ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)、ファーウェイ製品利用の初回申請を拒否

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)、ファーウェイ製品を利用した5G網構築の初回申請を拒否

 

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)が通信大手スパーク社が申請していたファーウェイ製品利用の5G網構築を拒否

ファイブアイズの一員でオーストラリアとともに対中国で強硬姿勢を示しているニュージーランドですが、同国通信大手のスパーク・ニュージーランド社が申請していたファーウェイ製品を利用した5G網構築の初回申請を拒否したとのことです。

この件に関して、同国のサイバーセキュリティなどを含めた包括的な情報機関、ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)は、この決定にファイブアイズの意向は関係ないと釈明。

GCSB spy says no Five Eyes pressure in decision to block Huawei

ただ、この発言をそのまま受け止める人は、たぶんいないと思われます。

 

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)とは?

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)は、ニュージーランドの情報機関です。

なお、あたりまえですが、情報機関というのはようするにエスピオナージ、スパイ組織、諜報機関という意味。

単純に情報技術の審査をするような機関ではありません。

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)の発祥は第一次世界大戦にまで遡ると言われています。

イギリスの手先として太平洋における暗号化、複合化を担ったことがニュージーランド政府通信保安局(GCSB)の始まりとされ、その後も大英帝国の連邦国の一員として、非常に重要なポジションを担ってきたと言われています。

 

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)とファイブアイズ

ご存知の通り、米英加豪とともにニュージーランドはファイブアイズと呼ばれる防諜協定を結んでいます。

ファイブアイズは正式にはUKUSA協定(ウクサきょうてい)と言いますが、ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)もまた、アメリカ国家安全保障局NSAやイギリス政府通信本部GCHQ、カナダ通信保安局CSEC、オーストラリア参謀本部国防信号局とともに、世界の通信を傍受、盗聴している組織とされています。

このシステムを用いて、テロや犯罪を未然に防ぐほか、日本や欧州諸国の政治・産業・経済の中枢にいる人物の情報も窃取したり、産業の機密情報なども抜き取っているのではないか、と今までさんざん言われてきました。(たとえば欧州の風車データが米国の某重電大手に流れていたのを疑われたり)

 

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)とエシュロン

上記のような盗聴活動、情報窃取活動を行ってきた組織が、アメリカのNSA傘下にあるエシュロンというシステムと言われています。

この存在はかねて噂されてきましたが、2010年代にはいりエドワード・スノーデンという人物がウィキリークスを通じ暴露。

この方はもともとハッカー上がりの方でNSAに雇われたようですが、その後、信条的に許せなくてNSAを抜け、ロシアに亡命、エシュロンの存在とその手口、関係先などをどんどんリークしました。

その中に、ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)ももちろん含まれており、特に重要な役割を担ってきたとされています。

このなかには日本やフランスなどに対する諜報活動も含まれていたとされ、アメリカはニュージーランド政府通信保安局(GCSB)を使い、同盟国の情報すら盗んでいたことが明らかにされました。※1

※1・・・デビッド・ラッセル・ロンギ首相の死後に発見された資料による。このなかで、ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)が日本やフランスなどの諜報を行い、アメリカと共有していたことが書かれているとされる。また、アンザス危機(ANZUS危機)の際、米国側はグリーブス級ミサイル駆逐艦ブキャナンの入港を認めなければ関係を悪化させるぞと脅してきたことなども明らかにされた。実際、デビッド・ロンギ首相の代理が核を積んだ可能性を指摘して駆逐艦ブキャナンの入港を拒否した後は、アメリカ側から情報提供などが一時的にほとんど行われなくなったとのこと。

 

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)は国民ウケが悪い

というわけで、実際のところ、ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)はニュージーランド国民のウケが悪いとされています。

ニュージーランド政府通信保安局(GCSB)は、自国の政府をアメリカの傀儡にするための組織なのではないか、という論調は以前からメディアで流されており、そうした見方に同調する意見も多いと言われます。

今回、ファーウェイの問題がニュージーランドでも大きな問題になっているのは、ファーウェイの設備を導入した方がニュージーランドとしては得になるかもしれないのに、アメリカがニュージーランド政府通信保安局(GCSB)を使ってそれを邪魔しているのではないか?という疑念からです。

とりあえず、このニュージーランド政府通信保安局(GCSB)の問題は古くて新しい問題であり、同国がアメリカ追随の外交をするか、それともアジアとの中立外交を目指すか、という転機になりかねない状況にもなっています。

日本国内では影の薄いニュージーランドのニュースですが、そういう意味で重要です。

日本もどういうふうに他国と付き合っていくのか、よくよく考えていく必要があります。

 

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以上。