ポンペオ国務長官が訪中するも、習近平国家主席どころか中国共産党中央政治局常務委員の誰にも会えず。王毅外相とは喧嘩腰の会談~ペンス副大統領の演説余波広がる~
ポンペオ米国務長官が訪中しましたが、中国側は習近平国家主席どころか、中国共産党中央政治局常務委員の誰も相手をせず、王毅外相が応対しました。
しかも、その王毅外相とは終始険悪な雰囲気のまま非難の応酬を繰り返し
ペンス副大統領による中国共産党ディスり演説が、本格的に米中関係を崩壊させようとしています
とりあえず、ペンス大統領が何を言ったのかみてみましょう。
なお、この件に関しては先日10月5日に記事にまとめていますので、そちらもよろしければごらんください。
東シナ海における米中関係緊迫化のなか、ペンス副大統領が訪日へ
この動画をまとめたものは記事リンク先をみていただくとして、本当にザックリと纏めると、このペンス演説は
「中国共産党まじウンコ野郎」
「中国人は悪くない。北京の連中(中国共産党)が悪い。台湾らぶ」
「米国は『ひとつの中国』の原則はまもるよ。でもそれは中国共産党を認めるってこととは違う。」
「台湾の民主主義体制こそが中国人のあるべき国家」
みたいな感じです。
ようするにですね、中国共産党はイデオロギー的にどうしようもない相違点があってもう無理ぃ~
みたいな演説です。
そして、ペンスが北京の指導部をdisって台湾を礼賛するたびに拍手が沸き上がるんです。
先ほどの記事でも書きましたけど、これはもうペンス副大統領による、中国共産党に対する宣戦布告だと思います。
この演説、けっして中国自体に対する宣戦布告でないことに注意が必要です。
米国はぶっちゃけ、中国人民のパワーに勝てるだなんて思ってません。
米国と中国では人口が圧倒的に違いますし、中国は一人当たり名目GDPがまだ8千ドルちょっとなのにこの国力です。
台湾や香港、シンガポールも中華系の人が多いですが、これらと同じくらいの水準まで中国人が豊かになったなら、とてもじゃないけどアメリカは勝ち目がない・・・
そんなことは米国の政権中枢部の人間だってわかってます。
アメリカは、別に中国の人民ひとりひとりと戦いたいわけじゃないと思います。
少なくともこの演説からは、そんな文言は一言も語られていません。
むしろ、民主化された中国人の国である台湾を礼賛し、「台湾こそが、中国人民にとってより良い進路である」と言っています。
これは太平洋戦争後、日本人全体を批判するのでなく、天皇および軍閥、財閥の問題だと切り分けたGHQの方針に似ています。
アメリカは、中国共産党指導部のことをマルクスの亡霊にとりつかれつつ都合よく修正主義に走ったクズ野郎と思っています。
つまり、かつてのソ連の連中と同じ扱いです。
アメリカは中国共産党指導部に対し、ソ連に対して行ったことと同じ方針をとりたいのだと思います。
しかしそれはうまく行くでしょうか?
個人的にそれは、もう無理じゃないか?
と思います。
中国はサプライチェーンのなかにも、資本市場のなかにもガッチリ組み込まれ過ぎています。
たとえ中国がガン細胞であろうとも、これを強制的にメスで切り離そうとすれば確実に大出血を起こします。
ガン細胞に栄養を与えないように血流をシャットダウンさせながら弱らせつつ、徐々に切り取っていくしかありません。
しかし、中国共産党だって漫然とそうされることを眺めているほど愚かではないはずです。
かならず、様々な手を使って米国に対抗してきます。
さて今後、米中関係はどうなるでしょう?
米国は、中国共産党指導部の転覆を目的としているようにみえます。
中国を台湾のような民主的な国にしたいわけです。
インターネットの自由や、報道の自由、欧米系メディアの自由な活動を求めていく可能性はあります。
しかし、中国はそれに応じるとは思えません。
米国は「中国製造2025」を邪魔するために同盟国と組んで、半導体製造装置や工作機械などの資本財輸出を禁じるかもしれません。
これに対して中国はレアメタルやレアアース、製薬原料などの輸出禁止措置をとるかもしれません。いくつかの商品にかんして、中国の市場シェアは非常に高くなっています。
また、中国国営企業がアフリカなどで採掘している資源などもあわせると、実は中国企業が供給を止めたら世界中がパニックになるようなものもあります。リチウムイオン電池に利用するコバルトなどがいい例です。
コンゴ民主共和国DRCのコバルト生産~少年兵と鉱山における児童労働
阪和興業、格林美(GEM)、青山控股集団、寧徳時代新能源科技(CATL)、IMIPなどとスラウェシ島でニッケル、コバルトなど電池材料大量生産へ
米国は中国にインフレ加速させるため、原油価格をわざと引き上げるための施策を打つかもしれません。
たとえばロシアやイランに制裁をがっつりかけて、中国が輸入できない状況を作るといった方法です。(ロシアやイランと取引をするならアメリカに中国製品を売らせてやらんよ、みたいなやり方です。)
イランやロシアから中国がエネルギーを調達できないようにしてやれば、中国の景気は大きく落ち込むことになるはずです。(同時に、世界中の新興国がポシャる危険性もありますが。)
ロシアは米国との関係が悪化して以降、保有する米国債を売っています。
米国債は電子化されており、経済戦争になればいつでも米国の意思で残高を弄れるといわれています。
ロシアはそれを恐れ、米国債を売って他のアセットにしているとのことです。
同じことを中国がやる可能性はあります。
とりあえず、たぶんこの戦いは、両者痛み分けに終わります。
長く続くとみている人も多いですが、その前にアメリカも大きな被害をこうむり、厭戦気分がとたんに高まるタイミングがやってくるんじゃないかなぁと思っています。
今のところはその心配は、アメリカに関してはほぼなさそうにみえますが・・・
米ソ冷戦になぞらえる人もいますが、現状はそこまでは行っていないでしょう。
なにより、ソ連と違って米国の囲い込みが成功していません。
また、成功するようにもみえません。
インドが米国の言うことを聞かない件について~イラン原油輸入、ロシア製兵器購入など~
インドに限らず、漁夫の利で儲かる国が必ずでてきます。(そのひとつは、北朝鮮でしょう)
そうしたところを中心に見ていけば、ペンス演説後のこの状況もなかなか面白いかもしれないなぁと感じます。
あとがき
なお、ペンス演説は非常に重要なものなはずなのに、日本のメディアでちゃんと報道したところはほぼ皆無です。
ちょっぴりふれたメディアもあるにはありましたが、たとえば産経なんて、自分たちが報道したい尖閣諸島と絡めた報道だけ強調してやって、全体像を咀嚼して伝えようという努力をしませんでした。
なんというか、情報ソースを自分の伝えたい内容に切り貼りしながら伝えるような、そういう態度が見え隠れして気持ち悪いです。
日経はさすがにまだマシでしたが、ワシントンの永沢毅記者がきちんと書こうとしているのに、5日朝刊で渡された枠はめちゃめちゃ小さい。9面、243文字だけです。信じられません。一面で書きましょうよ。
既存メディアはネットメディアを否定的に見る癖がありますが、既存メディアはもう少し、自分たちの報道姿勢を謙虚に見直してみたらいいと思います。本当に使い物になりません。以上です。