出光美術館が伊藤若冲などで知られるプライスコレクションの一部を購入~山火事増加と高齢を懸念してジョー・プライス氏が手放す?
出光美術館が伊藤若冲の作品などプライスコレクションの一部を購入
アメリカの富豪ジョー・プライス氏が1950年代から長年収集してきた掛軸や屏風絵、写生画などのコレクションの一部が、日本の出光美術館により競り落とされたことが判明しました。
今回、出光美術館が購入したのは伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」の他、
円山応挙「虎図」、酒井抱一「三十六歌仙図屏風」、勝川春章「二美人図」などの作品190点。
出光美術館はこれら購入した作品のうち80点を来年秋に特別展示するとのことです。
ジョー・プライス氏が収集したプライスコレクション
ここでプライスコレクションについて軽く解説しておきます。
プライスコレクションは、アメリカの富豪ジョー・プライス氏が1950年代から集め始めた日本画のコレクションです。
とくに伊藤若冲の作品の収集規模の充実度で注目を浴びているコレクションであり、宮内庁を除けば、個人所有のコレクションで最大規模と言えると思います。
ぶっちゃけた話、伊藤若冲は戦前戦後しばらくメジャーではありませんでした。
日本美術好きならだれでも知っている名前でしたが、メジャーな美術館での展示もありませんし(宮内庁所有がほとんど)、一般の人が目にすることの少ない画家でした。
その伊藤若冲の名が日本で今ほど広まったのは、このジョー・プライス氏のおかげだったと思います。
伊藤若冲の人気に火をつけたプライスコレクション
先ほども書いたように、以前は伊藤若冲はさほど人気のある絵描きではありませんでした。
2000年、京都国立博物館で若冲の企画展が開かれます。
ここにプライスコレクションの作品が多く展示されたことから名前が広まり始め、美術関連の番組(日曜美術館など)でも取り上げられるように。
その後、プライスコレクションは2000年代にもう一度、日本で公開されます。
しかし、その当時は伊藤若冲に注目が集まるというよりも、あくまでも江戸絵画の一部という扱いだったように思います。
(同時期に三の丸尚蔵館でも動植綵絵が展示されていましたが、そちらはあまり混雑していませんでした)
10年程前、京都の承天閣美術館で動植綵絵のすべてが一堂に集めて公開されたことがありました。
この時は自分も行きましたが(わざわざ新幹線で・・・)、この時は結構凄かった・・・そんな大きくない美術館なこともあり、明らかにキャパシティオーバー、人だらけ。
各展示室に入るまで数十分待ちで、しかも一方通行。
まぁでも、この頃はまだマシでした。
数年前、東京都美術館で公開された時はもう・・・人、人、人でごった返しており、国立博物館の特別企画展示より酷い状況。
美術なんてぜんぜん興味なくて、ただ話のネタにしておこうという感じの人達がわんさか集まっており、とても絵を鑑賞する雰囲気じゃない状況に。
とりあえず、伊藤若冲は昔から有名な画家でしたが、この10年そこらでどんどん人気の上がってきた背景には、たぶん、下に書くプライスコレクションの東北巡業があったものと思われます。
プライスコレクションと伊藤若冲、東日本大震災後の企画展示でメディア露出が急激に増加
2011年、東日本大震災が発生します。
ジョー・プライス氏はその惨状を目の当たりにし、被災地の人々を元気づけるためにと、自分のプライスコレクションを無償で被災地の美術館に貸し出し、企画展示を行いました。
当時、日本は放射能が降り注ぐ地という評判がたっており、世界中の各国の美術館・博物館は放射能汚染を恐れて展示物の貸し出しを渋る動きがありました。
ましてや、東北の県などに大切なコレクションを貸し出す美術館なんてまずありません。
それを、ジョー・プライス氏は無償でおこなってくれました。
凄いことです。
日頃、あまり美術に関心のないメディアも含め、一斉にプライスコレクションについて報じました。
この頃から、伊藤若冲の名前もさらにメジャーなものとなっていきます。
いいものが良いと評価されるのは良いことですが、しかしまぁ・・・みんなが買いまくって暴騰した株価みたいなもので、どうにも近寄りがたい存在になってしまいました。
プライスコレクションの鳥獣花木図屏風に贋作疑惑
ちなみに、出光美術館が今回購入を決断した鳥獣花木図屏風には贋作、もしくは模倣ではないかという疑惑が浮上しています。
これは東京大学教授の佐藤康宏氏が行っているもの。
動物の絵の崩れ方などが不自然という主張のようです。
これに対して同じく東京大学の名誉教授、辻惟雄氏は反論。
美術論争となっています。
今回、出光美術館は本物と判断して購入を決断したのでしょうが、またこういった真贋論争が浮上することになるのではないかと個人的には楽しみにしておりますw
プライスコレクションの日本帰国の背景に山火事増加?
今回、プライスコレクションの一部が日本に帰国するにあたって、ジョー・プライス氏の高齢問題が挙げられています。
同氏はすでに90歳であり、これ以上コレクションを管理しきれないということのようです。
と同時に、近年カリフォルニア州で増えている山火事で焼失する事態も懸念したと言われています。
昨年はカリフォルニア州の電力会社PG&Eの漏電により山火事が発生
大規模な人的被害をもたらしました。
カリフォルニア州のガス・電力会社PG&Eが破産法申請か?~山火事2年連続で
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とはいえ、寄付ではなく売却となった背景には、ジョー・プライス氏の投資先(?)のPRICE GREGORY社の動向もあるかもしれません。
同社はパイプライン敷設や石油掘削サービスなどを行う企業ですが、ここもとパイプラインの拡張は地方政府や環境保護団体の活動により滞っています。
同社は非公開企業なので収益状況が見えてきませんが、以前ほど羽振りがよくなくなっているのではないか、という見立てをしていますが・・・さてどうでしょうか。