中国、経済政策をめぐり李克強首相と易綱人民銀行総裁のあいだに方針の違いか

中国、経済政策をめぐり李克強首相と易綱人民銀行総裁のあいだに方針の違いか

 

中国の経済政策をめぐり、李克強首相と易綱人民銀行総裁のあいだに方針の違い

中国の新規人民元建て融資、および社会融資総量残高が1月は記録的な高水準となりました。

【統計】2019年1月 中国新規人民元建て融資~社会融資総量残高が過去最高を更新

これに対して、李克強首相が強い不満を示しているそうです。

Chinese premier in rare spat with central bank




 

 

李克強首相は何を怒っているのか

李克強首相はもともと、世界的な金融収縮が起きた2008年当時からの中国の金融緩和政策も批判してきました。

「経済の発展のためには構造改革が必要だ。」

「金融緩和による債務拡大は邪道」

という価値観の方です。

中国ではご存知の通り、民間債務が対GDP比で非常に上昇してきました。

こうした傾向を受け、中国は2017年後半から2018年夏にかけて、債務拡大にストップをかけるように政策を変更します。

いわゆる、デレバレッジというもの

2018年1-5月中国固定資産投資 デレバレッジの動き始まったか?

デレバレッジ開始か?中国開発銀行がスラム街再開発計画向け融資を停止 

翌日物金利を高めに誘導して借入しにくくしたり、安易な借り入れを抑制するために民間のP2P金融や理財商品への投資も制限を繰り返しました。

 

 

中国人民銀行、易綱総裁の自己批判

こうした金融政策、財政政策の引き締めの結果、中国経済は急減速します。

そこにさらに追い打ちをかけたのが米中貿易戦争です。

中国政府のデレバレッジ政策は、米中貿易戦争による貿易量の低迷を通じて増幅され、2018年後半になるとPMIなどにも明確に低迷が反映されるようになってきました。

【統計】中国国家統計局PMI 2019年1月

【統計】中国国家統計局PMI 2018年12月

【統計】中国国家統計局PMI 2018年11月

【統計】中国国家統計局PMI 2018年10月

【統計】10月の中国財新サービス業PMIが相当ヤバそうな件について

易綱総裁はこうした現状を受け、自己批判を行います。

自分の行ってきたデレバレッジはよくなかった、と。

 

そして、1月・・・新規人民元建て融資、社会融資総量の急拡大となって表面化します。

【統計】2019年1月 中国新規人民元建て融資~社会融資総量残高が過去最高を更新

 

この動きを個人的には

「春節前の資金需要に応じるためであり、継続するようなものではない」

とみていましたが、どうやらこの路線を定着させようという勢力もあったようで、そうはさせじと李克強首相の今回の発言に繋がったものと思われます。

 

 

李克強首相と易綱人民銀行総裁、どちらが正しいか?

個人的には、李克強首相のやり方をやれば、日本の90年代の間違いを繰り返すことになると思います。

ただし、易綱人民銀行総裁のやり方にならえば、いずれより大きな問題に直面する可能性は高いのではないか、と思います。

こればかりはやってみないとわからない。

 

問題は、先延ばしすべきか、いま改革すべきか。

構造改革はハッキリ言って、変数が多すぎて、どんな政策をどれだけインプットしたらどんな数字が跳ね返ってくるのか予測できるような類のものではありません。

ですから、金融政策であと延ばししたくなるわけですが、しかし問題は、それをずっと繰り返すとヤバそうだなぁというのは、肌感覚でみんなわかってる。

とりあえず自分は、個人的にどちらが好ましいかを論じるような立場にいませんので、この件に関して提言じみたことを書くつもりはありません。

ただ、日本でそうだったように、中国でもこういった景気後退期には、政策当局者の鍔迫り合いがおきてしまう。

そのことが市場にとってリスクになることには要注意です。

いつまでも金融緩和が続かないリスクについても考えておいた方がいいと思います。

以上。