ロシアとトルコを結ぶ天然ガスパイプライン「トルコストリーム」の海底部分が完成
天然ガスパイプライン「トルコ・ストリーム」」の海中部分完成
ロシアからトルコに向けて建設がすすめられてきた天然ガスパイプライン「トルコ・ストリーム」の海底部分が完成しました。
これを受けてエルドアン大統領、プーチン大統領が記念式典に出席しました。
Putin and Erdogan mark key phase in natural gas pipeline
トルコ・ストリームとは?
トルコ・ストリームはロシアからの天然ガスをトルコ経由で欧州に運ぶためのガスパイプラインです。
今回建設されたのはロシアからトルコまでの黒海の海底930キロを結ぶパイプラインで、今後、トルコ側が陸上設備などを完成させて2019年中には利用開始となります。
完成した暁には、年間315億立方メートルもの天然ガスがトルコ・欧州むけに流れることになっています。
トルコ・ストリームの意味は?
トルコ・ストリームの意味は主に3つ
- トルコ側は現在急激な発展に伴いエネルギーが不足しており、これを補う必要があること。
- ロシア側からすると、対立しているウクライナを経由せずに欧州に天然ガスを送ることができる
- 欧州側は安定したガス調達ができるようになる
ということが主なメリットです。
トルコ・ストリームによってウクライナを回避
ロシアとウクライナは現在クリミアで紛争を繰り返しています。
また、以前ウクライナが天然ガスの利用料を支払わず、勝手にパイプラインから抜いて利用したことによって、欧州への天然ガスの供給を絞られたことがあり、欧州側でガス欠乏を招きました。
こうしたことがあったため、ロシアと欧州はウクライナを経由しないガスパイプラインの敷設を急いだ経緯があります。
ドイツはノルドストリームを建設することでロシアから直接調達を目指しましたし、他にもトルコからトルコストリーム、サウスストリームなどを通すことによってウクライナを回避するようになっています。
アメリカはトルコ・ストリームに反対~ハンガリーに圧力へ
アメリカはロシア産の安い天然ガスが欧州にばら撒かれる事態を警戒。
ハンガリーに対してトルコストリーム軽油の天然ガスを調達しないように圧力かけています
US warns Hungary off buying Russian Turk Stream gas
代わりにアメリカは、アメリカ産のシェールガスなどを利用するよう求めています。
ただし、液化プラントなども必要ですからどうしてもロシア産のガスには価格面で太刀打ちできないと思います。
トルコ・ストリームによってトルコのNATO離れ進む
トルコ・ストリームを巡っては、トルコとロシアの関係が一時的に冷え込んだ時期もあり(2015年頃、ロシアの戦闘機をトルコが撃墜した)、建設はいったん中断していました。
それを2016年から再開し、現在に至ります。
この間、シリア情勢はNATO側が求める方向ではなく、ロシア側の描いたシナリオに向かって進みました。
このシナリオを支持したのがトルコのエルドアン大統領であり、この時点からトルコのNATO離れ、アメリカ離れ、現実路線化は進んでいたといえます。
とりあえず、これで欧州、トルコのロシア依存はより一層すすみます。
今後、トルコに続いて欧州もNATOばなれしてしまう可能性があります。
一説には欧州軍の創設なんてものも提唱されているようです。
仏マクロン大統領提唱の「真の欧州軍」はNATO外交からの決別を意味する一大事
アメリカは、いまはイラン問題でも中国問題でもいろいろと強気姿勢でやってられてますが、どうもそんな単純な話ではないように思います。
トルコストリームは、アメリカが思い通りにできないことのひとつです。
いろいろと重要な示唆を含んでいると思います。
以上です。