オレグ・デリパスカ氏の経営関与希薄化を受け『ルサール(RUSAL)』への経済制裁を米政府が解除
ようやく米政府が『ルサール(RUSAL)』への制裁解除
昨年春に突如始まった『ルサール(RUSAL)』問題。
オーナーであるオレグ・デリパスカ氏が競合他社に対して違法な行為(恐喝・暴力など)を働いていたとの疑い、および米国の政治への関与を疑った米政府は、オレグ・デリパスカ氏と『ルサール(RUSAL)』を纏めて制裁対象に追加。
また、『ルサール(RUSAL)』の関連企業である露エネルギー企業『EN+』やニッケル世界最大手『ノリリスク・ニッケル』も制裁対象になるとの観測から、世界中に震撼が広がりました。
このあたりの経緯については以下の記事を参照
トランプ政権、アルミ大手ルサールへの制裁解除へ~オレグ・デリパスカ氏の持ち分低下を受けて
ちょっといろいろ酷すぎるw RUSAL(ルサール)問題をかんがえる 4月17日
ロシア制裁強化法で潤うのは誰?~RUSAL(ルサール)、Norilsk Nickel(ノリリスクニッケル)の暴落~ 4月10日
これを米政府は一転して解除することになりました。
なぜルサール(RUSAL)への経済制裁を解除?
なぜルサール(RUSAL)への制裁を解除したのか・・・これは表向きは、オーナーのオレグ・デリパスカ氏の持ち分が減り、経営への関与が薄れたからといわれています。
が、実際のところは、
「影響があまりにも大きすぎたから」
ということだと思われます。
欧州におけるルサール(RUSAL)とノリリスクニッケル制裁の影響があまりにも大きすぎたと思われます。
ノリリスクニッケルなどはロシア国内外で鉱山や精錬所を多数運営しています。
アメリカ国内にもありますし、フィンランドやオーストラリアにも拠点はあります。
当然、それらは現地の需要家がいて成り立っています。
オーストラリアのBHPビリトンのニッケルウェストからフィンランドのノリリスクニッケル工場⇒欧州のステンレスメーカーや自動車用バッテリー正極材へ・・・というサプライチェーンが出来上がっています。
ルサール(RUSAL)にしても同様で、ロンドン商取LMEの指定倉庫へガンガン入って流通経路に載せられます。
日本にだって入ってきています。
もっというと、アメリカ国内でもアルコアで賄いきれない分はルサール(RUSAL)からきています。
これらが全く流通しないとなると、産業が完全に目詰まりを起こすわけです。
そして、ノリリスクニッケルにしてもルサール(RUSAL)にしてもそうですが、市場シェアがべらぼうに高い。
どちらも市場シェア3割程度でしょうか。
身体の血液の三割が詰まったら、人間は死にますが、ルサール(RUSAL)への制裁っていうのはつまりそういうことです。
当初から現実的じゃありませんでした。
これは、貴金属市場をちょっとでも知っていたら誰でも「アリエナイ」と感じた話だと思います。
ぶっちゃけ、アルコアを儲けさせるためだけにトランプ政権が推し進めているんじゃないか?とすら感じました。
アルコア株価
この、ピョンと上昇しているところがルサール(RUSAL)への制裁が入ったところです。
で、その後、影響が甚大すぎてルサール(RUSAL)制裁を解除しようという話が出るたびにアルコア株は急落・・・結局いまはこのご覧の水準です。
ルサール(RUSAL)制裁と似た動きは原油市場でも見られます。
どういうことかというと、イラン制裁措置です。
イランへの制裁をするぞするぞと言ってきて、WTI原油は上昇基調をたどりました。
ところがその後、原油価格上昇を怖がったのか、経済への影響を嫌がったのか、トランプ大統領はイラン制裁措置を半年先延ばしします。
それによって需給関係がガッツリ崩れて原油価格は崩壊。
とりあえず、同じことがあちらこちらで繰り返されています。
現在、同じようなことがエタノール市場や米中関係でも起きかねない状態になっています。
あまり政治的な要因による需給引き締まりを期待しない方がいいです。
トランプ大統領という人は、いざとなると矛を引っ込める人ですから。
以上。