イランの大型タンカー「グレース1(GRACE 1)」~ジブラルタル海峡にて英海兵隊に拿捕される~

イランの大型タンカー「グレース1(GRACE 1)」~ジブラルタル海峡にて英海兵隊に拿捕される~

 

イラン国営石油傘下NITC所有のVLCC「グレース1(GRACE 1)」

イランの国有石油会社傘下で、タンカー運航部門を担っているNational Iranian Tanker Company(NITC)

このNITCが所有するパナマ船籍の大型タンカー「グレース1(GRACE 1)」が英海兵隊によって拿捕されたとのことです。

ご存知の通り、イランは米国から経済制裁を受けていますが、

今回の拿捕にも米国の意向が反映されているとの報道もあります。

いろいろとキナ臭くなってきています。




 

イラン産原油を満載した「グレース1(GRACE 1)」がジブラルタル海峡で拿捕される

「グレース1(GRACE 1)」が拿捕されたのは地中海の入り口、ジブラルタル海峡

スペインとモロッコの間の狭い海峡です。

 

「グレース1(GRACE 1)」はイランから原油を満載して、喜望峰経由でぐるりとアフリカ大陸を回り、

ジブラルタル海峡から地中海に入り、シリアのバニヤス製油所に向かおうとしていたとのことです。

(なお、バニヤス製油所では先日、海底パイプラインの爆破破壊工作が何者かによって行われています。どうもキナ臭い・・・)

【シリア】バニヤス製油所の海中パイプラインが何者かによって爆破される

 

イランはご存知の通り、シリアと同盟関係にあります。

シリアは現在、アサド政権下でイラン革命防衛隊の支援の下、国内の反対勢力を粛正しにかかっています。

そうした動きを牽制するかのような今回のパイプライン破壊とタンカー拿捕という行為に、

地域の緊張感はかなり高まってきています。

 

 

 

イラン国営石油会社傘下NITC所有スーパータンカー「グレース1(GRACE 1)」

ここで「グレース1(GRACE 1)」についてみていきましょう。

諸元は以下のようになっています。

 

IMO 9116412
MMSI 355271000
Call Sign 3EYE2
船籍 Panama [PA]
AIS Vessel Type Tanker
Gross Tonnage 156880
Deadweight(DWT) 300579 t
Length Overall x Breadth Extreme 330m × 58.04m
建造 1997

 

建造1997年ですから、船齢22年

なかなかに年季が入っています。

DWTは300579tですからVLCC、超大きいですので当然スエズ運河は通れません。

 

 

 

欧州に制裁への反対を依頼する中での「グレース1(GRACE 1)」拿捕はイランにとって痛手

今回の「グレース1(GRACE 1)」の拿捕は、イランにとって非常に痛いと思います。

タンカーが拿捕されたこともそうですが、何よりも痛いのは、外交的な面での敗北を意味しているからです。

 

アメリカは昨年、対イランの核合意から一方的に離脱しました。

このアメリカの横暴な身勝手さが、今回の一件に繋がっています。

 

アメリカの核合意からの離脱を受け、イランはウランの濃縮プロセスを開始しました。

これにより、欧州に対して米主導の対イラン制裁に参加しないように、これまでの経済的関係構築を続けるように促しました。

 

イギリスを含め欧州は、米国の方針とやや離れて、イランとの関係継続も続ける姿勢をとっていました。

今回の英国の行動は、こうした流れをぶった切ることになりました。

これはイランにとっては痛い・・・

 

とりあえず、今回の「グレース1(GRACE 1)」の拿捕は、イランを挑発する意味ももっています。

イラン革命防衛隊の末端などが何かアクションを起こす可能性もありうる状態となっており、非常にきな臭くなってきているように思います。

以上。