次期ECB総裁にラガルドIMF専務理事が決定~サルコジ政権時代には財政均衡化に反対

次期ECB総裁にラガルドIMF専務理事が決定~サルコジ政権時代には財政均衡化に反対

 

次期ECB総裁にクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事が決定

ECB総裁と欧州委員会委員長の人事で長らく対立してきたドイツとフランスでしたが、ようやく決着したとのことです。

報道によると、次期欧州委員会委員長にはドイツのフォンデアライエン国防相が就任。

次期ECB総裁にはフランスのクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事が就任するとのことです。

 

クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事はハト派?

クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事のECB総裁就任決定を受け、市場は「ハト派就任」と好感しているようです。

しかし、具体的にどのあたりをみてハト派と解釈しているのでしょうか?

そのあたりについて、これまでのクリスティーヌ・ラガルド氏の経歴をもとに見ていきたいと思います。

まずはIMFでの仕事からみていきましょう。

 

 

クリスティーヌ・ラガルドの前任者、ストロスカーンIMF専務理事

IMF専務理事としてのラガルド氏の就任は、前任のストロスカーン氏の婦女暴行疑惑を受けてのものでした。

ある意味、棚からボタ餅的な就任でした。

 

IMFは基本的に、欧米の超富裕な資本家による手先機関です。

債務過多で傾いた国家に対して、公営インフラの売却や財政規律重視の姿勢、外資導入を迫りまくります。

それに応じるならIMFが融資してやるよ、という態度で迫ります。

過去にIMFの融資を受け入れた国はそんな感じで、外資に金融からインフラまでガッチリ握られてしまっています。

一番いい例が韓国ですが。

 

当時、ギリシャ問題が深刻化していましたが、ストロスカーンはこうしたIMF流のやり方にやや否定的な態度をとっていました。

また、特別引出権SDRの通貨バスケットに人民元を加え、米ドルに代わる基軸通貨の創設に前向きな姿勢を示します。

 

その矢先に婦女暴行疑惑が浮上・・・見事に失脚します。

その後、婦女暴行疑惑は冤罪だったことが判明しましたが、この操作の中でストロスカーンの売春婦を集めたパーティー出席などの奔放な姿が表面化。

イメージダウン著しく、IMFどころか政治家としても学者としても地位を失ってしまいました。

 

個人的に、これはもう何か罠にハメられたんじゃないか?と感じていました。

当時、ストロスカーンはフランスの次期大統領候補としても挙がっていましたから、それを引きずり下ろしたい側の策略だったかもしれませんし、

また、IMF専務理事としての仕事ぶりが胃に沿わないことを理由に、某国が引きずりおろした可能性もありますが・・・

真相は闇の中です。

 

 

IMF専務理事を引き継いだクリスティーヌ・ラガルドは見事にアメリカの意向に沿った仕事をした

上記のような経緯でIMF専務理事に棚ぼたで就任したクリスティーヌ・ラガルドでしたが、ストロスカーンと同様に、ギリシャ問題に関してはかなりギリシャに融和的な態度をとりました。

しかし同時に、二つの部分で異なりました。

それは、欧州に財政負担を強く求めたこと。

もうひとつは、米ドルに代わる基軸通貨の議論を開始しなかったこと。

 

まるでアメリカの意向を受けたかのようにIMFは豹変しました。

こうした変化を受けて、市場の一部では

「ストロスカーンはアメリカに抹殺された。ラガルドはアメリカの手先だ」

みたいなことを言う人もいました。

しかし個人的には、そこまでのものだったかはわかりません。

ラガルド自身が、ストロスカーンの失脚をアメリカによるものと感じて、個人的に忖度した可能性もある、と思っています。

が、とりあえず、ここらへんは陰謀論臭くなるのでやめておきましょう。

 

ラガルドは、欧州諸国にギリシャ債務の再編に関して譲歩を迫り、みごとに纏め上げます。

ギリシャはその後、債務再編のために公営インフラなどを売却したり、外資導入を急いだりしました。

この時の手腕が、ラガルドは評価されています。

また、この時のやりかたが市場との対話を重視するハト派として見られている部分もあるかもしれません。

 

 

 

フランス財務相時代のクリスティーヌ・ラガルド

なお、クリスティーヌ・ラガルドはもともとサルコジ政権時代のフランス財務相でした。

(正確にいうと、サルコジは大統領なので、フランソワ・フィヨン政権ということになります。)

なお、前述のストロスカーンを推したのもサルコジ政権でしたからIMF専務理事は二代続けてサルコジの息のかかった人物ということになります。

 

この政権のなかで、ラガルドおよびサルコジは、減税法案を推し進めます。

所得税率の引き下げなどを行い、経済成長を優先する姿勢を示しました。

いまの、イタリアの主張に近いです。

 

当時から欧州連合は加盟各国に対して財政均衡化を求めてきましたが、サルコジとラガルドはこれに反対。

財政均衡化を推し進めれば逆に経済が悪化して財政赤字削減が滞るとして先送りを主張しました。

まるで、いまのイタリアみたいですよね。

 

このあたりの主張は、もろにハト派だったと思います。

 

 

クリスティーヌ・ラガルドのECB総裁就任で変化はあるか?

現在のドラギECB総裁は、市場からの信認がかなり高い人物です。

ドラギ・マジックなどと言われ、そのタイミングのとりかたの絶妙さが評価されてきた人物です。

ラガルド氏は、そうした前任者のあとを引き継ぐことが期待されています。

これまでのラガルド氏の経緯からして、財政は拡張的、金融は緩和的なスタンスになることが市場では期待されています。

今後の動向がどうなるかはわかりませんが、とりあえず、過去のラガルド氏の経緯からして引き締めを強めることはあまり想像できません。

市場が安心しているのも、当然かなと思います。

以上。