ブラクラ貼り付けで中一女子ら家宅捜索~懸念されていた法律の拡大適用が始まった~不正指令電磁的記録提供未遂の疑い

ブラクラ貼り付けで中一女子ら家宅捜索~不正指令電磁的記録提供未遂の疑い

 

ブラクラ貼り付けで補導・家宅捜索・書類送検

法案作成時に懸念されていたことが起きています。

掲示板にブラクラ、ジョークプログラムを貼り付けた行為が不正指令電磁的記録供用にあたるとして、中学一年生の女子生徒と男性二人がそれぞれ家宅捜索をされたそうです。

消せない画面…不正URL貼り付けた疑いで中1女子ら家宅捜索 サンスポ

何回消しても同じ画面が表示される不正なURLをインターネットの掲示板などに貼り付けたとして、兵庫県警サイバー犯罪対策課は4日、不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで、愛知県刈谷市の中学1年の女子生徒(13)ら男女3人の自宅を家宅捜索した。3人に面識はない。(中略)同課は女子生徒を児童相談所に通告し、男2人を書類送検する方針。

 

これに対して、スマイリーキクチという方が以下のようにツイート。

https://twitter.com/smiley_kikuchi/status/1102707274991038464

このツイートに対して

「無知はおまえだ。この程度のことで犯罪になるとかありえない」

とか

「ブラクラなんて2000年代にはしょっちゅうあった。なんで犯罪なんだ。」

「こんな短いスクリプトが犯罪にあたるはずがない」

みたいなtweetがあふれています。

スマイリーキクチという人はあまりよく知らないのですが、この方はそんなに馬鹿にされるキャラなのでしょうか?

とりあえず、この件についてスマイリーキクチ氏を批判する前に、この件の本質的な問題点を誰か指摘してほしいと思って、これを書いています。

 

 

 

ブラクラを貼る行為は不正指令電磁的記録作成・提供罪(刑法第168条の2第1項)に問われる可能性

ここで、今回3人が家宅捜索を受けるに至った根拠をみてみます。

 

<不正指令電磁的記録作成・提供罪(刑法第168条の2第1項)>

(不正指令電磁的記録作成等)
第168条の2 正当な理由がないのに,人の電子計算機における実行の用に供する目的で,次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し,又は提供した者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録

2 正当な理由がないのに,前項第1号に掲げる電磁的記録を人の電子計
算機における実行の用に供した者も,同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は,罰する。

http://www.moj.go.jp/content/000076666.pdf

 

なるほど・・・意図に沿わない、意図に反する動作をするよう仕組まれたものなら、ぜんぶ「不正指令電磁的記録」にあたるそうです。

そういう意味では、ブラクラはこれに該当するのでしょう。

ブラクラを意図して踏む人はいないでしょうから、意図に沿わず、意図に反する動作をさせられたことになるんでしょう。

仮に短いスクリプトだとしても、ウイルスやトロイの木馬的なものと同じように罪に問われる可能性はあるのでしょう。

もちろん、この程度は社会的法益に反しないという意見もあるでしょうが・・・

重要なのは、この三人がすでに家宅捜索を受けて、うち一人が補導、二人は書類送検され起訴・不起訴の判断待ちだということです。

それは、本人たちにとって非常に不都合かつ、気分の悪いことだと思います。

 

 

ブラクラ貼り付けただけで家宅捜索・書類送検~一般人にとっては多大なストレス

今回の件が果たして起訴や有罪判決までいくのかどうかはわかりません。

ただ、とりあえず、すでに家宅捜索は行われたそうです。

一般人にとっては、家宅捜索されるなんて一生に一度もないのが普通です。

そんな非日常が、いきなりやってくるわけです。ブラクラ貼った程度のことで。

もちろんブラクラ貼るってあんまりお行儀のいいことじゃありません。

が、その程度のことで逮捕されたり、補導されたり、家宅捜索受けたりしちゃうってのはビックリでしょう。

もうほんとビックリ、嫌な気分、鬱な気分になる。

なんでこんな程度で?

誰が被害にあったの?

何の悪影響を社会に与えたっていうの?

単なるジョークのつもりだったのに・・・

そんな思いがぐるぐる駆け巡ると思います。

起訴されるとか有罪になるならないの以前の問題として、家宅捜索受けた時点でもうサイアクです。

 

 

悪意のない行為が裁かれるリスクは、著作権法改正法案もおなじ

ぶっちゃけ、この「不正指令電磁的記録作成・提供罪(刑法第168条の2第1項)」は、法案として成立させるまでに紆余曲折が随分とありました。

当時も国会でごちゃごちゃと専門家が議論しあい、今の内容に落ち着きました。

成立当初は、ブラクラ程度で逮捕されるなんて誰も想定していなかったはずです。

それがどんどん拡大適用されてきています。

先日はコインハイブを設置した人物が不正指令電磁的記録保管で書類送検されました。

当初この法案を作る過程では、こんな適用、まったく考えられていなかったはずです。

 

 

 

 

こういった展開、いま議論されている著作憲法改正『ダウンロードの違法化』問題も似ています。

著作権法改正『ダウンロード違法化』は誰のため?~背後に米国の影がちらちら見える件~

 

法案作成の議論のなかでまったく意図されなかったことこそが、法案成立を求める側の真意である可能性には注意が必要です。

著作権法改正にしても、不正指令電磁的記録作成・提供罪の問題にしても、根っこは同じじゃないかと思われます。

とにかく、警察など行政府に対して、恣意的に利用可能なツールを与えることは非常に危険です。

一度法律ができてしまうと、この国では法律が正義の定義を塗り替えることになりますから。

法律が作られる段階で国民がしっかり監視することが重要だと思います。

以上。