中国海航集団(HNA)、王健氏が旅行中に謎の転落死 デレバレッジの流れが進むなか、巨額債務にあえぐ同社の関連企業はどうなる?
中国海航集団(HNA)の実質ナンバー2、王健会長(董事長)がフランス旅行中に転落死しました。
HNA Executive’s Death Risks More Turbulence at Debt-Laden Giant
記事によると、フランス警察は事件性はないとみているようです。
・・・が、ネット上の反応、そしてマーケットの反応をみると、これを信じる人はほとんどいないようです。
海航集団は巨額債務を抱えています。利払い費を本業の利益で賄えないくらいに。
中国の巨大複合企業である海航集団(HNA)は、リーマンショック後の金融緩和環境下で積極的に債務を膨らませ、買収を繰り返してきた中国の一大コングロマリット集団です。
この企業を説明することはなかなかに難しいところがあります。
というのも、よく
「海航集団は海南航空を母体にして発展した」
と解説されるのですが、実は海航集団はもともと単なる海南省海口市を拠点にした地方政府系企業のひとつでしかなく、資本金は1000万元ちょっとの、海南航空の小株主でしかなかったのです。
それが、どうしたわけか、いつの間にか海南航空を傘下におさめ、その会社を舞台に外国の銀行から融資を引っ張り、外銀からの融資を引っ張った信用力で国内銀行からの融資を引っ張ったりしました。香港株、上海株、深圳株などの子会社を上場させては本体で資金を吸収し、錬金術のようにカネを集めていきました。
それらのカネで海航集団(HNA)はドイツ銀に出資したり、ヒルトンホテル(ヒルトンワールドワイド)を買収したり、中国海南空港を傘下におさめたり、イングラム・マイクロを買収したり、CITの航空機リース事業を買収したり・・・と、どんどんと債務と資産を膨らませながら巨大コングロマリットに育ってしまったのです。
海航集団(HNA)の後ろ盾には、現在の国家副主席、王岐山の名が取りざたされます。また外銀からの融資を纏めたのはジョージ・ソロスのおかげとも言われます。たしかに、海航集団の陳峰と王岐山は部下と上司の関係だったことが二度ありますが、このあたりの情報は真実と嘘が入り混じっていると思います。何が本当かはわかりませんので載せません。とりあえず、それらキーワードで検索すれば幾らでもヒットしますので、興味のある方は調べてみると面白いと思います。
そうして拡大基調にあったHNA海航集団ですが、さすがにレバレッジ経営も転機を迎えてきました。
中国政府もシャドーバンキング規制やら理財商品取り締まりやらを通じてデレバレッジ(債務バランスの調整)を国家レベルで行い始めています。
海航集団は高まる信用不安のなか、利払い費を賄えない状態になってしまい、最近はヒルトンワールドワイドを売却したり、商業用不動産を売却したりしながらキャッシュを確保せねばならない状況に陥っていました。
中国海航集団、米商業不動産40億ドル相当を売りに出す方針-取引資料 …
ヒルトン株も一部または全て売却の意向-債務に苦しむ中国の海航集団 …
そうした債務整理、デレバレッジのさなかで起きた今回の海航集団(HNA)王健会長の転落事故、株式市場にどういった影響を与えたかを見てみたいと思います。
まずは主力となる航空・空港事業・・・
海航基礎 HNA Infrastructure (香港市場:0357)
海南美蘭国際空港を運営しています。
香港国際建設投資管理集団 HKICIM / Hong Kong International Construction Investment Management Group (香港:0687)
事業内容がよくわかりません。
海航実業集団 HNA Holdings /CWT International (香港市場:0521)
海航集団の物流部門です。本来はCWTインターナショナルという名称でしたが、紛らわしくして投資を呼び込むためにHNA Holdingsという社名になっています。
まぁ、今となっては逆効果だった気がしますが・・・w
海航科技 HNA Technology Investments Holdings (香港市場:2086)
事業内容がよくわかりません。
海福徳集団 Hifood Group Holdings (香港:0442)
海航集団関連の宝飾品メーカーです。
なお、深圳市場上場の海航投資集団(深圳市場:000616)上海市場上場の海南航空(上海市場:600221)はここのところ売買停止です。
不都合なことがあると売買停止にする癖は直した方が良いと思います。MSCI新興国株指数に中国株は組み入れられましたが、しょっちゅう売買停止になっては困ります。
なお、今回のHNA王健会長の転落死に関しては、多くの人が自殺ではないか?とみているようです。他殺とみている人も一部いるようですが、さすがにそれは・・・ないですよね?
で、なぜ自殺したか(自殺とは決まってませんが・・・)ですが、個人的には以下の件とリンクしているような気がしてなりません。
先日、空港三社に対する民航発展基金からの補助金を停止する、というニュースがありました。これの対象に海航基礎の子会社、海南美蘭空港も含まれていたのです。
この補助金は、海南美蘭空港の営業利益の半分以上(80%くらい?)を占めていたようですので、かなりの金額です。これがなくなるのは死活問題です。何故いきなり?なぜ海航集団の業績が危ないのがわかっていながら、中央政府は関係整理を急ごうとしているのか?
・・・中央政府との関係が、若干変わってきていたのではないか?
と、俺は感じました。
おなじことを王健会長は思っていたのかもしれません。
昨年は、鄧小平の孫娘と婚姻関係にあった呉小暉率いる安邦保険集団が摘発されました。政府に密接にパイプを持っていた保険集団でしたが、やりすぎて吊るされました。
それと同様のことが起きると考えても不思議ではありません。
とりあえず、何があったかはわかりませんが、ご冥福をお祈りいたします。