
損保ジャパンはしっかりと利益を出している企業です。
そうした企業がより効率的な経営をめざして人員削減をする・・・攻めのリストラを始めたということは、素直に評価していいでしょう。
損保ジャパンのリストラ・人員削減の背景に株主構成の変化
今回の損保ジャパンのリストラ・人員削減の背景には、同社の株主構成の変化があると思われます。
損保ジャパンはノルウェー政府系ファンドが3.8%の株式を握っているなど、外国人保有比率が44.3%にも上る企業です。
これまで社内ばかりをみてきた人事案件も、株主からの突き上げでよりドラスチックな改革がされるようになってきています。
それは、従業員にとっては悲劇かもしれませんが、株主にとってはいい話です。
これは損保ジャパンに限らず、日本全体についてもいえることです。
企業統治が改善している証である、と個人的には見ています。
今までの日本企業は、いくら稼いでも貸借対照表の借方の中身が歪に膨らむだけで、株主価値の本当の意味での向上には繋がってきませんでした。
しかしそれが変わっていく可能性があります。
個人的に、そこは一番重視していくべきポイントだと思います。
以上。