新スターウォーズ計画『ミサイル防衛の見直し(MDR)』でレーザー兵器業界活況か?
トランプ大統領が『ミサイル防衛の見直し(MDR)』を発表
トランプ政権は2019年1月17日、国防総省で安全保障問題に関する新戦略目標『ミサイル防衛の見直し(MDR)』を発表しました。
これは、中国やロシアなどが現在開発、配備を急ぐ極超音速巡航ミサイル兵器などに対抗するために策定されたもの。
これまで懸念の中心だった大陸間弾道弾ICBMへの対応だけでなく、極超音速巡航ミサイルまでをもターゲットにすることから、これまでとは全く違った防衛システムの構築が予想されています。
今回はこの『ミサイル防衛の見直し(MDR)』についてみていきたいと思います。
『ミサイル防衛の見直し(MDR)』策定以前の脅威~大陸間弾道ミサイルICBM
今回の『ミサイル防衛の見直し(MDR)』策定以前には、ミサイル防衛の中心となっていたのは大陸間弾道弾ICBMへの対応でした。
大陸間弾道ミサイルICBMっていうのは、簡単に言ってしまえば、ぽーんと宇宙空間に打ち上げて、軌道に乗せて、都合のいいところで大気圏内に突入させて、目標地点に落下させるものです。
これは中国、ロシアなどだけでなく、北朝鮮も開発を続けており、アメリカはこれらの国から発射されたICBMを大気圏内外で迎撃することを研究対象にしていました。
この防衛においては、主に中間段階でイージス弾道ミサイル防衛システム、RIM-161 SM-3、終末段階でTHAADミサイルによる二段回防衛が試みられるとされており、主にミサイルによるミサイル防衛が想定されてきました。
露新型極超音速巡航ミサイル「アバンガルド」により『ミサイル防衛の見直し(MDR)』策定
ところが先日、ロシアが全く新しいレベルの兵器を発表します。
それが新型極超音速巡航ミサイル「アバンガルド」です。
【ロシア】極超音速ミサイルシステム『アバンガルト(アバンギャルド/アバンガルド/Avangard)~コード名:Objekt 4202、 Yu-71、Yu-74』の試射に成功
この極超音速ミサイル・アバンガルドですが、音速の5倍の速さで飛行し、姿勢制御、方向制御も可能。
地上のレーダーでは探知・追跡が極めて難しく、また追跡できたところでミサイルによる迎撃はほとんど不可能という代物です。
また今後、AI技術が発達するにつれて、迎撃ミサイルを自動で検知確認しながらよけながら飛行する巡航ミサイルの登場も想定され、そうしたものに対応するには、もはや迎撃ミサイルによるミサイル防衛の開発では無理になってきています。
そういった背景で登場したのが、今回の『ミサイル防衛の見直し(MDR)』です。
『ミサイル防衛の見直し(MDR)』では上昇段階(ブースト・フェイズ)をレーザーで打ち落とすことがメイン
『ミサイル防衛の見直し(MDR)』では、これまでのミサイル防衛の主眼がミッドコース・フェイズやターミナル・フェイズにおけるミサイルによる迎撃に頼っていたものから、打ち上げ直後の上昇段階(ブースト・フェイズ)をレーザー兵器で叩くことに主眼が移っています。
ぶっちゃけた話、速度がノリノリになって超音速になった状態じゃあ、迎撃ミサイルは当たりません。
しかも、軌道が巡航ミサイルのように揺れて予測不可能、AIによって迎撃回避となれば、とてもじゃないけどミサイルによるミサイル防衛は無茶です。
というわけで、『ミサイル防衛の見直し(MDR)』では上昇している間に、レーザー兵器で撃ち落とそうということになっています。
『ミサイル防衛の見直し(MDR)』で注目が集まる航空レーザー兵器ABL(Airborne Laser)
今回の『ミサイル防衛の見直し(MDR)』では、すでに一度中断されたAL-1の構想を復活させ、上昇段階(ブースト・フェイズ)でレーザー兵器を搭載したドローンなどによる攻撃、ABL(Airborne Laser)がメインになりそうです。
『ミサイル防衛の見直し(MDR)』で進む宇宙空間配備型センサー
また、宇宙空間配備型センサーで敵のミサイルの弾道をしっかり把握するなどの対策が考えられているとのことです。
低高度を周回する衛星にミサイル探知、追跡、識別用のセンサーを搭載し、発射後すぐに探知、攻撃できるようにするとのことです。
『ミサイル防衛の見直し(MDR)』はスターウォーズ計画(戦略防衛構想SDI)か
こういった夢物語のような構想に対し、「レーガン時代のスターウォーズ計画が復活した」と多方面で話題になっています。
ロシアは18日、『ミサイル防衛の見直し(MDR)』に対し、冷戦時代のスターウォーズ計画復活とおなじ、無用な軍拡競争を煽ることになる、と批判しました。
以上。