ドイツ政府が中国企業・煙台市台海集団によるライフェルト・メタル・スピニングへの買収案を安全保障上の理由により阻止
ドイツ政府が、中国企業によるドイツ企業買収を安全保障上の観点から阻止するそうです。
Berlin signals readiness to use new takeover veto after Chinese bid for …
中国の煙台市台海集団は、ドイツの精密機械メーカーであるライフェルト・メタル・スピニング(leifeld metal spinning)への買収計画を撤回しました。
中国の煙台市台海集団は、主に原子力発電所に使われる配管部品を製造、納入している企業とのことです。
この煙台市台海集団が、ノルトライン・ウェストファーレン州アーレンを本拠地とするライフェルト・メタル・スピニング(leifeld metal spinning)社の扱う、原子力関連部品を作るための製造機械の技術を手に入れようとしていました。
これが中国側に流れることは安全保障上の問題につながる、とドイツ政府が嫌ったそうで、破談になるのを見越して煙台市台海集団側から先に降りた、と報道されています。
また、アメリカのNASAに納入されている何らかの部品を作る機械も、ライフェルト・メタル・スピニング社は製造しているそうです。今回はそういった点から、アメリカからの横やりがあった可能性があります。
とりあえず、ライフェルト・メタル・スピニング社は企業アピール動画をいろいろ載せていますので、そちらをみてみようと思います。
鋼管の絞り、ネックイン加工、削りなどを主に行うプレイバック式の機械を生産しているようです。
特に最後の動画などはおもしろいです。溶かしながら成形して端末処理をしている。
かなり高度ですね。
こりゃ確かに中国が欲しがるのもわかります。
そして、ドイツ、アメリカが売りたがらないのもわかります。
今回のドイツ政府の買収拒否の決定に対して、煙台市台海集団は特にコメントを出していないようです。
この決定は、ここもと親密化しつつあった独中間の関係に影響しそうです。
というか別記事にも書きましたが、ドイツを含めて欧州全体がアメリカと歩調を合わせて対中国で共闘路線を組む可能性がでてきています。
5月24、25日の訪中時には、メルケル首相主導で中独関係はかつてないほどに親密になっていました。
アメリカが自由貿易の盟主から降りた以上、ドイツとしては中国との関係を強化して独自の貿易環境を構築しなければならない、そんな感じの危機感が後押しをしていたと思います。
このメルケル首相訪中時には民間事業者同士もさまざまな商談が成立し、総額は200億ユーロを超える規模にまでなりました。
コラム:李克強総理とメルケル首相による中独政府間協議開催 200億ユーロ規模の取引成立
このときの成果が、今回の件でガラガラッと崩れています。
なお、今回のライフェルト社の一件に先んじて、ドイツ復興金融公庫KfWが中堅送電会社50ヘルツ・トランスミッション社の株式20%分を取得するというニュースがありました。
これは、ベルギーのエリア・システム・オペレーターが保有していた50ヘルツ・トランスミッション社株式の20%を7億7000万ユーロで買収するというものです。
じつはこのエリア・システム・オペレーターは中国の送電企業である中国国家電網SGCCに50ヘルツ・トランスミッション社を売却予定だったとのことですが、50ヘルツ社は約1800万人に電力を供給する規模の会社とのことで、自国インフラ企業に中国企業の手が伸びることを嫌ったドイツ政府がドイツ復興金融公庫KfWを利用して買い取りをしたとのことです。
って、もう完全に中国側と手切れって感じがしませんか?
春先までは、トランプ大統領と距離をおいて、次の盟主中国との関係を強固にしなければ!っという雰囲気がありました。
ドイツが中国への接近をやめ、米国になびきつつある件について 参照
つい数か月前、メルケル首相訪中時には大規模な商談会が行われました。相互に投資を拡大する約束をしました。
たとえば、BMWは提携先のブリリアンスチャイナと共同で運用している子会社の出資比率を高め、工場を拡張する方針を示しました。今まで自動車産業の外資出資比率を50%までに制限していた中国としては、この比率変更は大幅な譲歩でした。
また化学大手のBASFは独自に1兆円以上の規模を投じて石油化学コンビナートを設立すると発表しましたし、シーメンスはマインドスフィアをアリババのクラウドと提携すると発表しました。自動運転やAI技術では中国企業とダイムラーが提携しましたし、そのほかにも様々な投資促進策が取り決められました。
今回のドイツ側の行動は、そのときの約束を反故にするようなものです。完全に日和見姿勢です。
これは確実に中国側からの反発を受けると思います。今後、陰に陽に、嫌がらせを受けることになるでしょう。