日産ゴーン氏事件に関し、郷原信郎弁護士のコラムが非常にわかりやすい件
先日、自分は以下の記事で、日産自動車のガバナンスの問題と、日本版司法取引の限界などについて書きました。
日産自動車の不正行為は西川廣人など他の取締役も知っていたのでは?カルロス・ゴーンだけ放逐するのは間違っている。
要点をまとめると
- 会社が使用貸借契約で役員に住居や保養施設を使わせることは一般的にあること
- SARを有報に書かないことを問題視するなら、他の取締役も全員共同正犯のはず
- 日本版司法取引では共同正犯が罪を免れるために司法取引することはできないはず
- ルノーと日産の合併を阻止したい日本人役員が主導してゴーンとケリーを放逐しただけじゃないか
- 企業統治上いろいろおかしい、ルノーに吸収されたほうがいい
というものです。
この件に関して、自分の書いたものよりも遥かに読みやすく、詳しく、正確な記事がありましたので紹介させていただきます。
郷原信郎弁護士の書かれたコラムです。
日産幹部と検察との司法取引に“重大な疑念” ~有報関与の取締役はゴーン氏解任決議に加われるか
自分が下手に纏めるよりもリンク先を読んでいただきたい。
とりあえず大事な点としては
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役員報酬は会社の決算書の記載事項。自宅の提供など会社から事実上利益を受けることが、会社の決算書に記載する「役員報酬」になるのか。
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自己の犯罪事実を認めることで処罰を軽減するのは「自己負罪型司法取引」であり、アメリカでは主流だが、日本では導入が見送られた
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取締役会では、特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない(会社法369条2項)当該取締役会で、検察との間でどのような協議が行われているのかについて報告を受けた上、特別利害関係人への該当性について十分に検討した上で議決を行う必要がある。
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背任罪(特別背任罪も同じ)は、「自己又は第三者の利益を図る目的、本人に損害を与える目的」で、「任務に違反し」、「本人に財産上の損害を与えること」によって成立。「損害の発生」の事実があるのか。不動産は会社の所有になっているのだから、その価格が上昇するか、購入時の価格を維持していれば「財産上の損害」はない。
個人的には、1と2は気づきましたが、3、4はまったく想定外でした。
とくに3です。
司法取引に(闇であれ表であれ)関係したものは、自己の免責を図っているため特別利害関係者にあたる可能性があり、取締役会決議でこれを明示する必要があるとのこと。
しかし、この記事が書かれたあとに行われた取締役会でゴーンとケリーは代表権をはく奪されますが、決議に参加した人物がどういった司法取引をしていたのかしていないのか、そこらへんは明らかになっていません。
非常に危ういな、と思います。
4に関しては、自分の見立てよりも厳しいなぁと感じましたが、弁護士先生の見方だとこんな感じなんですね。
個人的には、「損害を与える意思がなければ、実際に会社側に損害が発生してしまったとしてもいいのかな」と思ってましたが、もう少し厳しい模様。
非常に参考になる記事で、綺麗に纏まっていて読みやすいです。
是非、本文をごらんください。
なお、今回の記事とはべつの報道になるのですが、一部の報道によると、司法取引に応じたのは執行役員クラスだといわれています。
もしその情報が確かなのだとすると、日産の全取締役が有価証券虚偽記載の共犯者ということになるはずです。
しかし、しょっぴかれたのはゴーンとケリーだけ。
ここらへん、釈然としません。
経産省と検察と日産で何か裏取引されていたんじゃないかと疑われてもおかしくないと思います。