北海ブレント60ドル割れ!~弱みを握られたサウジはOPECで減産に後ろ向き~

北海ブレント原油が60ドル割れ~OPECは価格維持を目論むも、サウジが皇太子問題で弱みを握られ減産できず~

 

 

 

北海ブレント原油が60ドルを割れてきています

 

背景に、世界景気の減速と、それに伴う原油消費量の減少、原油在庫の増加傾向があります。

また、イラン産原油の禁輸措置が半年先延ばしされたことも重しとなっており、供給能力が需要を上回る状況になっています。

 

本来であればこういった場合に協調減産を行うOPEC(石油輸出国機構)ですが、今回はどうも動きが鈍くなっています。

サウジのファリハ・エネルギー相は減産をしたがっていたようですが、サルマン国王もしくはムハンマド皇太子主導で、減産へのトーンが抑えられてきています。

 

トランプ大統領に弱みを握られ、原油価格を低く誘導せざるを得ないムハンマド皇太子

この背景には、ジャマル・カショギ氏殺害事件をめぐる問題が横たわっています。

ジャマル・カショギ氏殺害にはムハンマド皇太子が関与していたとされ

(というより、首謀者と目され)

この件で米議会がサウジへの非難の声を強めています。

 

これに対してトランプ大統領は「サウジは大事な同盟国である」としてサウジを擁護。

ムハンマド皇太子に関してはCIAは直接の関与があったと報告書を纏めているとされていますが、トランプ大統領はこれを拒否。

「ムハンマド皇太子がカショギ氏殺害を知っていたか、知らなかったかはわからない」

という態度を貫いています。

ただし同時に以下のようにも呟いています。

原油価格がさがってる!すばらしい!

アメリカと世界にとってデッカイ減税に等しいぜ!

前まで82ドルだったけど、いまは54ドルだ!たのしもうぜ!

サウジありがと!でももっと下げような?

 

 

こんな調子です。

つまり、

「原油価格はもっとさげろよ?」

「OPECで減産協議とか許さんからな」

ってことです。

 

と同時に、

サウジに対しては「皇太子の命運握ってるのは俺だってことわすれるなよ?」

議会に対しては「サウジのおかげで低い原油価格で済んでいるんだぞ」

というメッセージが暗に含まれているように感じます。(私見)

 

 

 

とりあえず、これを市場は敏感に嗅ぎとっています。

サウジはムハンマド皇太子の後継問題をめぐりトランプ大統領の意に反する原油減産はできない。

この調子で暴落するのではないか・・・

そういう雰囲気が漂っています。

 

 

原油価格下落で泣く国、笑う国

原油価格がここまで下がってくると原油の生産国の経済は落ち、逆に原油の消費国の経済は下支えされる効果がでてきます。

具体的には、中国、インドなどはエネルギー消費が多く、原油価格下落で非常に潤います。

日本も同様です。

とくにここもとの原油価格上昇で中国は貿易収支が大きく削られてきましたが、原油が大きく下がるとエネルギー輸入額が減り、大きなメリットになります。

インドも金融不安につながりかねないインフレの芽が出ていましたが、それがいったん後退します(抜本的な面で問題を抱えているのは変わりないですが。)

日本もまた同様です。貿易収支が悪化傾向にありましたが、これが改善します。

航空各社なども恩恵があるでしょう。

 

 

ただ逆に中東産油国は完全に泣くことになります。

とくに、南米ベネズエラ、イランはすでに制裁の影響で経済の腰が弱く、政治的な不安定感がさらに増す可能性があります。

ロシアも同様です。

大きく騒がれていませんが、ロシアがここもと景気回復してきていたのは、エネルギー価格上昇によるものです。

これが剥げれば、非常に大きな痛みがくることになる、と思われます。

 

 

とりあえず、多方面に影響を及ぼすエネルギー価格の推移。

今後も注視していく必要があります。

以上。