非関税障壁で守られた寧徳時代新能源科技(CATL)は中国製造2025を象徴する企業だ!

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トランプ大統領はある意味ただしいと思います。

中国には非常にズルい非関税障壁が存在しています。

それを代表する企業こそが、リチウムイオンバッテリー世界最大手の

寧徳時代新能源科技( CATL / Contemporary Amperex Technology )

以前から紹介しているこの企業、前にも書いたとおりもともとはTDKの子会社ATL(Amperex Technology)でした。かつてはAppleにも電池供給したことのある企業です。

驚異の成長を遂げる寧徳時代(CATL)深セン創業板に上場へ、その源流には日本企業「TDK」の存在!?(GloTechTrends)

 

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その後2011年12月、ATLから分離独立し、外部資本や政府系資金などの補助金を利用することで、

2014年売上 8億6678万元 営業利益 6243万元

2017年売上 199億9686万元 営業利益 48億4810万元

という驚異的・・・というか、ほとんどチート並みの成長を遂げることになります。

 

http://www.catlbattery.com/index.php/notice/noticelist/0/1 参照

 

ちなみに、上記GloTechTrendsの記事によると、世界のバッテリー市場における売上高順位でCATLは堂々の一位。二位のPanasonicに対して2割程度の差をつけています。また、ウォーレン・バフェット率いるバークシャーハザウェイが出資をしているBYDは3位にランクインしています。BYDはかつて中国を代表する充電池メーカーでしたが、CATLはこのBYDに対しても売上規模で7割程度の差をつけています。※1

しかも、です。CATLはまだ上場していないのですが、目論見書を提出しているとおり、IPOをする予定でいます。

中国証券監督管理委員会(CSRC)は今年4月初め、CATLの上場を認可しています。
China regulator approves battery giant CATL’s $2 billion IPO: Xinhua

調達規模は131億人民元(約19億7000万ドル、約2200億円)、深圳の創業板への上場となる予定です。

この調達資金を使って、一気に24GWhのリチウムイオンバッテリーの増産をするということです。

 


※1解説 なお以下の記事では二位以下の順位がだいぶ異なっていますが、CATLが一位なことは変わっていません。

China’s biggest battery producer could become world’s biggest after raising $2 billion in an IPO

(LG化学が二位になっています。しかしこうやってみると、ほとんどが中国勢ですね・・・)


 

このように、今では世界の二次電池産業のトップランナーを突っ走るCATLですが、さきほども書いた通り、まだ操業7年程度の若い企業です。

若い企業で急成長していると怪しく思われる方も多いかもしれませんが、同社の電池はBMWのPHV X1をはじめ、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ルノー、日産、ホンダ、吉利(Geely Automobile)、北京汽車(BAIC)、宇通客車(Yutong Bus)、上海汽車(SAIC)、福田汽車(Foton)、金龍客車(King Long)などなど、国内外の100社程度に供給されていると言われています。また、国内外の著名な科学者を高給で雇い入れて研究開発しているとのことで、技術力にはお墨付きがついています。

 

 

ではなぜ、こんな若い会社が、いっきに世界の電池業界をリードするようなトップランナーになれたのでしょうか?

 

その答えは

ホワイトリスト(非関税障壁)と補助金、そして習近平国家主席の後ろ盾

 

だと思います。

 

まず最初のホワイトリストから見ていきましょう。

 


 

中国NEV規制と補助金制度におけるホワイトリストとは、すなわち非関税障壁である

環境汚染の著しい中国では、粒子状物質PMや二酸化硫黄などの有害物質の排出に厳しい規制がかけられています。北京、上海、広州など主要都市では既存のガソリン車ではナンバープレートの取得が難しく(もちろんディーゼル車もダメ)、かといって都市ごとのナンバープレートをつけていなければ中心市街地への乗り入れができない・・・という状況になっています。

こうした状況を免れる方法が、電気自動車EVや燃料電池車FCVを購入するという方法。

北京で新エネルギー車専用ナンバープレート発行スタート

要するに、EVなどであれば別枠でナンバープレートを発行してもらえるわけです。

これが自動車を購入する消費者側に課せられた環境規制。

 

 

一方で、自動車を販売する企業側にも環境規制が課せられており、それがNEV(New Energy Vehicle/新能源車)規制というものです。

簡単にまとめてしまうと

  • NEVとは電気自動車EVやプラグインハイブリッド車PHV、燃料電池車FCVのこと
  • NEV規制基準に適合した車には補助金支給
  • ガソリン車を売ったらNEVも一定量(2019年に全車両の10%、2025年には全車両の20%)売ること。売れなければペナルティとして多額の罰金

といったもの。

これは、米カリフォルニア州のZEV規制(Zero Emission Vehicle)に倣った制度で、中国版ZEVとしてNEV規制という名前が付けられているわけですが・・・

このNEV規制こそがクセモノなのです。

このNEV規制に適合した車かどうかは色々なチェック項目があるのですが、そのうちのひとつに、「搭載しているバッテリーが基準に適合しているかどうか」という条件があります。これが

ホワイトリスト(中国電池製品目録)と呼ばれているものです

このホワイトリストというものが、選定方法などをふくめ、極めて恣意的に運用されているのではないか・・・と諸外国の電池メーカー・政府関係者からは問題視されています。

中国自動車業界の今 (MUFJ 黒川徹)

 

一応、外資比率撤廃に向けた動きはあるようですが、2018年5月26日現在、ホワイトリスト入りした外資電池メーカーはありません。

つまりどういうことかというと、電気自動車EVのコストの半分を占めると言われているバッテリーの調達において、現状では中国国内メーカーから調達するほかないということです。

そんなわけで、ホンダも日産もCATLと組むことを相次いで決めましたし、BMWやDaimlerなども組んでいるわけです。

中国CATL、ルノー・日産に車載電池供給 :日本経済新聞(18年5月10日)

 

中国政府としては、

「ホワイトリストに入りたかったら技術移転しろよ」

ということなのでしょう。

これこそ、トランプ大統領が「中国のやり方はズルい」と言っている内容そのものなのです。トランプ大統領は無茶苦茶なことを言っているようで、実は結構まともなことを言っています。

とりあえず、これがまずCATL躍進のひとつめの理由、NEV規制。


 

また、補助金に関してですが、さきほどの記事によると、過去三年に10億人民元(170億円程度)の補助金が政府から渡されていると書かれています。この記事の書かれた3年前、2014年は営業利益が6243万元(10億円強)ですから、三年間で170億円がどれくらい大きなインパクトかお分かりになると思います。

もっというと、これは政府からの補助金で、他にも省政府や地元自治体、低利融資なども用意されています。中国では一般的に、先端産業であれば自己資本が20%強程度、あとは補助金や低利融資で賄うのがアタリマエになっています。かなりの補助が出ているとみて間違いありません。

 

これがCATL躍進のふたつめの理由、補助金制度。


もうひとつ・・・

習近平国家主席の後ろ盾・・・ってのはですね

とりあえず、外務省のサイトのこれをみてください。

これは習近平国家主席の経歴です。※1

まぁ、とりあえずよく見てください。1988年のところです。

福建省寧徳地区党委員会書記・・・・・・あれ?寧徳?

そう・・・

寧徳時代新能源科技の寧徳です

 

つまり、習近平国家主席は寧徳にゆかりのある人物なんです。

しかも、これはおいらが見つけたことではないのですが、

寧徳時代新能源科技の寧徳市は、習近平国家主席がはじめて人民解放軍(PLA)の幹部となった場所なのだそうです。

出典:東洋証券 ひと息コラム「巨龍のあくび」452回:寧徳市といえば習主席

 

これでいろいろ繋がったように思います。

習近平は電力閥、石油閥など産業系の閥をバックにした政敵を排除しまくる一方で、自分の地縁関係にある連中を周囲に集めています。そのひとつが、この寧徳時代新能源科技・・・なのでしょう。

そうでなければこんなに急激な成長を遂げられるはずがありません。

政府の補助金、地方の補助金、非関税障壁による保護、低利融資・・・すべてがデキスギています。

これがCATL躍進のみっつめの理由。習近平国家主席の後ろ盾・・・です。

(※1 ってゆーか上記の外務省サイトですけど、習近平国家主席が国家副主席だった当時までしか書かれていないのは・・・なにやってるんでしょうか?他国の指導者に対して失礼じゃないですか・・・)

 


とりあえず、CATL絡みの重要なニュース記事をリンクしておきます。

おいらの解説が足りないところまでしっかりと書かれています。自動車業界の方も、そうでない方も、一読されることをお勧めします。

Tesla May Be Trampled by CATL in China
2018/05/08 テスラがCATLにコテンパンに負かされるだろう・・・
Daimler to buy its EV batteries from CATL
2018/05/02 ダイムラーがCATLからバッテリー調達
China’s CATL to supply car batteries to Nissan and Renault
2018/05/10 日産、ルノーとCATLが提携
【フィンランド―生産】受託生産のヴァルメト(Valmet Automotive)、初の第3シフトを導入 CATLから出資受け入れ

2017/08/06 フィンランドのTier1サプライヤーであるValmet AutomotiveにCATLは出資しています。CATLの出資後、生産ラインの増強、人員の補充を急速に行っています。CATLが欧州市場に乗り込むのは間違いないでしょう。

 

Legal Flash EV駆動用バッテリーメーカーの外資出資比率規制の … – PwC

2017/07/28 非関税障壁と批判されているホワイトリストに関するPwCの解説です。

Chinese battery firms join Responsible Cobalt Initiative

2018/05/25 こちらの記事では、IPOで調達した資金を利用して、CATLは欧州にバッテリー工場を立ち上げると書かれています。また、CATLが主力とする三元系正極材を利用したリチウムイオンバッテリーに必須のコバルトに関して、その流通過程に責任を持つ協議会the Responsible Cobalt Initiative (RCI)に加入したとのことです。

 

Battery giant buys stake in lithium firm – Chinadaily.com.cn

2018/03/14 CATLがカナダのリチウム会社の支配権を90%取得したそうです。上流から下流まで一貫した流れを作るつもりのようです。

 

Contemporary Amperex Technology Canada Limited Announces …
North American Nickel closes $17.5M financing led by CATL – Private …

2018/04/19 同じく三元系バッテリーに必要なニッケル権益をCATLは手に入れたそうです。

これにより、ニッケル、マンガン、コバルトという三元系(NMC)正極材の調達にメドがついたことになります。

 

Chengdu Liang – Google Scholar Citations

こちらは皆さんも卒論でお世話になったかもしれないGoogleスカラー。もちろん、中卒くんにはまったく無縁のものなのですが、現在CATLの研究所でDean of Research InstituteをされているDr.Chengdu Liang(チェンズ・リアン)がまだオークリッジ国立研究所※2に在籍していた当時のページが残っていました。ちなみにこの人、固体電解質の研究でトップクラスだと以前日経ビジネス?だか何かに書いてありました。こちらのサイトによると、技術情報誌に査読済み論文90本以上、7000件以上の引用、 the 2010 R&D 100 Award, Energy Storage Program Manager’s Recognition Award, ORNL Significant Event Award, CNMS Distinguished Scientific Contribution Awardを受賞しているとのことです。どれだけ凄いことか中卒くんには良くわかりません。査読?なにそれおいしいの?

(※2エネルギー研究、特にクリーンエネルギー研究のトップクラスの研究機関です。マンハッタン計画の名残の施設といえば、略歴がイメージしやすいと思います)


まとめ~寧徳時代新能源科技(CATL)こそが、中国製造2025の一番槍である~

 

とりあえず、こんな人材をアメリカのハイレベル研究機関から引っこ抜いてきて、しかも三元系正極材の材料は全部自前で用意できる体制を作って、補助金と低利融資でドーピングして、非関税参入障壁でガードして、IPOした資金で世界に打って出よう・・・というのがCATL(寧徳時代新能源科技)のやろうとしていることです。

 

はっきり言って、

Panasonicとか村田製作所の電池事業とか今後一体どうなるんだろう?

って思います。

しかもこれと同じようなやりかたで世界中で戦える企業を育成しようっていうのが中国製造2025のキモなんです。

あとあとになって皆は気づくことになると思います。

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寧徳時代新能源科技(CATL)こそが、最初の中国製造2025企業だったのだ・・・と。

 

トランプ元大統領はバカっぽかったけど、いやいや、言ってることは結構あたってたじゃん?・・・と。

 

みんなが気づいたその時には、すでに世界中の産業界が朱色の資本主義に塗りこめられていることでしょう・・・。