米中貿易戦争が解決すればリセッション入りは避けられる?
質問箱に以下のような質問がありました。
https://twitter.com/chu_sotu/status/1073053655664713728
「米中貿易戦争が解決すればリセッション入りは先延ばしになるか?」
というものです。
いつも質問箱のご利用ありがとうございます。
とりあえず、文字数制限で書ききれない内容をこちらに書こうと思います。
リセッションの定義とは?
まず、リセッションの定義から考えてみましょう。
一般的にリセッションはGDP成長率が二期連続してマイナスになった場合をいいます。
程度がどうであれ、一期で回復すればリセッションとは言わないのが普通です。
逆に、微々たるマイナスでも二期続けばリセッションとみなされます。
ですので、感覚的にとらえられる不景気とはちょっと違います。
不景気と感じるけれどリセッションじゃない場合、そこまで不景気になってないはずなのにリセッションとみなされる場合など、いろいろとあります。
リセッションとデプレッション
さらに、リセッションを通り越して二桁マイナスの成長率だとか、長期にわたる大幅下落などはデプレッションと言います。
ですが、デプレッションはこちらは定義が明確なものがなく、感覚に頼ったものになりますので、なんともわかりにくいことになっています。
一般的に、デプレッションというとグレート・デプレッション(大恐慌)を言いますが、サブプライムローンバブル崩壊もデプレッションに入れる人もいるようで、ここらへんは明確な基準はありません。
近い将来にリセッションは起きるか?
近い将来にリセッションは起きるでしょうか?
個人的には、その可能性はないとは言えない、と思います。
べつにリセッションはそんなに珍しいことではなく、よくあることです。
だいたい10年に一度程度は起きていることですが、前回からすでに10年経っており、日柄的にはそろそろリセッション入りしてもおかしくありません。
ただ、
米中貿易戦争が直接的な原因となってリセッション入りするとは考えていません。
リセッションに入るためには最終需要を蝕む何かが必要でしょうが、現状のアメリカで生産活動の面からそれを感じることはありませんし、家計・企業ともに財務面からも問題はみえません。
バンクローンが懸念されていますが、民間非金融部門の債務残高に占める銀行借り入れ比率は、アメリカにおいてさほど上昇していません。(カナダは高いです。)
中国では高水準の企業債務が懸念材料になっており、政府が金融引き締め策を昨年冬から実施。そのために設備投資急減を招いていますが、同時に貿易統計をみる限り減速はすれど減退までには至っておらず、むしろ人民元安で米国以外の国への輸出が好調に転じるなど、直近ではやや潮目が変わってきています。
【統計】2018年11月中国貿易統計~米国による封じ込め策が失敗している可能性
ここらへん、PMIの数字と乖離してきていて意外感があるのですが、貿易統計は相手国の統計とも整合がとらざるをえないものですので粉飾はできず、正直な統計だと思います。
個人的な見立てでは、今回の中国経済の減速は米中貿易戦争の結果というよりも、中国国内での金融引き締めや各種規制強化(環境や文化など)の影響、行き過ぎた人民元高による影響が大きいとみています。そこらへんが変化すれば、改善してくることが予想されます。
欧州も一部の北欧諸国に懸念すべきリスクがあると思いますが、総じて問題がない。
とりあえず、ファンダメンタルズ的には問題がないように見えます。
・・・が、だからといってリセッションが来ないというわけではない
もし近いうちにリセッションが来るとしたなら、そういったファンダメンタルズからの問題ではなくセンチメントの問題。
つまり、
「もうそろそろ10年経つし、リセッションくるかな?」
「株や不動産は売り時かな?」
「米中貿易戦争こわいよ」
「ブレグジットは売りだな」
と人々が思うことで資産価格の下落が進み、それが主因となって購買意欲が減退して最終需要が減っていく・・・
今回は、もしリセッションがくるとしたら、そういう道筋をたどる可能性が一番大きいと思います。
ですから、
「米中貿易戦争が解決したらリセッションは先延ばしされるか?」
との質問に対する答えとしては
「米中貿易戦争が解決してもしなくても、資産価格が下落すれば逆資産効果でリセッション入りするし、逆に下落しなければリセッション入りはしそうにない」
という答えになります。
以上です。