掃除機のダイソンが高賃金のシンガポールに移転するわけ

掃除機のダイソンが高賃金のシンガポールに移転するわけ

 

ダイソンが、シンガポールに本拠地を移転

高級な掃除機やドライヤー、扇風機などを製造販売しているイギリス企業、ダイソンがシンガポールに本社機能を移転するそうです。

このことが各界で波紋を広げています。

ダイソンシンガポールに本社移転 EU離脱は無関係

 

 

ジェームズ・ダイソン氏はBREXIT(ブレグジット)推進派だがシンガポール移転とは無関係?

ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン氏は大のBREXIT(英国のEU離脱)推進派として知られています。

このことから、

「英国のEU離脱問題がなかなか進まないからダイソンはシンガポールに行ってしまったのではないか?」

「ダイソンはBREXITを推進していながら、自分はイギリスからも出ていくなんてひどいじゃないか」

といった声も上がっているようです。

しかしジェームズ・ダイソン氏によると、BREXITと今回のダイソンの本社移転とは無関係とのこと。

あくまでも経営上の効率の問題などが理由とのことです。

 

 

 

ダイソンは以前からシンガポールで掃除機を生産~税率の問題ではないと表明

なお、ダイソンは以前からシンガポールで掃除機などを生産しており、まったく縁もゆかりもないところに本社機能を移転するというわけではないとのこと。

また、シンガポールの低い税率が目当てで移転するのではないか?との憶測に対しては、

ダイソンのローウェンCEOによると

「税制の違いは取るに足らない問題」

「世界中で納税しているし、イギリスでも今後も納税する」

と表明しています。

ウィルトシャーのマルムズベリーの生産拠点へはこれからも設備投資を行っていくし、人員整理も当面行わないことを表明しています。

 

 

 

ダイソンはシンガポールでEV生産を開始へ

なお、ダイソンはシンガポールへの本社機能移転を前に、シンガポールに大規模なEV生産工場を建設することを表明しています。

この件については以前も書きましたが

ジェームズ・ダイソンがEV生産をシンガポールで開始する理由~Sakti3の全固体電池は採用せずか~

どうやらダイソンは、単なる納税コストの問題のためにシンガポールに移転するのではなく、本格的に製造業の中心地としてのシンガポールの魅力を感じているように思われます。

 

 

シンガポールは高賃金国~本来ならダイソンのような製造業には適さないはずだが・・・

本来であれば、シンガポールは高賃金国ですから、製造業のような労働集約的な産業はあまり向いていないはずでした。

こういった高コスト地域では、高い賃金に見合った高度な知識労働を必要とする金融などが向いており、製造業は安い人員を大量に集められる発展途上国が有利とされていました。

しかしダイソンのこの動きは、その流れに逆らうものです。

そしてそれは、テスラがカリフォルニアに本社を置いていることとも共通点があります。

 

 

 

製造業が資本・知識集約的産業になりつつあるなか、需要なのは実験場としての都市機能

つまるところ、製造業は労働集約的な産業から、資本集約型、知識集約型な産業に移行していっています。

単純な組み立てはロボットなどが自動的に行ってくれる時代です。

安い労働力を求めて世界をさまよってきた20世紀型の製造業企業の形はここにはありません。

ファブレスに任せて知識労働のみに特化しようという、21世紀入り前後の製造業のスタイルもありません。

テスラもダイソンも自前で工場を作って、高い賃金の地域でも成り立つように、高度に自動化した生産ラインを実現していこうとしています。

ちなみに、こうした動きはスマホの生産にも言えます。

また、美的のエアコン製造の現場などでもいえます。

彼らの工場は、日本企業よりも間違いなく生産効率が高いと思います。

そしてそれが、今度は自動車生産の現場でも起ころうとしています。

マシンガンを発射するように自動車を生産できる、とテスラのイーロン・マスクはいいました。

まだその段階にまで至っていませんが、目指すところはそういう生産効率の高さです。

 

これらダイソンやテスラの動きには気を付けた方がいいと思います。

産業のウェイトの大きい車で生産革命が実現したならば、日本の製造業で生き残れるのは、デバイス関連と生産設備関連だけになってしまいます。

ぶっちゃけ、輸出するものがほとんど消えます。

めちゃくちゃ大変なことになります。

注意が必要です。

以上です。