中国は環境保護先進国へ~排出権取引導入で再エネ銘柄に追い風か?

中国は、証券市場を通じて環境政策を一段と加速させるそうです。

China stock regulator vows more environment focus, green finance
UPDATE 1-中国証監会、環境重視の政策推進へ
習主席、環境汚染対策で檄=35年までに「美しい中国」

 

18、19日に北京で開かれた全国生態環境保護大会で習近平国家主席が「2035年までに自然環境を根本的に改善し、美しい中国を実現させる」よう檄を飛ばしたことを受け、

中国の証券監督管理委員会(The China Securities Regulatory Commission/CSRC)は、今後は自然環境を重視した政策をとっていく方針を発表しました。

要約すると以下です

 

  • 上場企業に対し、環境面での責任を果たし、環境に関する情報開示することを義務化&強化
  • 新規株式公開や企業合併の審査において、環境問題をより重要視
  • グリーンファイナンス(環境金融)を推進。環境債(グリーンボンド)を積極的に後押し。
  • 温暖化ガス排出権取引・排出権先物商品の開発
  • 生態環境省が地域横断的な排出量取引制度を導入検討

 

環境問題を最重要政策課題のひとつとして重視する流れは、昨年12月の中央経済工作会議で決定的になったと感じています。

その後、全人代でも強調され、今回、習近平国家主席がじきじきに檄をとばすに至っています。


この発表を受け、22日の相場は環境関連銘柄がよく上昇しました。

それら銘柄のうち、今回は再生可能エネルギー関連銘柄をいくつか紹介しようと思います。

 

華能新能源(HuaNeng Renewables Corporation Limited / 0958.HK)

風力発電を中心に、再生可能エネルギー事業を営む国有電力グループ企業です。直近の決算では系統連系の拡大から廃棄電力の比率が下がり、大幅な増益となっています。なお、石炭火力発電を主力とする華能国際電力(ファネンパワー)とは兄弟会社の関係ですが、業績をみるかぎり明らかに大きな差が出てきています。石炭火力発電は環境対策コストや国内石炭価格上昇で利益率が急低下しており、非常に厳しい環境におかれています。

 

大唐新能源(China Datang Corp Renewable Power Co Ltd / 1798.HK)

こちらも中国国有電力の中国大唐集団系の企業です。中国国内における電力網を一手に引き受ける中国電網が系統連系の拡大を目的に大量のケーブルを引きまくってくれたおかげで、棄電が減り、運用時間が伸びたことから、2015年を底に業績は急拡大を続けています。こちらも兄弟会社に石炭火力発電を行う企業がありますが、再エネ事業に傾倒している同社のほうが業績は良いです。

 

新疆金風科技(Xinjiang Goldwind Science & Technology Co., Ltd. / 2208.HK)

こちらは世界最大規模の風力発電機メーカーです。年度によってトップが入れ替わる業界ですから正確なことはいえませんが、Vestas Wind Systems A/S 、Siemens Gamesaなどと並び、世界の一角を占める企業です。近年では顧客企業の設備投資に依存する事業構造から脱却し、自前で風力発電事業も手掛けるようになってきています。また、そうして開発したプロジェクトをESG経営を意識した企業や投資家に売却することで、開発資金を得るビジネスも展開し始めています。近年は洋上風力発電にも乗り出すため、技術開発に力を入れています。

 

新天緑色能源(China Suntien Green Energy / 0956.HK)

チャイナ・サンティエン・グリーン・エナジーは河北省政府系の再生可能エネルギー&都市ガス、ガスパイプライン運営企業です。省政府系ですが、投資上位にはシンガポール政府投資公社(GIC Private Limited)、全国社会保障基金理事会(National Council for Social Security Fund)、ノルウェー政府系投資ファンド(Norges Bank Investment Management)等が並んでおり、先日はアラスカ州年金基金(APFC/Alaska Permanent Fund Corporation)が購入したと公表するなど、世界の年金運用資金が浮動株(49.5%)の多くを保有している企業になっています。近年の業績は、系統連系の拡大から風力・太陽光発電が好調に推移。また、天然ガスの供給拡大から都市ガス事業が好調に推移しており、前年比70%近い業績の急拡大となっています。なお、同社が位置している河北省は、習近平国家主席が推し進める経済特区・雄安新区を抱えています。同社のパイプラインもこの雄安新区ちかくを通っており、今後の動向が気になるところです。


なお、この日の相場では他にも

ENN Energy(2688.HK)

崑崙能源(0135.HK)

華潤燃気(1193.HK)

などの天然ガス関連銘柄

 

China Everbright(0257.HK)

Dynagreeen Environmental(1330.HK)

Yunnan Water(6839.HK)

Beijing Enterprises(0371.HK)

Kangda International Environ(6136.HK)

CT Environmental(1363.HK)

などの下水処理、ごみ処理、バイオマス発電を手掛ける企業なども動きました。

 

 

中国株は全体的に個人投資家比率が高いため、これら一気に上昇した銘柄には一旦は売りが入りやすくなります。値動きが止まった後、数日から数週間は軟調な展開となりやすいです。(概ね一割から二割半程度の下落を想定しています)

ただ、環境や再生エネルギー関連は息の長い話です。とくに排出権取引などが本格導入されれば、再生可能エネルギー企業には強い追い風が吹くことになります。

これまでは系統連系や売電価格などの政策リスクを過度に嫌気されて放置されていましたが、今後を見通すと政策リスクではなく政策メリットのある銘柄群に変わってきています。

現状、各社のバリュエーションはまだPER一桁台であり、配当も4%以上。棄電率の低下からもう一段の利益成長は十分に期待できると考えています。おいらは、幾つかの銘柄をリストアップしておいて、押したところを買っていこうと思っています(じっさいに去年あたりからそうやって某銘柄を回してます)。

 

とりあえず、そんな感じで今回は〆ます。

そのうち都市ガス関連の銘柄などについても解説しようと思います。

ではまた。

 

なお、上記はあくまでも中卒くん個人の見通しであり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資に当たっては自己責任でお願いいたします。