リビアでISISが急速に拡大か?~エルシャララ油田、エルフィール油田の産出量にも影響へ~

リビアでISISが急速に拡大か?~エルシャララ油田、エルフィール油田の産出量にも影響へ~

 

カダフィ大佐亡きあとのリビアでISISが急速に勢力拡大~同国最大のエルシャララ油田、エルフィール油田の産出量にも影響へ~

報道によりますと、リビア外務省の建物が3人の襲撃者に攻撃され、高官1人を含む職員3人が死亡、18人が負傷したということです。

今回の事件ではISISが即座に犯行声明を出しており、同組織の活動が拡大していることをアピールしています。

 

 

カダフィ大佐後のリビア内戦の推移を振り返ってみる

アラブの春を起点とするリビアのカダフィ政権打倒運動は、やがて2011年のリビア内戦へと展開。

一時はカダフィ政権側が全土を掌握するかに思えましたが、その後オバマ政権が反政府側(評議会派)を支持し、NATO軍主導によるカダフィ政権側への攻撃が開始されました。(オデッセイの夜明け作戦)

これを受け、劣勢にたったカダフィ政権側は徐々に崩壊。

1969年から続くカダフィ大佐による統治は、彼の死とともに終わりました。

 

 

カダフィに優遇された部族と冷遇された部族による対立

カダフィ亡きあとは評議会派が政権を担いましたが、部族間の対立が急激に激化。

カダフィに冷遇された部族、とくにキレナイカなど前国王出身部族やミスラタなどから、カダフィに優遇された部族(西側に多い)への攻撃が相次ぎ治安が悪化。

欧米に支援された評議会派が各部族に世俗主義を押し付けたことも、イスラム教に忠実な部族の反感を招き統治に失敗。

 

リビア、再び内戦へ~トリポリとトブルクの東西対立

2014年には世俗化を推し進める政権側に反発する動きがイスラム部族側から噴出し、再び内戦が勃発

この内戦は2016年には一応の落ち着きに至ったのですが、その後できた統一政府作りも困難を極め、結局東西に分裂する動きは収まらず・・・

 

 

リビアの統一政府作りは困難を極める~シラージュ議長とハフタル将軍の対立

こうした東西による対立構造をうまく利用して勢力を拡大したのがシラージュ議長とハフタル将軍。

ファイズ・シラージュ議長は西側トリポリを拠点にリビア大統領評議会を率い

ハリーファ・ハフタル将軍は東部を中心に軍事部門を動かしています。

そして、そのどちらにも属したくない一派がISISに参加

このISISにはシリアやイラクから逃げてきた者も集まっているとされ、その数は右肩上がりに上昇していると言われています。

 

 

リビアのエルシャララ油田、エルフィール油田

リビアはOPEC加盟国であり、原油の輸出国です。

以前は100万バレル超輸出していましたが、現在では内戦の影響でかなり激減しています。

リビアには日量31万5000バレルを誇るエルシャララ油田とエルフィール油田があるのですが、この二つの油田がたびたび内戦の被害にあってきています。

さらには石油の積出港も攻撃を受けています。

今年7月には積出港を支配したハフタル将軍側が管轄権を東部ベンガジ政府に渡すなど混乱が拡大。

これに対して、リビア国営石油会社NOCのムスタファ・サナラ会長が批判するなど、非常に混とんとしています。

問題は、サナラ会長は政権側の石油施設警備隊の交代を求めている点。

たしかに警備能力が足りていないようですが、これが政権側、NOC、ハフタル将軍側のみつどもえ状態に繋がっているようで、さらなる混乱に繋がっています。

 

 

そんなさなかにISISがリビア西部トリポリの外務省建物を襲撃

こういった混乱が続く最中に、今度はリビア西部トリポリの外務省建物がISISによって襲撃を受けました。

これはISISにとって、今度の拠点はリビアだぞ、とアピールしていることに等しいです。

リビアは目下、小さな内戦と大きな内戦が同時並行で進行中、とても流動的な状態です。

そしてリビアには石油があります。

さらには欧州への移民のルートにもあたります。

混乱に乗じて勢力を伸ばせる余地がある・・・欧州も米国も介入をする余裕がないなか、非常に危険な状況におかれています。