【QCOM】クアルコム(Qualcomm)の業績・決算と株価~巨額自社株買いが期待できるか?

【QCOM】クアルコム(Qualcomm)の業績・決算と株価

 

今回はクアルコム(Qualcomm)についてみていきます。

クアルコム(Qualcomm)は日本ではあまり有名ではないかもしれませんが、モバイル用チップの世界では最大手クラスのひとつで、非常に重要な企業です。

いうなれば、パソコンの世界のインテルみたいなものなんですが、ある意味ではそれ以上に重要かもしれない。

そんなクアルコム(Qualcomm)の事業内容から、まずはみていきます。




 

クアルコム(Qualcomm)の事業内容

クアルコム(Qualcomm)の事業内容は、おもにモバイル通信端末(スマホなど)向けの半導体を設計することです。

なお、クアルコム(Qualcomm)はいわゆるファブレス企業であり、実際の製造はTSMCなどのファウンドリに任せています。

 

モバイル通信の分野においてクアルコム(Qualcomm)は多数の特許を保有していて、同業他社は同社の技術にまったく抵触せずに設計することは非常にむずかしいと言われています。

クアルコム(Qualcomm)は自社の半導体を各端末メーカーに販売するほか、技術を外部にライセンス販売することでも利益を上げており、非常にパテント管理のうまい企業として知られています。

 

近年、クアルコム(Qualcomm)は事業領域をモバイル事業からサーバー向け半導体や、IoT向け半導体の開発領域にまで広げようとしています。

モバイル通信も5Gの時代に入ることで自動車、インフラ、産業方面との連携がより重要になることから、

今後はクアルコム(Qualcomm)の事業構成も大きく変化していく可能性が高まっています。

 

クアルコム(Qualcomm)とAppleなど他社との特許戦争

なお、クアルコム(Qualcomm)はこれまで多数の特許戦争を他社と繰り返してきました。

その一つがAppleになります。

かつてアップルはクアルコム(Qualcomm)からチップを購入していたのですが、カネ払うのが嫌になって自社開発に切り替えたんです。

ですが、いくら自社開発に切り替えたところで、やっぱりクアルコム(Qualcomm)の特許を利用しなくちゃ作れない・・・

アップルはなんと、クアルコム(Qualcomm)に特許料を払わないという決断をしました。

当然、クアルコム(Qualcomm)はアップルに対して訴訟を起こします。

こうしたクアルコム(Qualcomm)の対応に対してアップルは

「技術を独占して高値でふっかけているのは不正競争にあたる。損賠しろ」

みたいに言い出したんです。

凄い理屈だなぁと思いますが・・・とりあえず、この争い、先月あっけなく終わりを告げました。

完全にアップルの敗北です。

このあたりの経緯に関して、詳しくは以下にまとめたのでご覧いただきたいのですが

特許紛争はクアルコムの勝利で終了~アップルは5G展開を急ぐためQualcommに泣きつくしかなかった~

とりま、インテルの5G向けチップ開発が遅れたのが致命的でした。

アップルは多額の訴訟費用をかけながら、結局クアルコム(Qualcomm)に完敗

今後はクアルコム(Qualcomm)に特許使用料を支払っていくとともに、5G用モデムチップの供給も6年間受ける契約を結びました。

 

 

クアルコム(Qualcomm)へのブロードコムからの買収提案

上記のとおり、クアルコム(Qualcomm)はことモバイル業界におけるポジションとしては絶大なものを握っています。

こうした点に着目し、クアルコム(Qualcomm)がアップルとの訴訟で疲弊していたさなか、ブロードコムが買収を持ちかけました。

【AVGO】ブロードコム(Broadcom)の決算・業績と株価~Brocade(ブロケード)に支えられた決算

 

これに対して、クアルコム(Qualcomm)は断固として拒否。

そして、トランプ大統領まで出てきました。

ブロードコムは当時、租税回避のためにシンガポールに本拠を移していたのですが、中国企業なども多数投資を行っていたんです。

そんなわけで、移動通信用半導体の中核であるクアルコム(Qualcomm)を中国に売るわけにはいかない、とCFIUS/対米外国投資委員会が判断。

ブロードコムによる買収は阻止されました。

 

当時はまだ米中貿易戦争は激化していない頃だったのですが、それでもクアルコム(Qualcomm)に対する米政府の防衛意識は高いものがありました。

そのくらい、クアルコム(Qualcomm)は米国にとっては大事な企業ということになります。

※個人的には、Appleとクアルコム(Qualcomm)の和解を促したのも、政界側からじゃないかとみています。Huaweiに対抗するために国内両者が消耗戦を繰り広げるのはあまりにも無意味ですから。

 

 

クアルコム(Qualcomm)の業績~2019Q2

 

クアルコム(Qualcomm)の2019年Q2(1-3月)業績は上記のようになっています。

販管費や研究開発費を削減して営業利益は伸ばしていますが、売り上げは落ちてしまっています。

なお、自社株買いによって発行済み株式数は大きく減少しており、EPS向上に積極的な姿勢をみせているのがわかります。

 

以下はクアルコム(Qualcomm)によるチップ販売(QCT)と、ライセンス販売(QTL)の比較です。

双方とも昨年よりEBTが減少しています。

 

以下はクアルコム(Qualcomm)の販売する半導体チップの出荷数量です。

数量ベースで落ちていることがわかります。

 

 

 

 

クアルコム(Qualcomm)の業績減速の背景

クアルコム(Qualcomm)の業績が減速している背景には、ひとつはアップルとの関係悪化による販売先減

もうひとつは、ファーウェイやメディアテックなど他社との競合があると思われます。

とくにファーウェイは自社でクアルコム(Qualcomm)のSnapdragonシリーズと同レベルのSoC(Kirinシリーズ)を開発しており、スマホ用半導体分野で強力なライバルに育っています。

ファーウェイのKirinシリーズ最新作を搭載したP30 proはそのAI技術を利用したカメラ機能が非常に話題となっています。

もはや盗撮スマホ…ファーウェイの最新モデル『Huawei P30 Pro』のズーム機能が物凄い件…

なお、もともとファーウェイはクアルコム(Qualcomm)が寄付講座や人材育成などで育てたようなものなんですが、まぁ、師を追い越そうとする弟子というのは、古今東西よくある話ですね。

 

なお今回、クアルコム(Qualcomm)はアップルとの訴訟解決で45~47億ドルの収益が上がる見込みだと発表しました。

これはたぶん、大掛かりな自社株買いに使われると思われます。

 

 

クアルコム(Qualcomm)の株価

クアルコム(Qualcomm)の株価 日足

クアルコム(Qualcomm)の株価 週足

クアルコム(Qualcomm)の株価はアップルとの訴訟解決を受けて大きく上昇。

その後、この決算発表をネガティブに受け止めてやや伸び悩むも、さらに上昇しています。

個人的には、同社は今後の米国の通信戦略の中核を担う企業だとみています。

5Gモデムチップメーカーが寡占化?西側諸国にはクアルコムとサムスンしか供給できず高騰の可能性? 2019年4月18日

米国はファーウェイ製品の排除を強く推し進めており、このことはクアルコム(Qualcomm)にとってはポジティブです。

現在、クアルコム(Qualcomm)の株価は大きく吹き上がっていますが、これはアップルとの訴訟解決による自社株買いの拡大を期待しての部分もあると思われます。

今後はアップルへのライセンス供給再開、および5G用モデム供給再開などでどれだけ収益を伸ばしていけるかがカギになってくると思われます。

とりあえず、以上です。

 

なお、上記はあくまでも個人的見解です。

特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。

投資にあたっては自己責任で行うようお願いいたします。