前回の記事では
「仮にトランプ関税が実行されたとすると、中国はどんな報復関税をとるだろうか」
という観点で記事を書きました。
ところが、中国は報復関税などをする前に、まったく別の措置をとってきたようです。
https://twitter.com/HsiaofanChina/status/970539317377593345
・・・・・・つまりどういうことかというと、
海外の株式市場に上場している中国企業に対し、
「中国の株式市場(上海A株、深センA株)に戻ってこい」
ということなのです。(香港の扱いがイマイチ薄い気がしますが・・・)
しかも・・・
「アメリカ市場の方は上場廃止にして中国だけで売買できるようにしろ」
ということらしいのです。(本当ですか?ほかのニュースソースがほしいところです。)
もしこれが本気なら、大変なことです。
どう考えても米国の受けるダメージが圧倒的に大きいのです。
なんで通商問題が金融問題に発展しているのかワケワカリマセン
たぶん中国側は、今回のトランプ関税云々とは無関係と言うでしょう
しかし、中国側特使の劉鶴氏をぞんざいに扱ったあとでこの仕打ちです。
きっと無関係ではないでしょう。
以前の記事にも書いたのですが、
中国のネット企業などは、ここ5、6年くらいの間に、海外で上場するのがメジャーになっていました。
たとえば電子商取引サイトで有名なalibaba.comや、PUBGライクなスマホアプリ荒野行動がヒットしたNetEase、検索エンジン最大手の百度(BIDU)、ポータルサイトの新浪(SINA)、トラベルサイトの携程網(CTRP、シートリップ)、中国版Amazon.comのJD.com、イベントセールスの唯品会(VIPS)なども米国市場に上場していますが、中国国内では上場していませんし、香港でも上場されていないんです。(以前はアリババの子会社が香港に上場していました。アリババは資本整理をする段階で、種類株発行が許されるアメリカを選びました。)
2010年くらいまでなら、ネット・ハイテク企業は香港市場で上場するのが常でした。例えば騰訊(テンセント 0700.HK)などは香港市場上場です。
ところが、11年くらいだったかな?香港市場を避けて米国市場に上場する企業が続々と出てきました。
一説によれば香港では種類株発行が許されず、同股同権(同じ株式は同じ権利を持つ)が原則なので、支配権を失いたくない創業者がそれを回避するためにアメリカを選んだ・・・と解説されることもあるのですが、種類株を発行していない企業もたくさん米国に流れているので、たぶんそれは違うと思います。
やれ資産隠しのためだとか、やれ中国共産党に没収されないためだとか、いろいろと思惑はあったのでしょうが、確たることはわかりません。とにかくなぜか、猫も杓子も海外に流れてしまいました。
きっとどこかの投資銀行が手取り足取り上場のお手伝いをアドバイスして稼いでいたんだと思います。
中国政府は、これを苦々しく思っていたようです。
自国で育てた企業が、ライバル国で上場し、ライバル国の証券会社や投資銀行や証券取引所が儲かり、ライバル国の株主がほとんどになるというのは、気分のいい話ではありません。その会社が中国内で稼いだ富がダダ洩れして外に出て行ってしまいます。
中国は最近になって、これら海外に出ていった企業に帰ってくるよう促し始めました。
そのひとつが、以前の記事にも書いた香港証券取引所の種類株解禁であり、アリババは香港市場にセカンダリー上場をするつもりだろうと報道されていました。
しかし今回のニュースは、(それが本当であれば)今までのものと根本の部分から異なります。
セカンダリー上場ではなく、本体は中国に置け&アメリカの方は上場廃止してね
この主張が本当であれば、かなりのインパクトです。
アメリカの証券会社で取引していた株主の多くは、継続保有するためには中国A株にアクセスできる証券会社を利用しなければならなくなります。
監査や会計なども中国側の基準に合わせていくことになりますから、そういった部分を嫌気する外国人投資家は抜けることになります。
NYSEやNasdaqからA株に上場先を変えた企業は、株主構成が変化するのではないかと思います。
また、海外からの投資がA株市場に入ってくることによって、国有企業の資本制度改革時、混合所有制改革時の受け皿になることも期待できます。
中国地盤の証券会社、証券取引所、銀行などの金融機関にとっては商売のタネが増えることになります。
中国側にとってはいいことづくめです
逆に言うと、米国側にとっては最悪です。
政権にとっても、米国の金融機関にとってもです。
一か月前くらいに漏れ伝わってきていた内容では、「米国市場はそのまま上場、中国市場へのセカンダリー上場で済ませる」という話だったのです。
それがいつの間にか「米国市場からは撤退しろ」になっているようなのです。(追加情報をみるまでは真実かどうか確認できませんので、完全には真に受けられませんが。)
もし本当であれば、長期的に見た場合、これがターニングポイントだったと記憶されることになるはずです。
中国は、国を挙げて資本市場の整備に乗り出しています。
皮肉な話ですが、共産主義を標榜する中国の株式市場が、資本主義の本丸であるアメリカ市場よりも規模が大きくなる可能性は十分にあります。
可能性というか、たぶんそうなるでしょう。
兎にも角にも、続報が望まれます。
真実であれば、物凄いニュースです。