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【中国/政策】習近平国家主席、民間企業重視の姿勢を鮮明化~国有化観測を全面否定

【中国】習近平国家主席、民間経済重視の姿勢を鮮明化~一部で囁かれていた国有化加速観測を全面否定

 

中国、習近平国家主席が珍しく経済問題、政策問題に言及。国有化観測を否定し、民間経済の重視を表明しています。

Xi Vows ‘Unwavering’ Support for Private Sector After China Rout Bloomberg

これに先立ち、劉鶴副首相も「民営企業を重視する」という同様の発言をしています。

【中国/政策】劉鶴副首相、株式市場下支え策を発表~国有化の意図なしをアピール

 

通常、中国の指導部が株価下落や景気減速に対して、ここまで口を開くことはありません。

チャイナショックの時ですら、ここまであからさまにあれこれ発言しませんでした。

中国指導部が株価下落と景気後退に対して非常に強い危機感を持っていることがよくわかります。

とくに、この習近平国家主席の発言も、劉鶴副首相の発言もそうなのですが

「中国政府は民間企業の国有化をするのではないか」

という疑いの声に対して、非常にセンシティブになっている姿がみてとれます。

“Any words and practices that negate and weaken the private economy are wrong,”

“Supporting the development of private enterprises is the Party Central Committee’s consistent policy,” Xi said.

要約すると

「民間経済を否定したり弱めたりする言動や試みは間違いだ」

「民間企業を支持し、発展させることは党中央委員会の変わりない方針だ」

と習近平国家主席は言っています。

 

なんでいきなりこんなことを言いだしたのでしょうか?

 

 

 

中国共産党政府が民間企業を国有化する・・・というプロパガンダ

じつはここもと、西側の中国語メディアがひたすら中国共産党にネガティブな報道を繰り返していたことが背景にあります。

たとえば以下のようなものです。

「安邦保険が国有化されたのは中国政府が民間事業者の資産を接収するのが目的」

「SNSに民間企業の国有化を主張する投書があった。これが野放しにされていたのは、中国政府が国有化の意図があったからだ」

「アリババ会長の馬雲が引退表明した日に、支付宝が銀聯に吸収された」

といった感じのもの。

ちなみに安邦保険が国有化されたのは同社が滅茶苦茶な投資を行って経営が傾いたからであって、資産接収なんてまったく不可能。

SNSの書き込み云々はどうだか知りませんが、ちょっとこじつけ臭いですし、ジャックマーが引退した日にアリペイが銀聯に吸収されたってのは完全にデマ。そんなことはまったくない。

これはたぶん、アリペイで集めたカネをアリババがフリーハンドで運用できていたことを指していると思います。ちゃんと顧客資産と分離して預託しろという命令が出たのを、銀聯に吸収された、政府に接収されたと報じているだけです。

ちなみに、預託は金融不安の芽を摘むためには当然のことで、それは日本でも証券会社の資産と顧客資産を分けるために保振を使ったりするのと同じことです。

こういった措置を以て「国家による接収」と捉えるのはどうみてもミスリードでしょう。

 

 

 

 

ただし、中国では民間企業を国有化したがっている層もいないわけではない

これはFTの記事なのである程度信頼して良いと思うのですが

[FT]相次ぐ中国民間企業の国有化 活力低下の不安呼ぶ

会員でない方は全部を読めないのでざっくり要約すると

・株価が下落している。民間企業になかなか融資が下りない。

・カネのあるのは国有企業や省直轄の企業。そういうところには融資が下りる。

・国有企業や省直轄の企業が、資金繰りに困った民間企業を買収して国有化比率が高まっている

そういう感じの記事です。

 

 

習近平や劉鶴など中国共産党指導部は、国有化より民間企業の活力を利用したい

つまり、民営化や混合所有制に反動的にふるまう勢力が存在することも事実で、だからこそ、劉鶴副首相や習近平国家主席の今回の唐突ともいえる発言に繋がった・・・のだと個人的には見ています。

実際、自分が見ている範囲だけですが、どうも中国人のかたは国有化が本当にありうるのではないか、とみている節がある。

逆に海外の方は、「まさかね?」といった感じで楽観視している感じがします。

どちらが正しいか?

個人的には、「国有化なんてないでしょ」と思います。

よほど中国共産党の指導部がバカでないかぎり、資本市場の発展こそが世界の覇権を左右することくらいわかるはずだからです。

 

 

 

米国が覇権国になれて、中国が覇権国にいまだなれない理由はなにか?

これは簡単です。

投資先としての魅力が米国にはあって、中国にはないから。

世界の人々は投資先を求めています。

政策面、会計や法などの制度面、企業統治や経営面などを複合的にみて、やはり米国は投資先として魅力的なのです。(ちょっと株式のバリュエーションは高すぎますが)

米国は、以前に比べて消費市場としての魅力は落ちています。世界の消費に占める米国の比率はどんどん落ちています。中国やインド、東南アジアなどの新興国の需要がどんどん膨らんでいます。

 

しかし、それでも投資先としての魅力だけは、やはり米国が一番なわけです。株式、債券、商品先物、いろいろなものにおいて米国での取引価格はベースになります。

米国と敵対して、この市場にアクセスできなくなることは、経済的には死刑を宣告されていることに等しいわけです。

だから皆、米国には歯向かえないし、言いなりになるわけです。

ある意味、デロス島に預けたカネを人質に取られた同盟国と同じです。

 

これに対抗するには、中国はまだ信頼感がないし、人民元の流通量も少なすぎる、市場も未発達です。

逆に言うと、中国が本気で資本市場や金融システム、法律や会計制度の安定性を高めれば、そのときは中国が米国にとって代われる可能性があります。

中国の指導部が馬鹿でなければ、これに気づいているはずです。

国有化だなんてとんでもない。そんなことをしたらドン詰まりです。大きな大きなベネズエラの出来上がりです。

 


ついでなので、以下にここもと出てきた経済統計などを載せておきます。

 

中国の経済統計

【統計】中国2018年第3四半期国内総生産・GDP

【統計】中国2018年9月固定資産投資

【統計】中国2018年9月鉱工業生産指数

2018年9月中国貿易統計 9月は対米黒字増加

 

中国のGDPは2009年第1四半期以来の低い伸び。

中国の鉱工業生産指数もここ二年のペースを下振れしています。

 

 

 

中国の株価指数下落

 

中国は株価も大きく落ち込んでいます。

香港H株指数 日足

 

香港H株指数 週足

 

 

 

上海総合指数 日足

 

上海総合指数 週足

 

バリュエーションはヒストリカルにみて相当低い水準です。

今後、米中貿易戦争などによって傷む可能性を懸念されていると思われますが、製造業ならともかく、配当が6%程度つくような公益セクターなども香港市場だとPER5~6倍台から見られます。

そういった銘柄は、さすがに少々売られ過ぎという気がします。

以上です。