物品貿易協定(TAG)における対日要求項目22分野を議会通知~為替条項、金融、通信分野も含まれるなど実質的にはFTA~

物品貿易協定(TAG)における対日要求項目22分野を議会通知~為替条項も含まれる~

 

 

米通商代表部USTRが物品貿易協定(TAG)の交渉に向け、22項目の対日要求項目を議会通知しました。

この22項目ですが、為替条項や金融分野、通信分野における規制緩和なども要求されており、実質的にはFTAに近い性質のものとなっています。

年間7兆円の貿易赤字を削減することがトランプ大統領、およびライトハイザーUSTR代表の目標であり、今回の22項目の要求はそれらをかなりの部分カバーする内容になっているようにみえます。

 

物品貿易協定(TAG)の締結に向けた日本側の態度

日本側としても貿易赤字の削減自体には反対していないようです。

しかし、金融政策の足枷ともなりかねない為替条項の厳格な適用には反対していく方針であり

また、国内農家への配慮から農業分野ではなかなか折り合いのつけにくい問題となっています。

問題は、この物品貿易協定(TAG)が成立しない場合には即座に日本からの自動車輸出に高関税がかけられてしまうことであり、それだけは日本側としても避けたいところ。

日本としてはいずれにせよ、折り合いをつけなければならない状況となっています。

 

 

 

 

物品貿易協定(TAG)交渉におけるアメリカ側の22項目要求の一部

物品貿易協定(TAG)交渉に向けたアメリカ側の要求のうち、特に揉めそうなものを下記にリストアップします。

  1. 自動車分野において米国の安全・環境基準を日本が完全に受け入れること
  2. 為替条項を導入して円安政策を禁止
  3. 通信分野、金融サービス分野の開放など
  4. 高額な医薬品、医療機器でも保健医療でカバーされること(ここまで言及してはいないけれど、たぶん目的はこんな感じ)

 

1は国際協調によるWLTP導入に向けた動きがあるなかで、アメリカだけ孤立しているわけで、これに日本が付き合うのは非常に損になる。

18/6/7午後 WLTPと2021年EU規制で自動車販売はどうなるか

 

2は、個人的には導入されても大して問題にならないと思う。

実際、今だって為替介入は日本単独で行うことなどないのだから。

ただ一部には、低金利政策などの金融政策への縛りになる可能性があるとの指摘もある。

ここらへんは知恵の出しあいじゃないだろうか。

 

 

3は、これを認めるとFTAと同じになるので反対というのが日本政府の態度

 

 

4は保健医療制度の限界を示している。

日本は医療費が財政を圧迫しており、とくに高額医療に関しては日本は自費負担にしようとしている。

だが、それをするとアメリカの高額医薬品が日本で売れなくなる。

保健医療でどちらもカバーするようにしろ、というのがアメリカの主張の模様。

 

物品貿易協定(TAG)交渉に向けた22項目通史で語られていないこと

なお、農業分野は関税引き下げを求められるも、どうやらTPP以上ではない模様。

農業団体各方面からは、TPP11以上の緩和(豚肉、牛肉、乳製品、小麦など)、冷凍牛肉セーフガードを禁止などの要望が出されていたようだけれど、それらは含まれていないもよう。

また、自動車に関する輸出数量制限も要求はなし。

とりあえず、このあたりは日本側も飲める形のボールが来ていると思います。

 

 

なにはともあれこれから交渉。

場合によって各方面のビジネスの浮沈がかかってきます。

しっかり交渉の行方をみていくといいですね。

以上。