日米通商協議(FFR/Free Fair Reciprocal)の第二回会合が24日開幕~NAFTA米墨合意から透けてみえる米国の自動車関税大幅引き上げの狙い~
日米通商協議(FFR/Free Fair Reciprocal)が24日にニューヨークで開かれます。
今回の日米通商協議(FFR)には、日本側から茂木敏充経済再生担当相が出席、米国側はライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が出席することになっています。
前回はこちら:日米新貿易協議(FFR)終了~自動車関税回避なるか~
なお、日米通商協議(FFR/Free Fair Reciprocal)などと言われていますが、この呼び方をしているのはあくまでも日本側だけであり、アメリカ側はまったくこんなアマッタレたことを言っていないことには要注意です。
日本側はメディアもこのFFRという語を多用しているため、さも自由で(Free)、 公正で(Fair)、相互に(Reciprocal)、メリットのある通商協議になるかのような印象になっていますが、こんなことアメリカ側はトランプ大統領も含め誰も言っていません。
むしろトランプ大統領は、既存の通商内容を変更してでも対日貿易赤字を削減することを目指しており、あらゆる強硬な主張をねじ込んでくる可能性があります。
このような状況にありながら、茂木再生相は日米双方の利益となる良い結果を出す」と話しているようです。
個人的には、それは非常に甘いんじゃないかと思います。
なお、この2日後の26日から、トランプ大統領と安倍首相の日米首脳会談となります。
なお、トランプ大統領は日米の貿易関係をFTA交渉に一本化したいとの方針を示しているようです
日米会談で“FTA締結提起” 米駐日大使が言及「進展望む」 FNN産経新聞
24日に日米FFR 米、FTA要求へ 日刊工業新聞
米中西部の州知事、日米FTAを要望 投資増にも期待 日本経済新聞
アメリカ側は、FTAを結ぶことでより広範囲な関税の引き下げを目指しており、おもに農産品などの関税を引き下げることを目指しているようです。
日本側は(特に自民党が)これを断固として拒否しています。日本はあくまでも環太平洋経済連携協定(TPP)を軸に交渉したいとの方針です。
日米FTA 回避を 首脳会談見据えくぎ 自民対策本部担当相に要請 日本農業新聞
対米 関税協議も視野 「農業はTPPが限度」 FFRで日本 日本農業新聞
自民党としては、農産品の関税を引き下げることは農家を中心とした集票マシーンを失うことに繋がりかねないとの理由からFTAには断固拒否ということのようです。
ただ、こうした日本側(というか自民党)の都合がどこまで考慮されるかは不明です。
以上がこれまでの経緯になります。
さて、ここからは日米通商協議(FFR)における今後の推移について個人的な見解を書きます。
「アメリカ側が日本に何を要求してくるか?」は、いろいろ漏れ伝わってきています。
ロイターが報じたところによると、
「米国側は自動車の輸出削減と米国での生産増加を求めてきている」
とのことです。(ごめんなさい、ソースがみつかりません。確かにロイターで読んだのですが。)
また、日本だけ自動車が高関税になるのではないか、と伝える報道もあります。
FFR、週内に第2回会合 自動車高関税“日本だけ”現実味 日刊工業新聞
さすがにここまで厳しい内容はどうかと思うのですが、
日米通商協議(FFR)で「自動車輸出枠設定&超過分に高関税導入」を米国が日本に求めるというのは、米墨のNAFTA交渉からみてもありうる話だと思います。
米墨のNAFTA交渉結果
アメリカ、メキシコのNAFTA交渉は以下のように纏まったようです。
・原産地規則・・・自動車部品の現地調達率は75%、70%、65%など重要性によって違いはあれど、全体的にみて現状より高率の現地調達率を義務化
・鉄鋼アルミの70%はNAFTA域内での調達を義務化
・エンジンなどはNAFTA域内での調達を義務化
・自動車部品の付加価値の40%(または45%)は時給16ドル以上の労働者によって生産されなくてはならない。(これは実質的にアメリカ国内で作れということ)
・ 輸入台数を年間240万台に制限、超過分には25%の関税措置
・為替条項の導入
・自動車部品:重要度に応じて75%、70%、65%の3段階の原産地規則。年間900億ドルの対米輸出合意枠。
・サンセット条項・・・一定期間後に契約内容を見直し
参考:US and Mexico reach a preliminary trade deal that could replace NAFTA CNN
また、米国、カナダのNAFTA交渉では、農産品分野などでなかなか折れないカナダ側に対し、アメリカは自動車関税の25%への引き上げをチラつかせて合意を迫っているとのこと。
これは、通商拡大法232条(安全保障のための関税措置)を盾にしたものです。
現在、アメリカは乗用車に対して2.5%、自動車部品に対しても2.5%の関税をかけています。
これを一気に25%に引き上げると言って脅しています。
ここで気づいた人もいると思いますが、
さきほどのメキシコとアメリカのNAFTA交渉でも、輸出枠超過分には25%の関税を科す内容でした。
カナダとアメリカのNAFTA交渉でも25%の関税がチラつかされています。
つまり、日米新貿易協議(FFR)でアメリカ側が最低限要求してくるのは、25%の自動車関税率である可能性が高いのではないか
と個人的には予想しています。
メキシコは別途、為替条項や原産地基準などで合意しましたから、年間240万台を超えた分に25%をかける程度ですみました。
カナダとのNAFTA交渉でも、カナダが農産品分野などで開放するようであれば、25%の自動車関税はやめるようです。
たぶん日本も、農産品分野で妥協すれば25%の自動車関税はやめてもらえるかもしれません。
逆にいうと、そういった妥協を日本側が一切みせなければ、25%の自動車関税がかかる可能性があるのではないか
と思います。
トランプ大統領は中間選挙を控えて成果が欲しい状態。
とりあえず、そのタイミングを上手く利用してさっさと合意してしまった方が、経済的には日本にとってメリットがあると思います。
自民党が農業分野の票を大切に思う気持ちはわかりますが、ここで上手く立ち回らないとマズいんじゃないかなぁという気がします。
とりあえず、頑張ってもらいましょう。
24日に日米通商協議(日本時間25日)、26日に日米首脳会議です。
以上。