日銀ETF購入のせいにするのはお門違いだ~日経コラム「小粒になった日本企業/寿命突出の89年」を読んで

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日銀ETF購入のせいにするのはお門違い~日経コラム「小粒になった日本企業/寿命突出の89年」を読んで

 

 

日経の日曜版に以下のようなコラム記事がありました。

日経コラム 小粒になった日本企業「寿命」突出の89年 成長鈍く

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ちょっと気になったので、考えを纏めておきます。

 


要約すると以下のようになります。

2000年末と17年末との一社あたりの時価総額を比較すると

  •  日本9.9億ドル→17億ドル
  •  米国27.5億ドル→72.3億ドル
  •  中国5億ドル→27億ドル

になった。

米国との格差は2.8倍から4.3倍に開き、中国との格差は0.5倍から1.6倍に逆転した。

この背景にあるものとして

  • ネットビジネスでの出遅れ
  • 日本経済の低迷
  • 規制緩和の鈍さ
  • 経営者マインドの保守性
  • 語学力も含めた人材不足

が挙げられるが、なかでも多くの専門家は「企業の新陳代謝が国際的にみて鈍い」と指摘している。

上場企業の平均寿命を比較すると、NY証取の上場企業は15年、ロンドン証取の上場企業は9年、日本証取の上場企業は89年と、日本だけが突出している。

 

M&Aや投資活動が積極的に行われず、成長よりも上場維持だけを目指すような経営が罷り通っている。

この理由のひとつとして、日銀の年間6兆円規模のETF購入が挙げられる。

業績が低迷していても株価が高く維持されるため買収のターゲットになりにくく、企業経営者は市場からの圧力を受けにくくなっている。

成熟期に入った日本経済に今必要なのは、企業の新陳代謝を活発にするトータルな施策である。

という森国司記者、富田美緒記者の二人による署名記事です。

(要約はなるべく本旨を壊さないようにしましたが、完全に意図するところを書ききれているとは限りません。できれば元記事をごらんください。)


 

悪くない視点だと思うのですが、いくつか指摘しておきたいと思います。

 

 

1.まず時価総額比較ですが、2017年末は世界的に新興国株が高い時期にありました。中国企業の時価総額も凄く高い時期です。

テンセントとか60兆円、アリババもそのくらいありました。

中国株はそのあたりをピークに下落していますから、日本企業との時価総額比較をするには不適切なデータ抽出方法だと思います。

まずこれが1点目。

 

 

2.日銀のETF購入のせいにするのはお門違いだ

M&Aや投資活動が積極的に行われず、成長よりも上場維持だけを目指すような経営が罷り通っている・・・というのは正しいと思います。

しかし、日銀のETF購入のせいにするのはお門違いです。

たしかに日銀のETF購入のおかげで株価が下支えされ、そのことによって株式市場から経営に注文がつくことが減っている、というのはあるかもしれません。

しかし、株式市場参加者は絶対パフォーマンスだけを求めているわけではなく、多くの投資家は(とくに機関投資家などは)相対的なパフォーマンスを求めているのです。

周りの株価が高くなっているのに、自分の持ち株が低迷していたら無能です。クビです。

 

日銀のETF購入にベータを少なくする効果はないはず

日銀のETF購入はTopixや日経平均に連動するよう組成されたETFを購入しているのですから、満遍なく全体的に買われている状態です。

絶対的な水準の底上げには繋がるかもしれませんが、株価変動を均す効果はないでしょう。あったとしても、わずかだと思います。

 

市場原理をゆがめているのは日銀ETF購入ではなく統治機構と法制度

日銀ETF買いがあったとしても、ちゃんとした市場原理が成り立っている市場であるならば、いいのです。

株価が高い企業が高株価を利用して、株式交換で株価の低迷している企業を買収すればいいのです。

それを市場原理だけでできるようにしておけばいいのです。

それは法制度の問題であり、企業統治の問題です。

 

 

日銀ETF購入を問題視するよりも、政策保有株、株式持ち合い構造を問題視すべき

日銀ETF購入は確かに市場の緊張感を失わせる効果はありますが、しかしそれがすべての問題ではないと思います。

一番は企業統治の問題であり、それを歪めているのは政策保有株、つまるところ株式持ち合い構造の問題です。

時価会計の導入でだいぶマシになってきたとは思いますが、まだまだ多くの企業で政策保有株を保有しているのが実情です。

これをすべて吐き出させることが大切だと思います。

 

 

日銀ETF購入を問題視するよりも、株主優待制度による個人投資家の餌付け行為をやめさせるべき

個人投資家はえてして議決権を行使しません。

とくに、大量の株主優待株を保有するような乞食みたいな連中は、優待という餌だけを目当てに投資しており、企業統治なんて興味関心ほとんどまったくありません。

こういう扱いやすい連中を企業は「物言わぬ株主」として欲しており、株主優待で釣るような行為を繰り返しています。

企業統治を真に改善させたいのなら、株主優待制度を禁止すべきです。

もしくは、議決権が行使されない白紙票は、いっさい票数として数えないよう会社法を改正すべきです。

法社会学の観点から議論を進めるべきと思います。

 

 

 

日銀ETF購入は確かに問題だらけだが、今回の件とは無関係

 

たしかに、日銀ETF購入はいろいろと問題があるとは思いますし、ずっと続けるのはおかしいと思います。

個人的には、さっさとやめてしまった方が良いと思っています。

しかし、それと今回の企業の新陳代謝の問題とは別問題です。

森国司記者、富田美緒記者の両氏は、ふたつの問題を安易に絡めるべきではなかったと、個人的には思います。

 

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日銀ETF購入をなくした程度で企業の新陳代謝が進んでバラ色の未来になるのなら、日銀ETF購入のなかった時代に既にちゃんと企業統治はよくなっているはずですからね。

 

以上です。