『EPS(一株当たり利益)は見る必要がない』って本当?
EPS(一株当たり利益)を無視する論調がまたぞろ復活している件
先日、いろいろとtwitterとかブログとか回ってみてたんです。
そしたら、誰のどの発言とかいうわけではないんですが
「EPS(一株当たり利益)なんて見る必要がない。重要なのはDCF法。キャッシュフローが重要だ。」
といったような発言がありまして、その方のことは自分は良くは知らない方なのですが、結構その界隈では人気の方らしく、他の関係者の方たちが「なるほどぉー」と唸っていたんですね。
自分はこれをみて
またぞろEPS(一株当たり利益)無視の相場になってきたなぁ・・・
と感じたわけです。
こういうEPS(一株当たり利益)無視するような論調っていうのは、数十年に一度は繰り返されます。
国を変えれば、10年に一度はあるでしょうか。
古くは日本の不動産バブルの頃もそうですね。
あの頃は
EPS(一株当たり利益)なんて無駄。これからは含み資産とその価値上昇をみるべき。
みたいな論調が流行りましたし、含み資産を前提にしたQレシオなんてものも生まれました。
また、アメリカのITバブルもそうです。
あのころ、多くのハイテク企業が赤字体質でしたが、それを正当化するために
EPS(一株当たり利益)ではなくPCFR(株価キャッシュフロー倍率)やPSR(株価売上高倍率)
が尺度として利用されました。
ようするに、既存のバリュエーション指標では明らかに割高すぎて投資対象にかすりもしないから、
新たな尺度で比較して投資行動を正当化する、
そういう目的で作られたのが、これらのバリュエーション指標です。
さて、最初の話に戻りますと、この
「EPS(一株当たり利益)なんてみるのは無駄」
と発言されている方は、おもにクラウドやソフトウェア関連の小型株への投資を多くされているようです。
投資歴は10年行かない程度の方のようで、そりゃまぁ、昔のことなんて知らないでしょう。
かつても、彼のように
「EPS(一株当たり利益)を見るのは無駄」
という言説が流行ったんです。
でも、そういう言説が流行ったあとは、だいたいの場合に風向きが変わり、それらの銘柄はその後、長期にわたって鳴かず飛ばずとなりました。
低い株価で身売りしたり、破産して消えていった企業もあります。
特にテック系の企業であれば、ちょっとした技術動向の風向き如何でそういうことになりがちなんです。
株価が低迷しているあいだに技術のトレンドが変化することなんてざらです。
そうなれば、次の時代にはそれら過去の流行銘柄は捨て置かれます。
塩漬けどころか古漬け銘柄になることでしょう。
非常に危険なスタンスだなぁと、自分は思います。
キャッシュフローだけでなくEPS(一株当たり利益)もみたほうがいい
なお、ここで自分が言いたいのはDCF法の批判ではありません。
DCF法が適さない対象に対してDCF法を無理に利用したり、
キャッシュフローばかりに着目してEPS(一株当たり利益)をみない態度が危険だと思うということです。
たしかに、ここ数年はそういう尺度で選んだ銘柄が上がってきましたが、ずっと同じ尺度で相場が続くと思ったら大間違いです。
10年程度でそれがみえるわけではありませんし、30年でも50年でもわからない。
だから、「これなら大丈夫」「これは無視して良い」というような傲慢さはあかんのです。
それは命取りになります。
ここもと、EPS(一株当たり利益)が赤字の米国企業が人気です
とくにクラウドだとかバイオだとか、テーマのあるものが人気です。
会社の規模さえデカくなれば、EPS(一株当たり利益)なんて出てなくても問題ないと思う投資家が増えています。
それはなぜか?
つまるところ、これらの会社は将来的に生き残る必要なんてない、どこかに買収されることを前提に相場が形成されているってことです。
株主に報いるためには、配当などではなく、より高値で身売り売却できるように事業を拡大することにある・・・ということ。
バリュエーションの裏付けは、DCFでもPCFRでもPSRでもなく、あくまでもファンドや買収企業群の金回りだけです。
果たしてこれが持続的なのかどうか。
超絶に緩和された環境の仇花なのではないか、という疑問は常に持つべきと思います。
もっというと、こうした仇花が咲きほこれる程度には、市場は緩和的ってことです。
それが許されているのも、
インフレ率が低く、量的緩和が十分であること、市場参加者の意欲が高いこと、買収側の企業収益が好調なことなどの条件が伴っているから。
そのどれかでも破綻したなら、条件が狂うと思います。
今はとても良い環境にあります。
これら条件が今よりもさらに良くなるのか、それとも悪くなるのか、そこが重要でしょう。
慢心はしない方がいいと思います。
以上。
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