日立子会社ホライズン・ニュークリア・パワーが英アングルシー島で計画中の原発開発を停止へ
日立製作所の英子会社ホライズン・ニュークリア・パワーがアングルシー島で行っている原子力発電所(原発)建設運営事業を断念へ
日立製作所がイギリスの子会社ホライズン・ニュークリア・パワー社で行っていた原子力発電所建設工事を断念する方針ということです。
日立子会社ホライズン・ニュークリア・パワーが原発開発を断念する理由は?
日立が原発開発を断念する理由は、そもそも事業リスクの大きさの割にリターンが小さすぎることが挙げられると思います。
日英の国策主導で推し進められた原発事業であり、そもそも民間事業者には全くおいしい話でないので他に出資企業も集まらず、社外取締役たちからも反対意見が続出したということです。
国策として推し進められた日立ホライズン・ニュークリア・パワー社によるアングルシー島の原子力発電所開発
日本政府および経済産業省は、国のエネルギー政策として原子力発電を強硬に推し進めようとしてきました。(2005年原子力政策大綱 ※1)
福島第一原発で痛手を受けたあとは一旦しおらしくなった経産省でしたが、ほとぼりがさめると手のひらを返したように再生可能エネルギーへの仕打ちを厳しくし、原発推進に軸足を戻しました。
しかし国内では世論の問題から、なかなか原発再稼働もできないし新設もできそうにない。
そこで経産省は海外に原発を輸出することを考えます。
2012年の日英首脳会談では「日英民生用原子力協力の枠組み」を発表。これによりイギリスに原発輸出するための計画を練ります。
2013年には「インフラシステム輸出戦略」というものを打ち出し、このなかで「原発は低炭素社会に必須」として海外に原発を輸出していくことにしました。
この片棒を担いだのが日立と三菱重工です。
2012年、日立がホライズン・ニュークリア・パワー社を買収
2011年のフクイチ原発メルトダウン後すぐ、日立はドイツE.ONとRWEのJVだったホライズン・ニュークリア・パワー社を買収します。
このホライズン・ニュークリア・パワー社こそがアングルシー島における原発計画をしてきた会社であり、2011年のメルトダウン後すぐに買収を決めるあたり、もうすべて国主導の出来レースであったことが明らかだと思います。
原発研究の火を消したくない日本と、安価なエネルギーと雇用の場が欲しいイギリス側の国同士の利害が一致。
民間事業者やその後ろ側の株主、債権者の利害を全く無視した計画が、この頃から動きだしました。
2016年、麻生財務相が公的な融資保証をつけた融資で日立ホライズン・ニュークリア・パワー社によるアングルシー島における原発開発推進を発表
総額3兆円もの費用が予想されるホライズン・ニュークリア・パワー社による原発開発。
とてもじゃないけど民間事業者が自己負担で出来る事業ではないということで、公的資金が検討されました。
ここで生み出されたスキームが、プロジェクトへの出資は日立以外からも集め、のこりの2兆円超の融資については国が融資保証をすることで事業を回そうというもの。
しかし、どんなに融資環境をよくしようとも、最終的に利益を出せなければ日立ホライズン・ニュークリア・パワー社の業績が悪化するのは見えていますから、もう、この時点でいろいろ無理があったのだと思います。
他の出資者が見つからない日立ホライズン・ニュークリア・パワー社による原発開発
とりあえず、融資スキーム自体は上記のように決まったのですが、問題は、日立や経産省が他社に参加を呼びかけても、首を縦に振る企業がまったくでてこなかったこと。
親方日の丸で呼びかければ企業は応じると思ったんでしょうが、実際には 日立の単独事業となりそうでした。
日立の中西宏明会長はホライズン・ニュークリア・パワー社の比率を50%以下にして連結外しをしたかった?
日立の中西宏明会長はホライズン・ニュークリア・パワー社をオフバランス化できる50%以下にすることを求めていたといわれています。
つまり、こうすることで損失が発生してもすぐには株主にバレません。
リスクを皆で共有しようという意味よりも、どちらかというとオフバランス化、連結外しによって会計を綺麗に見せようとしていたようです。
しかし、こうした方針に社外取締役が反発します。
「儲からないならやめるのが筋」と。
日立の社外取締役が大反対のホライズン・ニュークリア・パワー社による原発開発
今回の日立ホライズン・ニュークリア・パワー社による原発開発凍結は、日立の社外取締役の影響だということです。
「儲からないならやめるべき」
「リスクに見合ったリターンがなさすぎる」
というものです。
また、株価下落で市場からもガバナンスを問う声が上がり始め、中西宏明会長もついに断念することになったようです。
日立ホライズン・ニュークリア・パワー社の損失額
最終的な投資をすべてすると3兆円をオーバーする案件でしたが、途中でやめることで2700億円の損失となりそうと一部で報じられています。
はやめに損失を確定して逃げられるなら、その方が好ましい、と個人的にも思います。
今回の件、社外取締役が強硬に反対したとのことで、企業統治、ガバナンスがきっちりと機能していることを示した一つの例だと思います。
日本企業はようやく、お上の顔色伺いばかりをしているヒラメ経営から離れられるようになってきた・・・という点で大きな成長になっています。
今後、こういった流れが定着すれば、日本企業への評価も変わってくるとおもいます。
とりあえず、以上になります。