インド総選挙を控え、小規模小売店キラナの保護で票集めをするモディ政権
パパママショップ「キラナ」を保護しようとするモディ政権
インドの小売市場では、キラナと呼ばれる家族経営の小規模個人事業商店が市場シェアを握っています。
先進国では小売りチェーンがのしていますが、インドではそういった大手事業者による寡占化の流れにまったく逆行する動きを示しています。
与党BJPの支持基盤でもあり、モディ政権はこの層を取り込むために外資によるイーコマース分野への直接投資に規制をかけ始めています。
キラナ保護のために外資排除に動くモディ政権
インドでは、Eコマース分野で新FDI規制(直接投資規制)が導入されます。
今年春に総選挙を迎えたモディ政権ですが、昨年12月の5つの地方選挙すべてで大敗を喫しました。
これを受け、モディ政権は既存支持層である都市部商工業従事者たちへの支持アピールを必死に行っています。
キラナ保護のために導入された新たな規則
新たに導入された直接投資規制は、簡単にいうと
Amazonなど小売プラットフォーム企業が
- 出資先の企業の製品を売れない
- 納入業者と専売契約を結んではならない
ということ。
つまり、ヤフーショッピングや楽天やアマゾンのマーケットプレイスはいいけど、Amazon本体での販売はダメ。
マーケットプレイスで販売する場合でも、出資先の商品(Amazon best)を扱っちゃダメだし、Amazonが販売業者を囲い込んでもダメ・・・
ということです。
キラナ擁護のために割を食うアマゾン
これにより、AmazonはAmazon Retail India Pvt (ARIPL)を通じた食品販売などができなくなり、商売の幅が著しく制約されることになります。
また、Big BazaarやEasydaysのブランドでスーパーマーケットを展開するFuture Retail LtdやEzoneブランドの電子機器販売などもできなくなります。
さらに、昨年AmazonがAditya Birla Retail Ltdから買ったばかりのMoreブランドの食品・雑貨販売業や、Shoppers Stop Ltdへの出資も意味がなくなります
キラナ(Kirana)とは?
そもそもキラナについて書いてなかったのでサラリとふれておきます。
キラナとはインドで小売の主流を占める販売形態で、簡単に言ってしまえば、日本の60年代、70年代ころまであったような、個人経営の小さなお店です。
そのほとんどが零細事業者で、個人事業や家族経営。
パパママストアとも呼ばれるような小さな資本の経営といわれます。
インド国際経済関係研究所ICRIERによると、このキラナは全国でおよそ1200万店、小売形態の9割を占めているそうです。
近年は外資の小売参入を認めてきたが、政治的要請でキラナ保護を打ち出さざるを得ない状態に・・・
12月に行われた地方選挙で、モディ政権は歴史的な大敗を喫します。
インド州議会選で与党インド人民党(BJP)が大敗~モディ政権は露骨なバラマキ政策へ~
これは主に農村部での票を取り逃したからなのですが、今回モディ政権は、農村部にばらまくいっぽうで、支持層の囲い込みも図ろうと、キラナ保護を強く打ち出しています。
キラナ保護を優先するか、外資導入を進めるか・・・
インド経済の発展のためには外資導入による生産性向上が必要なのは疑いようのない事実です。
しかしそれを推し進めれば格差が広がり、負け組も増える。
インドは中国とは異なり開発独裁国家ではありません、民主主義国家です。
法治国家であり、人治国家ではありません。
そのため、政治的なバランスをとることに非常にパワーを割かないといけない・・・そういった状況に置かれています。
ここら辺が中国とインドの大きな違いです。
よく、インドは次の中国になれる、と簡単に言う人がいますが、個人的にはそれは非常に難しいと思います。
確かに人口からみたらインドは中国に匹敵するでしょう。
しかし、政治形態が違い過ぎます。
中国は独裁体制、専制国家ですが、インドは民主主義体制をとっています。
簡単に、貧富の格差が、政治的な不安定さに繋がりやすい状況です。
そのことには注意が必要でしょう。
以上です。