中国が電気自動車だけでなくハイブリッド車も優遇するわけ

中国が電気自動車だけでなくハイブリッド車も優遇するわけ

 

 

中国がハイブリッド車優遇に転換か

中国がハイブリッド車の販売を優遇する方針と日経が伝えています。

これまでEVの販売を優遇してきた中国ですが、ハイブリッド車も優遇することで環境対策を優先する方針、と日経は伝えています。

これを受けて、トヨタやホンダなど日系企業が有利だと結論付けています。

中国ハイブリッド車優遇に転換 トヨタなどに追い風

 

 

中国のハイブリッド優遇は本当に行われれるのか?

日経は、上記のように

「ハイブリッド車優遇は環境対策のため」

と報道しています。

しかし中国がそんな単純な方針で物事を決めるはずがありません。

産業政策などと複合的に絡めて判断されているはずです。

 

中国は今年からNEV規制を導入しています。

この環境規制の強化によって、販売現場では非常に混乱した動きが出ています。

中国では環境基準達成度によって「国5」「国6」などといった基準値が存在するのですが、

ここにきて一部都市で規制が急激に強化されたことで国5適合車の販売が急激に落ちており、これが自動車販売業界の問題になってきています。

6月後半あたりからは積極的値下げで国5も販売を回復させているようですが、

自動車販売台数全体を眺めると、小売側の統計で回復している一方、鉱工業生産の自動車生産が回復していません。

かなり混乱が長引いているのがわかります。

 

実はこうした混乱が発生することは以前予測した通りです。

中国で自動車販売が急減速~2018年通年で前年を割り込む可能性も~NEV規制にも注意

 

昨年10月13日の上記記事でも書きましたが、NEV規制によって2019年の前半の自動車販売市場が混乱に陥るのは見えていました。

2019年後半からはこの対策が出てくることは予想に難しくありません。

現在の混乱を抑えるために、あれこれと政策が考えられているのは間違いないでしょう。

ぶっちゃけた話、日経が報じた内容が実現するかどうかはわかりません。

飛ばしの可能性も含めて考えた方が良いと思います。

他のメディアが別ソース経由で報じていれば信用できるのですが、今のところそういったものは見当たりませんので。

 

 

 

もし中国がハイブリッド車も優遇するなら、環境対策だけが理由ではないはず

仮に、もし中国がハイブリッド車優遇をするとしたら、どういった理由でしょうか。

日経が言うように、本当に環境対策だけが理由でしょうか?

 

自分はそうは思いません。

中国は、いつもそうですが、そんな単純に物事をとらえません。

常に複合的に政策は実行されます。

もしハイブリッド車優遇するというなら、それは産業政策などと絡めて判断されているはずです。

 

ではその産業政策とはなにか。

個人的にそれは、対ASEAN、アフリカなどへの輸出を意識した動きではないか、という気がしています。

かねてより言われているように、EVが爆発的に普及するためには、バッテリーの生産能力が足りていません。

新興国ではEVよりもハイブリッド車の方が普及する可能性はあります。

そして、そういった市場をとっていける技術もできてきています。

欧州が中心になって普及させようとしているマイルドハイブリッド技術などはその典型例でしょう。

48Vマイルドハイブリッド化(LV148)についてまとめ~2021年EU規制への対応が目的~

昨年9月に書いた上記記事でも書きましたが、欧州自動車メーカーはEV化とマイルドハイブリッド化の二極に投資をしています。

欧州自動車メーカーはVWやルノーなどを中心に新興国市場での稼ぎが大きい企業が多い。

南米などでVWは強いわけですが、そういった地域で高価格なEVはすぐには普及しないでしょう。

そこを欧州勢はフル装備のハイブリッドではなく、レベルを下げた普及型ハイブリッドで攻めようとしています。

 

今回、中国も同様の政策をとってくる可能性はあるのではないか、とみています。

中国は国内の自動車販売が頭打ちになってきていますから、おのずと海外向けの売上を増やさざるを得ない状況です。

これを促進する材料として、ハイブリッド技術も振興していく可能性があります。

 

しかしそれは、日経が説明するような

「ハイブリッド車に強いトヨタやホンダが優位」

な展開とは異なるはずです。

もし本気で中国政府がハイブリッド車優遇を打ち出すならば日本企業にとって脅威なはず・・・

 

その視点が欠けている日経新聞は、ほんとどうしようもないな、と思います。

あの新聞を鵜呑みにしていると馬鹿になります。

気を付けた方がいいです。